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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

「コーランを焼こう」という催しがアメリカで企画。自由とは、寛容とは。

貴重な記事なので保存しておこう。
http://www.cnn.co.jp/usa/AIC201008010004.html

9月11日にコーラン焼却集会を計画 フロリダの教会


(CNN) 米同時多発テロから9周年を迎える9月11日に、米フロリダ州キリスト教会がイスラム教の聖典コーランを焼却する「国際集会」を計画して物議を醸している。

この教会は、無宗派の「ダブ・ワールド・アウトリーチ・センター」。ウェブサイトやソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)サイト「フェースブック」で反イスラムの立場を掲げ、同時テロ犠牲者を追悼する行事として、同日午後6〜9時に実施するコーラン焼却に参加するよう呼び掛けている。

同センターのテリー・ジョーンズ牧師は、著書などでイスラム教を「悪魔の宗教」と批判してきた。最近のCNNとのインタビューでは、イスラム教は「何十億もの人々を地獄へ送り込む」欺瞞(ぎまん)的で暴力的な宗教だと主張。動画投稿サイト「ユーチューブ」でも「本当に幸福なイスラム教徒を見たことがあるか」「喜びの宗教に見えるか」などと問い掛けている。

これに対し、イスラム教徒や他のキリスト教徒らから非難が集中している。米イスラム関係評議会(CAIR)は、今月から始まる断食月ラマダン)の間に「コーランを分かち合おう」と題した食事会を開催し、コーラン10万冊を配布するキャンペーンを実施する。

キリスト教福音派の有力団体、全米福音派同盟(NAE)は同センターに集会の中止を求める声明を出した。フェースブック上では、「イスラム教徒の蔑視(べっし)や排除への反対」を掲げるグループが抗議の声を上げ、支持を広げている。

同センターの前庭には、イスラム教を悪魔の宗教と断じる3枚のプラカードが掲げられている。このうち1本が最近破壊されたことを受け、センター側はブログ上で「器物損壊は犯罪。イスラム教の教えでは多くの犯罪行為が奨励、容認される。コーランを焼却するもうひとつの理由がこれだ」と訴えた。

当道場も、毎回このテーマの紹介を積み重ねてますね。
デンマーク風刺画、サウスパーク、ブルカ禁止令 云々。

イスラムの怒り (集英社新書)

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ヨーロッパとイスラーム―共生は可能か (岩波新書)

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神の法vs.人の法 スカーフ論争からみる西欧とイスラームの断層

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さて、そしてこれはザ・コーヴとだって関連しないわけじゃない。

そもそも連中もこう言うだけで、実際にこれだけ批判を浴びて、なおこの集会を実現するかはどうだろうね。

さて、私はブックマークにこう書きました。
http://b.hatena.ne.jp/gryphon/20100801#bookmark-23695677

愚行だが 日の丸、金正日の写真、星条旗、聖書、原理講論(統一教会経典)、猥褻文書、ちびくろサンボなど、様々の物を代入もしてみたい/「他者危害以外、人は自由」のリベラル論は逆に止める根拠なくすジレンマ

ブクマ全体
http://b.hatena.ne.jp/entry/www.cnn.co.jp/usa/AIC201008010004.html
100字だから大いに舌足らずだけど、骨子としてはね。
日の丸。
そういえば最初にこの記事読んで思ったのは「アメリカにも知花昌一さんみたいなのがいるなぁ」と(笑)

ものを焼いて反抗・蔑視・抗議などの意味を込めるという行為に関しては「国旗」のほうが豊富な事例があるから(右からも左からも、東からも西からも)、合わせて考えることは有益だと思う。

■「旗」をめぐる自由の境界−−あるいは限界(エピソード集から)
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20080421#p4
というエントリーを以前書きました。


ご存知の通り、この「コーランを焼く」集会が企画されているかの国では、「星条旗を焼く自由と権利」がある。
http://aboutusa.japan.usembassy.gov/j/jusaj-govt-rightsof3.html

大統領の外交政策に反対する人々が、抗議活動で星条旗を焼き、即座に逮捕された。彼らは、自分たちの法律的立場を弁護し続け、事件は最終的に連邦最高裁判所に持ち込まれた。連邦最高裁判所はその判決で、被告たちの行為は、大抵の米国人にとって言語道断の行いではあるが、やはり「象徴的な政治的言論」にあたり、従って合衆国憲法修正第1条により擁護されると判断した。この裁判で、恐らく最も興味深い意見は、保守派のアンソニーケネディ判事のものだろう。ケネディ判事は、自分を含む何百万人の米国人が、旗を焼くという行為に不快感を覚えたとしても、法廷は被告たちを無罪放免にしなければならなかったとして、その理由を次のように述べた。

「象徴とは往々にして、人それぞれが作り出すものだが、星条旗は、米国人が共有する信条、法と平和への信奉、そして人間の精神を支える自由を、一貫して表現し続けている。今日ここで審理されている事件は、こうした信条には抜き差しならない代償が伴うことを、いやおうなく認識させるものである。星条旗は、それに侮蔑の念を抱く者さえも守っている。これは実に痛恨のきわみだが、曲げられない原則なのである」

・・・あれ?このへんの話は知っていたけど、以下のエピソードは初耳だった。示唆に富み、また考えさせるので紹介しておきたい

・・・言論の自由を守るために、最も辛い思いをしたのは、ベトナム戦争での元米国人捕虜、ジェームズ・H・ウォーナーである。

ジェームズ・H・ウォーナー
ワシントンポスト紙への投稿(1989年7月11日)


「私は、(ベトナムでの捕虜の生活から解放され)飛行機から降り立ったとき、視線を上げて星条旗を見つめた。私は息をのんだ。涙が目にあふれてきたが、私は敬礼した。その瞬間ほど、祖国を愛していると思ったことはなかった。・・・私は自由に関しては、妥協できない。星条旗が焼かれるのを見ると傷つく。しかし、星条旗を焼く者たちを罰せよ、と主張する人たちには賛成しない・・・」
 
「私は、(北ベトナム軍から)受けた尋問の中で、反戦を訴えて旗を焼いている米国人の写真を見せられた時のことを覚えている。『どうだ!』と将校は言った。『おまえの国の連中が、おまえの信じている大義に抗議している。ということは、おまえが間違っている証拠だ』と言った」
 
「『それは違う』と私は言い返した。『その写真は、私が正しいことの証明だ。私の国では、たとえ自分の意見に反対する人が出現しても、自由であることを恐れないのだ』と説明した。将校は急に立ち上がった。顔は怒りで紫色に変わっていた。拳をテーブルに叩きつけ、『黙れ!』と私を怒鳴りつけた。わめき散らしている将校の目の中に、恐れの混じった苦痛の色を見て、私は驚いた。私はその表情を忘れることができない。また、将校が持ち出した小道具、すなわち星条旗を焼いている写真を逆手に取ってやった満足感も忘れない・・・」
 
星条旗を焼く人を処罰するために、憲法を修正する必要はない。彼らが旗を焼くのは、米国を憎んでいるから、自由を恐れているからである。自由という破壊的な思想以上に、彼らを苦しめる効果的な方法はあるだろうか。自由を広めよ。・・・自由を恐れるな。それこそ、われわれが持てる最も有効な武器なのである」

非常に良く出来た、感動的なエピソードではあるが、なおちょっと苦い味わいなのは、こんなふうに相手から一本取った場所が、大義なきベトナム戦争の戦場であることだ(苦笑)。戦争の正義と、体制の自由度はまた別種の問題なんだけどね。自由惑星同盟銀河帝国ぐらいに違いがあれば完璧なエピソードなわけだけどな。
もうひとつ苦い味わいなのは、今回のコーラン焚書に関連してこの「星条旗焼き捨て問題」を持ち出すと、主催する狂信者たちをば擁護するような感じになってしまうことだが。
しかし上の問題は、少なくとも僕が考える限りでは高度に密接した問題・・・というか「そっくりそのまま」な気がして、これで態度をたがえるならダブルスタンダードでないようにするには相当の論理武装が必要な気が。

あ、もちろん。
コーランへの侮辱も、聖書への侮辱も、国旗への侮辱もすべて許さない。法律で守ろうではないか」といった論理もあり得る。
星条旗への侮辱禁止はパパ・ブッシュの時代「憲法上、星条旗を焼いていいと連邦裁判所が認めるなら、その憲法を変えようじゃないか」という力技で提案され、否決されたが表決はまれに見る僅差だったという。

そしてこれは先月の話か。
http://www.afpbb.com/article/disaster-accidents-crime/crime/2742720/6008003

国旗の侮辱を禁じる新法を公布、フランス
2010年07月25日 11:46 発信地:パリ/フランス


【7月25日 AFP】フランスで国旗の侮辱を禁じる新しい法律が公布された。

 23日付のフランス官報によると、新法は国旗を破損した者や、国旗の品位を傷付けた者に1500ユーロ(約17万円)の罰金を科すと定めている。国旗を傷付ける行為の写真を発表した者は、その行為が私有地で行われたものであっても罰せられる。

 フランスでは3月、国旗でおしりをふく男性の写真が民間の写真コンテストで入賞し、全国紙に掲載されたことで論争を呼んでいた。

 フランスには以前から公共団体が主催する催しでフランス国家や国旗を侮辱した場合には、最高で6月の禁固刑と7500ユーロ(約85万円)の罰金を科すと定められていたが、おしりをふく写真はこの要件を満たしていなかった。(c)AFP

この記事のブクマが、まぁ面白かった
http://b.hatena.ne.jp/entry/www.afpbb.com/article/disaster-accidents-crime/crime/2742720/6008003

「やめさせる」人はいるか。

もうひとつだけ補足しておきたい。
このコーラン焚書が、「おろかである」ことにはかなり多くの人が賛成すると思う。つまり「反対」なのだろうね。
しかしこの集会が強行されるとして−−「やめさせちまえ」という人はどれぐらいいるのかね。その「やめさせちまえ」も、「禁止する法律を作ってでも」「過激なデモを組織しても」「デモはするけど平和的に」などなどいろいろあるよな。
だから「ザ・コーヴ」と同じなわけだす。

■映画「ザ・コーヴ」「靖国」に
「あの映画はくだらないし、質が低い。だから内容を私は批判する。だが、上映はしていいと思う。それは自由だから」
どの新聞の投書欄にも載りそうな良識的意見。

コーラン焼き捨て集会に
「あの集会とパフォーマンスはくだらないし、質が低い。だから内容を私は批判する。だが、集会はしていいと思う。それは自由だから」
これは。
どこのヴォルテール(俗説)だ。

相手は「自分は既に被害を受けている」と主張。

イスラム教を悪魔の宗教と断じる3枚のプラカードが掲げられている。このうち1本が最近破壊されたことを受け、センター側はブログ上で「器物損壊は犯罪。イスラム教の教えでは多くの犯罪行為が奨励、容認される。コーランを焼却するもうひとつの理由がこれだ」

だれが壊したのか分からないけどな。
まあ確かに、表面的なタテマエで貫けば「どんな表現に対しても、他人のものを壊すような違法行為で抗議してはいけませんね」となるかいな。
話しょぼいけどな


この集会を企画する集団のサイトがみつかったよ。
http://www.doveworld.org/
この事件のことか?
http://www.doveworld.org/blog/islam-is-of-the-devil-signs-vandalized

Islam is of the Devil signs vandalized


By Fran Ingram - Posted on 22 July 2010

Last night one of our signs was vandalized. This is private property and vandalism is a crime here in America. In Islam, many actions that we consider to be crimes are encouraged, condoned or sheltered under Islamic teaching and practice, though. Another reason to burn a Koran. The signs have been in front of the church for a year. They are made of sturdy plywood and the missing sign will be replaced.

CNNのキャスターとも対決したらしいが、動画は削除されている。
http://www.doveworld.org/blog/cnn-interview-with-dr-terry-jones