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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています 

ほりのぶゆきの爆笑野球(阪神?)漫画選集「猛虎はん」

上でソンドンヨルと星野仙一の話をしたので関連して(してるのか?)。
知らないうちに今季のプロ野球、セパともハーバード大の教室に負けないぐらい白熱していますね。だがセ・リーグ阪神がなぁ。
 
なんで
勝ってるの?
おかしいよね。
 
と、いうのは私の野球観は基本的に「いしいひさいちチルドレン」であり、であるなら当然阪神は弱くなくてはいけない。内紛してなくてはいけない。
そうでしょ某出版関係者よ。

阪神、6位に這い、
神、天に在り。
すべて世は事も無し。

と、かつて詩人は歌った。
・・・という違和感を感じているところに、この前ほりのぶゆき「猛虎はん」を読みました。

猛虎はん

猛虎はん

関係ないが「猛虎」って単語登録されてねえよ!MS-IMEはおろかだ。
「猛犬」「猛牛」はあるんだぜ?なんだこれ。
いや脱線した。
ほり氏自身も、こんな本を出すだけあって熱烈な阪神ファンであり、あとがきでは毎年優勝争いをするチームをみて「我々は21世紀のSFの世界に生きている」と語っているのだが、この本は長年の氏の野球漫画の「選集」であるので、最弱集団の名をほしいままにしていた時代から、現在のAクラス常連までの中でも特に傑作を選んでいる。

テレビインタビューでうっかり「今年の優勝は阪神!」と答えたばっかりに職場からもアパートからも追い出される会社員の悲劇を描いた自虐的作品(筒井康隆の「おれに関する噂」やかんべむさしの「公共考査機構」をも思わせる)

また、ほり氏お得意の「仙人(老師)」パロディも、悩める阪神ファンに何やらかにやらのご託宣を述べつつ、自分こそが諦めの悪いトラキチ−というネタにはキレがある。
 

しかし、21世紀になってなぜか強くなる阪神
そして2005年、ロッテと阪神日本シリーズを争うという、たしかに20世紀では考えられない状況が生まれる(バック・トゥ・ザ・フィーチャーばりにタイムスリップネタに使えるよな。「未来から来た?じゃあ2005年の日本シリーズを言ってみろ」「ロッテ対阪神!」「わははやっぱりな、この大うそつきめ!!」)


たしかこの「阪神vsロッテ日本シリーズ」の時、当時は連載してなかったほり氏がいきなりビッグコミックスピリッツに「日本シリーズを受けて緊急執筆!!」とこの作品を発表。ほり氏は同誌では野球漫画描いていないから「本人が描きたかったんだろうな…」となんか苦笑しつつ興奮、野球好きの友人にメールで知らせた記憶がある。
その幻の一篇が収録されているのは、かなりうれしい。
しかし今でも
ノストラダムスの予言にある ガムと電車が交わるとき・・・
詩でもなんでもねえよ
というのには笑える(笑)。
そして…

最後のコマにあるように、裏番組を見たいという妻に「じゃあいいよ…どうせ勝つから」と言ったほり氏は、「今、俺スゴい事言ったね」「まさか俺の口からこんな台詞が出るとはと変なところで感動」といいつつも。
「これじゃ巨人ファンのクソオヤジと同じだ!!」と大いに悩む。

そして(漫画の)時代の主役はナベツネ

私の史観を形づくるいしいひさいち氏もそうしていて、いまや「ワンマンマン」こと渡辺恒雄はいしいワールドの中で取り替えの効かない存在となっているが、ある意味いしいに対抗できるのは、ほりのぶゆき、彼しかいないのだっ。

このセリフ自体はいかにも本人が言いそう、というか漫画の中の「ナベツネ」なら言うのが普通っぽく感じるのだが、それ以上にナベツネのわきに陣取るなぞの護衛(親衛隊?)のデザイン!!これだけで2分ぐらい笑える。




この話もすばらしい。夏休み、森に虫捕りに来た子供たちに「虫はカネで買え! それも海外のすごいハデなやつを!!通好みとか幼虫から育てる(生え抜き重視)とかいうな!!」と説教するという、実に笑える展開だ。しかし、背中を見せながら「興味無ぇって言われるより、嫌われるほうが生きがいになるっての…」とつぶやく哀愁の独白も、いかにもありそうな話である。
ナベツネ巨人の、大物引き抜き時代も今は昔だが、こんな気の効いた皮肉も。


そしてまた、この「ルポライター、魔球を追う」という話も秀逸。オチなんかはあまりにくだらなすぎて、逆に本質を突いている(ような気がする)。このくだらなさを出すためには、ノンフィクションライターが経験者の証言を集めるところに一種のリアリティというか「くそまじめさ」が出ていないといけないのだが、そこをここまでやり切れる人はいないだろう。これはいしいひさいちにもない持ち味だ。

あとひとつ、「あぶさん」ならぬ「ぶよさん」という短編もすばらしいのだが、題名だけでおなか一杯(笑)なのでこれはのちの機会に。

【補足】この本と、収録作は多少だぶっています