新聞のコラムニストはなんだかんだ言っても「気の利いたことをいう」のを商売にしてる人。
いろんな引用の詩歌やジョークを覚えておくのは悪くない。
毎日新聞「余禄」5月26日
シベリアの強制収容所に新入りがやってきた−−「おい、おまえは何をやったんだ?」「ノルマが達成できなかったんだ」「仕事は?」「消防士さ」−−旧ソ連のアネクドート(笑話)には「ノルマもの」が欠かせない▲1935年、ソ連のドンバス炭鉱で29歳の採炭作業員が7トンのノルマに対し102トンも採掘したと伝えられた。それをきっかけにあらゆる分野で熱狂的なノルマ超過達成競争が始まる。いわゆるスタハノフ運動だが、いざ熱が冷めればそれは遠回しに「徒労」を指す言葉になっていた・・・
5月27日
「幸運は汗への配当である。汗をかけばかくほど幸運を手にすることができる」。これはマクドナルドの創業者レイ・クロックが見つけたルールだ。彼はマクドナルド兄弟から商標を譲り受け、自らの手で画期的なフランチャイズチェーンの展開を実現させた・・・
読売新聞 5月26日付・編集手帳
女房が好物の鰯(いわし)を食べていると、不意に帰ってきた夫が見とがめた。「また鰯なんぞを…」。女は即興の歌で抗弁していわく、「日の本に はやらせ給(たま)う石清水(いわしみず) 参らぬ人は あらじとぞ思う」◆古語の「参る」には「食べる」の意味もある。「石清水」に「鰯」を重ね、「だれもが石清水八幡宮にお参りするように、このおいしい魚を食べない人はおりますまいよ」と◆この女房は紫式部とも、和泉式部とも伝えられる。いにしえの女房衆は鰯を「むらさき」と呼んだ。鮎(あゆ)を響きの似た「藍(あい)」に掛け、鮎よりも味が濃い鰯を「紫」としゃれた言葉遊びだが、脂の乗った身が目に浮かぶ命名ではある◆ご亭主が苦い顔をするほどに位の低かった鰯が、いまや高級魚に変じて久しいとは知りつつも、今月の東京・築地市場で特大サイズとはいえマイワシ1匹に1200円の値が付いたと聞けば、やはり驚く◆鰯の水揚げ量は気候変動などの影響で1980年代末から激減し、昨年はピーク時88年の約200分の1に落ち込んでいる。最近はスーパーなどの店頭に並ばない日も多く、東京では入荷難から支店をたたむ鰯料理店も出てきた◆おろし醤油(じょうゆ)で食べるあの塩焼きの味が食卓から遠ざかりゆく。歌とは別の意味で、「参らぬ人はあらじ」だろう。鰯という字、魚に弱ると読めなくもない。