ひまてん!なるジャンプ新連載の話であります。自分、新連載の第一話って、作者名を知らない限りは、そういえば読むか読まないか、完全に運しだいな感じだな…
で、新連載というのは
ストーリー&キャラクター
家事代行で家計を支える家庭的男子・家守殿一のクラスに転校してきたのは、
コスメブランドの女子高生社長兼モデルを務める、女子のカリスマ・美野妃眞理!2人が結ぶ秘密の関係とは...!?
女子高生社長×家事代行ラブコメ開幕!!
第一話試し読み可能。
shonenjumpplus.com
以下は
悪口ではない。
それを
大前提として…「どっかできいたな?」感じがある。
てか、一作は完全に名前を挙げられる。漫画アクションで連載中の「だらしないです、堀田先生!」だ。
あー、読めますか
まーぶっちゃけ、サブスクでアクションが購読可能じゃなかったら読んでないだろう、という感じの作品ですが、「ジャンプであとから似たコンセプトの作品が始まるくらいの類型」と考えるとすごい。
自分は「似たコンセプトだからといって萎縮せず『XXと似てる?おお、それがどうした。むしろ俺流XXがこれじゃい!』と正面からぶつかるのはあり」と常々言ってる。古畑任三郎メソッドというべきか。過去記事いろいろあるので参照してくれ。
ただ、
にしても、そういう場合は元祖、確立者にリスペクトが捧げられていいと思っている。つまり模倣者をマイナスとするのではなく、模倣された側にプラスを加点する、というかね。
で、この元祖ってなんなんでしょうね?
「堀田先生」読んだ時も「あー、どっかで見た見た」だったんだが、じゃあそれは何かというと、バイネームでは指摘できない。有識者の意見、情報を求める。
そしてこれが流行るのは「家事ってめんどー。したくなーい。誰かがやってくれて、自分は食べるだけ、だったらいいなぁ。それをやってくれる人が、恋愛対象になるほど素敵な異性(※あるいは同性。多様性の時代です)だったらもっといい」というのが、性別を超えた「こんなこといいな、できたらいいな」だったという、「コロンブスの卵(今この比喩、つかっていいのかな?)」だったからですね。
時代のあだ花、あるいは先兵としての「…という常識を逆転させようか?いい『ギャグ』になるよね!」という登場の仕方。
そもそもこのテンプレ、確実に「女性は家事が得意できめ細やか、男性は家事ができずがさつで女性任せ。それが引っ繰り返ると『面白いギャグ』だよね!」「アハハ、ナニソレ受ける」というのが基底にあるからこそ、存在しているのは否定できまい
当エキレビ!でもおなじみ杉村啓の新刊『グルメ漫画50年史』(星海社新書)によれば、男性が家庭で料理するという漫画には、ほぼ同時期に『バンザイお料理パパ』(話:東史朗、画:やまだ三平)があるとはいえ、『クッキングパパ』がほぼ元祖と言って差し支えないようだ。連載の始まった80年代当時は、まだ料理人以外の男性はあまり料理をつくらない時代だっただけに、そのコンセプトは画期的であった。
そのためなのか、照れ屋という設定なのか、じつは荒岩一味は、料理ができることを当初は隠していた。ふたたび『グルメ漫画50年史』を参照すれば、一味がそのことを周囲に公表したのは、1998年発売の単行本51巻でのこと。じつにスタートして13年が経ってからだった。それまでは、弁当も差し入れの料理も妻がつくってくれたように見せかけ、友人の頼みでテレビで料理をつくらなければならないときも、「ロックシンガーのデーモン・岩」や「コロッケ大王」に変装して出演した
もっと、端的なコンセプトが新オバケのQ太郎、にあった。実家にしか本がないから、あとで画像を収録しましょう。
あのU子さんがやはり家政婦のバイトをするんだけど、お金持ちながらお手伝いさんがいないと料理も食事もできない昭和の親父に
「材料をこれだけ買ってきて」
「あんたお手伝いさんだろ」
「たべたきゃつべこべ言いなさんな!ふたりでやったほうが早いでしょ」
…で、U子さんは何もしないで指示だけなので「2人」ではない(笑)
ただその結果できた料理はおいしいものだったらしく
「おかわり。おじさん料理うまいね」
「やればできるんだな。これならおてつだいさんいらないよ」…というオチ。
いや、プロフェッショナルの家事代行的には職業倫理にそもそも反しているし(笑)、それもふくめて役割逆転的な「ギャグ」であることも間違いない。
ただ、柔道が得意で、基本すべてを暴力で解決するというパーソナリティも含め(笑)、結果的にU子さんのやっていることは一回転してフェミニズム的に評価できたりもする
Qちゃんがナチュラルに「護身完成」してるのも見どころ。
さて、これをまとめたのは…2018年、6年前か
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「料理下手ヒロイン」の元祖とはいわないけど、そこを特徴としてかなり前面に出して確立したひとつに「エスパー魔美」は挙げられますよね。
— Gryphon(INVISIBLE暫定的再起動 m-dojo) (@gryphonjapan) 2018年5月14日
にしても、この魔美のメシマズギャグを描くときの藤子・F・不二雄先生はノリノリすぎる(笑) pic.twitter.com/wFjV4EvSkz
最近の少年ジャンプでもふつーに使われ「かわいい女性が、実は大食い」は完全に定着した小ネタになった。それでも個性は出てくるな、やはり作家ごとに(笑) pic.twitter.com/STNhYIvmGr
— Gryphon(INVISIBLE暫定的再起動 m-dojo) (@gryphonjapan) 2018年5月16日
で【仮説的総括】
— Gryphon(INVISIBLE暫定的再起動 m-dojo) (@gryphonjapan) 2018年5月16日
これらの描写の変遷には、ジェンダー的偏見とその打破という問題は確実にありますやね。大食いや酒乱酒豪は「男の属性」がまずあるから、女性のそれにギャグ、笑いの要素が強まる。
同時にこの種の”欠点”も女性に付与、描写し得るんだ、は、やはり表現を拡大したと思うのです。
数日前から話題になってた「酒豪、酒乱、大食い」「料理ベタ」などが女性キャラクターの個性として描かれる系譜の考察をまとめたいと思うのですが、前者のほうは、やはり「1丁目1番地」にうる星やつらのサクラさんを置くべきかなあと思うのです
— Gryphon(INVISIBLE暫定的再起動 m-dojo) (@gryphonjapan) May 16, 2018
てか、ここまでは男性キャラでもいねえぞ(笑) pic.twitter.com/Jesl0fT1M4
高橋留美子のポリコレ問題については、当方けっこう書いてて、ある意味お馴染みですが、まさに上に書いた
「女性が『……』という設定は、普通の常識をひっくり返しているから面白いギャグになるよね!」
というのが、非常に上手い方だったのですよね。
その結果、それがテンプレになり、さらには「そういうのも当たり前な普通の設定」になってしまうという…。
で、そもそも「Aという常識をひっくり返した∀は、面白いギャグになると思ったので描きました」というのは、Aという常識に正面から批判的な人にとっては援軍か?妨害か?という話が出てくるんです。
でもそれは、上にかいたように「あだ花」かもしれないし、それが常識の突破口を開く先兵、「切り込み隊長」かもしれない。
ここから、こうなった。最近のまとめ
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「ドカ食い」も中年男性だとシャレにならんが、若い女性ならシャレになる、ということもあろう。「ある」のがいけない!「ある」のがいけない!
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これはハリウッド映画における
「マジカル二グロ」とか「謎と神秘の東洋人」もそうだろう。
「どうして黒人は、いつも主人公を助けて最後は身代わりで死ぬ、陽気で気のいいやつなんだ?」
「東洋人といえばカラテを使ったりゼンの思想を語ったり、そんなやつばかり出てくる!セプクものだよ、おおブッダよ寝ているのですか!」
というのもわかる、わかるけど、実際そこでスクリーンに重要な役どころとして登場し、強い印象を残すことから、黒人俳優やアジア人俳優が活躍できる土壌ができたりする。
大リーグ初の黒人選手ジャッキー・ロビンソンは非の打ちどころのない完璧で品行方正なタイプで、彼が突破口を作った後に癖のある悪党味のある黒人も許容された、という説も聞いたな。
この「黒髪で従順な東洋女性ヒロイン」を打破しようと「髪を染めて強気の東洋女性ヒロイン」が登場したら、そっちも多数生まれすぎて「それはステロタイプだ」と現場で言われたって話はいつ見ても苦笑。結局どうすりゃいいんだ。
驚いた。『シャン・チー』のシャーリンは当初髪の毛の一部が赤い”典型的な強気アジア系女性キャラ”だったが、メンガー・チャンが「それは問題のあるステレオタイプだ」と指摘する記事を読んで監督に相談したところ撮影1ヶ月を過ぎていたがVFXで全て黒髪に修正したらしい。 https://t.co/jzQvEXv4vH
— ビニールタッキー (@vinyl_tackey) 2021年9月8日
これ相当前から言われてるよね
— 惚香 (@urmyviz) 2021年9月8日
髪を染めたパンクで反抗的なアジア人女性というステレオタイプで、一般的な黒髪のアジア人女性=従順で大人しいというステレオタイプを逆説的に強調してる
ベイマックスとか実写版攻殻機動隊とかパシフィックリムとか例挙げたらキリがない
まあ、そんなことを、少年ジャンプの新連載を読んで考えた次第です。(了)
【創作系譜論】
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