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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

藤子不二雄(コンビとして!)の「二人で少年漫画ばかり描いてきた」が復刊!

したのさ。
http://d.hatena.ne.jp/koikesan/20100129

・・・・・・今月、日本図書センター人間の記録シリーズの1冊として、長らく絶版状態だった藤子不二雄先生の自叙伝『二人で少年漫画ばかり描いてきた』(2010年1月25日第1刷発行、1800円+税)が復刊されました・・・

人間の記録 171」というなんとも味気ないタイトルになったのは正直がっくりで、売り上げにも響かないかと心配だが、だからこそカネと太鼓で宣伝しなければならない。


いや、ホントは宣伝したくねぇんだよ。なぜならいま手元にあるわけじゃないが、文春文庫になったコレの旧刊を持っているからさ俺は(笑)。古書価値あがりまくりだったろうに。
でも、非常に軽妙な文章で、まだ初読のころは子供だったけど、スラスラスイと読むことができた。たしか7割か8割をA氏、2割ぐらいをF氏が書いていて、「これは普段の口数と同じ」「テレビでもクイズ番組とかには僕(A)が出て、『彼(F)は仕事専門、僕は遊び専門」と言っている」などと正当化していたはず(笑)。

藤子不二雄のストーリーで”伝説”になっているものの多くは、まんが道以外に、この本がそもそもの出展となっていたと思う。
新宝島」を読んで「まるで映画だ!こんな構図はみたことない!動いているようだ!」と驚いたり、トキワ荘寺田ヒロオさんや多士済々とチューダーのんだり悪戯したり映画を撮ったりしたりもそうだ。あと、有名どころでは、つのだじろうが「なぜ貴兄らはいつも馬鹿ばなしばかりで、漫画を真剣に研究しないのか?」と毛筆に巻紙で詰問状を送り、あわてた新漫画党の面々が・・・とか、それもすべて再構成されている。


また、オバケのQ太郎の「Q」が、「オバケの■太郎」まで決まり、あらゆる文字を当てはめてもしっくりこない。悩んでいたとき、安倍公房の小説を読んでいたらその活字が急に目に飛び込んできて

「ムムッ、コレダナ!」
と、一発で決まったという話なんかも面白い。


そして逆に、悪夢のような伝説である
「年末に仕事が一段落して、正月は実家に仕事を持ち帰ってやってみるか・・・と帰省したら、二人とも田舎で燃え尽きてしまい、仕事が遅れに遅れ、原稿に穴を開けてしまって全社一斉に干される」
という、あの話。
あの話を、当事者の回想できくと、ノンキな中にもおっそろしいホラーですよ。
私、あれがけっこうトラウマになって、仕事をぎりぎりまで引っ張るというのを比較的好まないようになったもの(笑)。

そして「漫画家が締め切りをやぶって連載を落とすって相当ひどいことなんだなぁ。それをやったら作家はおしまいなんだなぁ」という、事実と異なる思い込みをさせられることになった。この迷信が自分の中で打破されるのは、富樫某の出現まで待たねばならない(笑)。



・・・・・・・・・このへん、全部記憶だよりだが、何しろ何十回と読んだのだ、任せろ。


ああ、あれもあったな。若手が「会社ごっこ」としてスタジオ・ゼロを立ち上げる話。
まるでサラ・イイネスの「誰も寝てはならぬ」のような、ゆるい部活動クラブのような会社。
これも伝説の「鉄腕アトムの製作を引き受けてみんなでアニメ原画を描いたら、みんな個性が強すぎて藤子アトム、石森アトム、赤塚アトムが飛び交う怪作になったでござる」のことも描かれている。
数年前、行方不明だったこのフィルムが見つかったという報道があったような。
ちなみに、手塚は二度とスタジオゼロに仕事は頼まなかったという(笑)


あと、怪獣ファンには
東宝ゴジラ映画の怪獣シーンを切り貼りし、オリジナルストーリーの連続怪獣TVドラマをつくる」という企画・シナリオをスタジオゼロが引き受け、実現寸前まで行った・・・・という話が興味深かったな。
実現すればウルトラシリーズの登場より早かったとか。


そして、泣かせるのがドラえもんの登場前史だ。
実は漫画史的には、F、Aとも一番重要ではないかといわれているブラックユーモア、SF短編の多くがドラえもんの前に描かれている(らしい)。

今でも多くの読者を持つ、これらの作品は本当に傑作であり、本人も楽しんで書いていたが、少年読者が「子供漫画を先生が描いてくれないのでさびしいです」と手紙を出し、衝撃を受ける。
そして二人は、ふたたび少年漫画に力を入れ始め、そしてドラえもんが・・・となる。


こういう自伝的ノンフィクション文学ーーとくに青春期や一代記・・をものすときには、どうしても「奥の細道」がそうであったように、判りやすくするための再構成というのがほどこされるし、書きたくないこと、当時は笑い飛ばせないようなこともあったろう。
だが、それらの検証はのちの専門家に任せるとして、とりあえずはこの美しくもユーモラスな青春物語を楽しんでほしい。

というか、一種の必須文献、基礎文献である。

とうぜん、こちらも一緒に。

まんが道 (1) (中公文庫―コミック版)

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