(社説)万博折り返し 将来に何を残せるか
2025年7月15日 5時00分
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大阪・関西万博は4月の開幕から3カ月が経ち、半年間の会期を折り返した。
開幕前、公費で3分の2をまかなう会場建設費が、当初計画の2倍近い2350億円に膨らんだ。1160億円に増額された運営費はチケットの販売収入が頼みの綱で、公費のさらなる投入が懸念されてきた。
一般入場者は1千万人を超え、チケット販売もおおむね順調のようだ。万博協会関係者はひと安心だろう。
ただ、課題は多い。最寄りの地下鉄駅周辺では、天候の急変時や運転の一時見合わせの際、混雑に伴う混乱が生じた。会場内でレジオネラ属菌が検出されながら、事実の公表と対策が遅れた。
予約主体の「並ばない万博」を目指したが、人気のパビリオンでは長蛇の列が当たり前になっている。暑さ対策に工夫を重ね、災害時への備えにも万全を期してほしい。
閉幕後に何を残せるかも問われる。55年前の大阪万博の「太陽の塔」との対比で、巨大木造建築「大屋根リング」をどう残すかに関心が集まるが、目に見えない「遺産」こそ重視したい。
万博協会は開幕前から「チームエキスポ」と題した取り組みで、社会の課題を解決する提案を募った。登録されたプログラムは2400を超す。約半分が企業からだが、NPOや学校、自治会なども4割を占める。
その一部は会場の一角に設けたステージや展示室で紹介されているが、提案者が直接発信できる機会は限られる。市民の参加は20年前の愛知万博で一定の成果をあげた。より深めていくため、登録団体が語り、来場者と交流する機会を増やしてはどうか。
会期中、多様な課題について考える「テーマウィーク」が8回、それぞれ10日余りずつ設けられている。これまで未来の移動手段や食と暮らし、健康といったテーマが掲げられ、パビリオンなどでも関連する展示が人気だ。しかし、世界の現実は明るい話ばかりではない。
8月からの第6弾は、平和と人権がテーマだ。世界各地の戦乱で多くの命が失われ、格差や差別がなくならない現状について皆で考えることは、万博開催の大きな目的のはずだ。ネット上だけでなく会場内でもテーマウィークについて伝え、来場者の関心を呼び起こしたい。
見る。食べる。買う。楽しむ場として、来場者の評判は悪くないようだ。それにとどまらず、万博開催の意義は何かを問い直しつつ、残る会期の運営にあたってほしい。
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