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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

菊池寛の短編より

ある推理小説を読んでいたら、その小説内で菊池寛の短編を紹介していた。
それがまた、ストーリーだけでぞっと怖くなるものなので、引用を引用させてもらう。
だれの何という小説だって?それは、推理小説であるということで、今の段階では一応秘密に。まず読み進めてください

===「義民甚兵衛」===

足が不自由に生まれついた甚兵衛は、継母や義弟たちにいじめ抜かれる。実父は気が弱く、我が子をかばうこともできない。奴隷のような苦役をして、与えられるのは犬猫のような食事だった。あまりのことに不平をいえば暴力と罵倒の嵐が襲った。
<形は人であるけれども境遇は牛馬より劣つて居た。牛馬よりも苦しまされて居た。継母や弟に対する無念は、肝に銘じ骨に徹して居たけど、何うする事も出来なかつた>。
やがて父は死に、家督も弟に奪われた。


飢饉となり一揆が起きたとき、母は甚兵衛を加わらせる。やがて一揆終結するが、郡奉行に向かって石を投げた下手人を出さねばならぬことになる。だが勿論自分から進んで磔になろうというものはいない。
<村一統の難儀を救ふものは誰もないか。>
大庄屋の声は悲痛を極めた。恐ろしい沈黙。その時、暗い意志そのもののように、縁側から這い上がった甚兵衛が叫ぶ。この小説で、ただ一つの彼の台詞である。
<あるだ。あるだ。俺が、出るぞ。俺や石を投げたぞ。>


歓喜とも悲鳴とも、付かないような>
群集の声。
<何云ふだ。馬鹿を云ふじゃない!>
と絶叫する弟。


罪は一族に及ぶ。処刑の日、次々に首をはねられる母や弟達を見て甚兵衛は<止め度なく>笑った。
<義民甚兵衛の碑は、今でも香東川畔に立つている>
と、冷たく投げ出された最後の一行には、思わず背筋が寒くなる。

これでトリックがばれるとかそういうんじゃないけど、引用元の書籍を下に記します。知りたい人のみ見てね。


この本からの引用でした

六の宮の姫君 (創元推理文庫)

六の宮の姫君 (創元推理文庫)