時々、「団地ともお」はかなりハートフルなエピソードを描くことがあるが、今回も(ベタという批判を受ける余地はあるが)極めて美しいお話だ。
顔を描かない演出で有名な、単身赴任中の「ともおのお父さん」が、今回はやや長めの一週間の休暇をもらい帰宅中。
ともおはもともと年齢以上に子どもっぽい、素直なバカな子だから素直に大喜びして、川原で父さんと一緒に遊び倒す。
疲れてひと休みするお父さんに、同じような年の子どもがいるという見知らぬお父さんが話しかける。彼も単身赴任で、この季節は10日ほど子どもとキャンプに出かけるのだが、今年は「ちょっとした事情」でこの川原にいるという。
そして数日後。
素直でこどもっぽいともお君、はやくも父親と一緒のことに飽き始め(笑)、一人での虫捕りなどに興味が行き始め、やや焦るお父さん。その後、子どもともっと親しくなろうとしてなぜか空回りしがちで、言葉を交わすようになった別のお父さんとあれこれ語る。
だが最終日、飽きていたはずのともおはやっぱり素直に寂しくて、父親を見送りながらしょんぼり。
そこに、川原で遭ったあの見知らぬお父さんが…
単身赴任中の父親が戻っておおはしゃぎするのも、
甘えるのも、
数日で飽きるのも、
最終日はやっぱり寂しいのも、
素直な子どもと、そして家族の一風景なのだろう。
その日常に潜む貴重さが、あと一人の父親との対比で鮮明に映し出される。
この回だけでも、俺の責任で読めといいたい。
いや俺の責任って言ってもなんだかわからんが。
ちなみに、もうひとつ印象に残っているこの作品中のハートフル・エピソードを挙げるなら
「父親の遺産が気球なお話」(俺が勝手に付けた仮題)
であります。あれはなにやら哲学的な感すらただよわせていた。
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