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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

”女三四郎”山口香が現在柔道界に反旗を翻す”女ゲバラ”になってる件/漫画「関節王」

先月、こういう話がありました
http://www.47news.jp/CN/200903/CN2009031301000557.html

柔道界から「嘉納家」勇退 講道館の新館長に上村氏


 柔道の“総本山”講道館の最高決定機関である維持員会が13日、東京都内で開かれ、嘉納行光館長(76)の3月いっぱいでの退任と全日本柔道連盟全柔連)専務理事の上村春樹氏(58)の新館長就任が決定した。上村氏は、嘉納氏が兼務している全柔連会長にも就任する見込みで、4月から日本柔道界のトップが交代する。

 歴代の館長は、柔道の創始者嘉納治五郎氏が1882年に講道館を設立してから嘉納家とその親族が務めており、柔道界の表舞台から「嘉納家」の名が消えることになった。


もうとっくに公的機関になっていて嘉納家なんか関係なくなっているだろう、と思いきや続いていることのほうが驚きだった。では世襲のゴールデンバウムは倒れ、これにて自由と平等の新世紀がやってくるかといえばさにあらず、なのである。
それについて敢然と問題点を指摘しているのが、なんと山口香氏であった。
実は山口香、あの辛口・毒入りのナンシー関がテレビで柔道解説を聞いて「滑舌、内容、話し振りなどずべてにおいてすばらしい」と絶賛した、なんて話もある。

彼女は何を問題としているのか。
ゴング格闘技5月号(203号)にインタビューが乗っている。

GONG(ゴング)格闘技2009年5月号

GONG(ゴング)格闘技2009年5月号

  • 発売日: 2009/03/23
  • メディア: 雑誌
箇条書きしよう

■一番大事なところは財団法人の講道館と、同じく財団法人の全日本柔道連盟が一体化していいのか?という点。


全日本柔道連盟は一競技団体、講道館は家元制度というか、伝統を伝え、世界の柔道に対して開かれた組織でなければならない。


■五輪で活躍すると石井慧でも谷亮子でも講道館は特別昇段させる。でも海外選手でも講道館に入門している人はいるはず。この人たちが五輪でメダルを取ったとき、特別昇段をなぜさせないの?


全柔連盟はやっぱりブルー柔道着など、講道館に引きずられてきた。いま国際柔道連盟山下泰裕氏が理事を選挙で負けて外れた。日本柔道の意見は重視されていない。講道館は日本の利益代表なのか、全体を考えて提言する組織なのか。


■たとえばガッツポーズ。世界選手権で海外選手らがガッツポーズをするのは仕方ない。だが講道館が、講道館管轄の大会で「教育」をしていけば、おのずから広まっていくのではないか


■そしてアカデミー、技術的研究をしていく。バレエなんかで「この学校で学ばないと一流じゃない」といわれるような、そういう研究機関になるべきだ。昔の嘉納治五郎さんはそれをやっていた。


全日本柔道連盟国際柔道連盟IJFの傘下にある。、新会長の上村氏が講道館と全日本の長を兼ねると、IJFの決定に全日本が従うとき、「講道館は別物ですから」、といえなくなる


■IJFの会長は独裁のために理事の半数を自分が指名する仕組みを作った。「民主的ではない」と批判が出たときは、「いや、講道館は全部の理事を会長が指名する」といったそうな(笑)


■スポーツの、競技のいいところは国の垣根を越えられること。だが柔道を外国人がやっていると「あれは柔道じゃない」「横文字のJUDOだ」・・・だけど小野卓志選手が五輪で負けたのなんか、完璧な”柔道”での負けじゃん!


講道館全日本柔道連盟も財団法人の定款がある。会長や官庁が任期を残して辞任する場合は副会長が代行をするべきじゃないか?
私は大学教授だが、定年で辞めるときに「私の後任はこの人です」と決定できないでしょ。そんなことを説明なくやれる団体は、”三流”です

こんなことを書いていたら・・・が理由かどうかは知らないが、講道館発行の雑誌「柔道」での同氏の連載は打ち切り(終了)。
前編を作る前に後編の「山口香 45歳別れの手紙」が完成してしまったと(笑)。
そういえば姿三四郎を待ちの童がはやした歌って

「寄るなさわるな 三四郎・・・」だったよな(爆笑)

松原隆一郎氏は、同誌のコラムで”山口革命”が柔道界の中で実現する可能性は低いと見て「監督官庁である文科省を動かすしかない。動かせるのは政治家だ。結論としては山口さんが政治家になるのが一番の早道だ」といっている。


革命軍軍報・・・じゃないや「山口香の柔道を考える」ブログ。

http://blog.goo.ne.jp/judojapan09/


柔道関係者が非常に注目しているといわれ、一般の格闘ファンが読んでも面白い。
微妙に絵文字を使っている点も注目。
最近の目次から

スター不在の大会に期待
美しい柔道
真の柔道普及は?
柔道フォーラム2
柔道フォーラム開催
WBCをみて思う
将来的にはあるかも?
ロシアのコーチたちと
こんなもの
IJFでの立場、IJFとの関係

この記事、これに続く。
m-dojo.hatenadiary.com





ファンタジー。もし嘉納一族が、グレイシー一族のようだったら(漫画「関節王」)

上でそもそも、嘉納家がまだ講道館を継いでいた、という話が驚きだったとの話をしたけれども、実はその驚きには、「おお、アレと同じだアレと」というものがあった。
それは、ほとんどの人が知らないだろうけどこういう漫画のこと。

「関節王」なんてのは、やっぱり有名じゃないだろうなあ。
今読める手段あるだろうか。
でも、面白いですよ。微妙に未完だけどね。


ここでアクションに取り入れられている技術はSAWの麻生氏がアドバイザーではあったものの、そもそも漫画の中でリアリティがありつつ新規な関節技をフィクションとして考えるというのは相当つらい話だ。だがその中では非常に努力してくれたほうだと思う。

この作品は面白いことに、闇社会やストリートで古流柔術が強い・・・という話なら苦もなくストーリーが展開できるのだが、なんとこれまで目立たずに歴史の中でひっそり息づいていた、古流の使い手がふらりと柔道大会に出場し、近代柔道の選手をばったばたと倒していく・・・という話がメインで、その中で、講道館(作中は「興道館」)の野心的な中堅幹部が「こんなやつは許せん!潰して、ついでに館の中での俺の権力を確立しよう」と主人公に卑劣な陰謀を仕掛ける。
それを主人公は返り討ちにするのだが、そこでトップの嘉納家(作中は佐野家)の現当主が登場、勝手な独断で古流の主人公を潰そうとしたその幹部を厳しく叱責、弟子の落ち度はわたしの落ち度、と深く頭を下げる。


そして・・・・・・。



「親の後をついだ人物は、苦労知らずの無能な坊ちゃんではなく、実はものすごい傑物だった」というような話というのは、日本でとくに受けるのかどうかわからないが、実はけっこうストーリーの世界では盛り上がるパターンのひとつではある。
佐藤大輔皇国の守護者」で知ったのだが
こういう人(華族出身の軍人や、いうだに恐れ多いが宮様で軍人であらせられた人…の中の少数の有能者(笑))のことを軍では「出来星」と呼んだそうだ。


父親はラスボスで外見はこわもて、だがその息子が、クールだったり温厚な感じの美青年というのもけっこうあるよね。その実、内面はタフというか冷酷というパターンも。
(スピード回答問題。はい、三十秒以内に例を思い浮かべなさい)


ようは嘉納家も、並み居る柔道家をばったばったと倒すような実力があればよかったのだ。んでIJFの規約も「意見対立は、一本勝負で決着をつける」とすればよかった(笑)。
よかないよかない。


まあ、こういう組織に世襲が向かないのは単純な統計的真理であって、柔道の強さなんてのは確率論的に二世につがれて行くのは少数だ。無論歌舞伎のように、世襲の伝統が結果的に「三歳からの英才教育」になり、その中での少数の優れたものは英才教育とあいまって、倍に強くなる・・・ということはあろう。グレイシーもしかり。
あとはグレイシーの場合のように、ああいう形で息子、子孫を増やしていけばそこから強さも兼ね備えた二世三世登場の可能性も高まる・・・というのも統計的真理だ(笑)。


でも、昔読んだグレイシーの本の中に「ヒクソンの兄弟の中に?柔術の道ではなく海軍に入り軍人になった子がいるが、柔術をつがないという理由で系譜から抹殺された」という記述があったような気がする。
うそかまことか知らんが、厳しい話だネ。


こうやってみると「一族」がある意味テーマのタイタニア、昨日みればよかったかな?


これは、柔道漫画と思いきや、アジア主義まで視野に入れた近代日本の青春物語
「柔侠伝」より。