柳澤健「2000年の桜庭和志」が1年2ヶ月の連載を完結した。
その面で比較するなら、歴史の途中で袂を分かった高田延彦が、芸能面との仕事を含めてより恵まれていただろう。
だが、今「QUINTET」という新ルールのグラップリング競技を立ち上げ、それを広めるのに尽力しつつ、自らもそこで選手として活躍し続ける桜庭は、上とは別の意味で「幸福」を掴んでいるのではないかということでした。
そのように思わせてくれた、この連載に改めて感謝したい。以前も書いたように、 前作「UWF」本や「棚橋弘至・中邑真輔」本などは、 その前のアントニオ猪木やジャイアント馬場本とは構造が異なっていて、映像でも活字でもかなり膨大な資料が「既にある」というのが大前提となる。そういう点では、最近の事例を扱ったノンフィクションは、ある程度それらの先行資料をどのように読みやすく、ひとつのストーリーに収斂させていくか…が問われる。そういう方法論の点でも、多くのヒントが埋め込まれている連載だった。

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ところで、PRIDEの収入についての技術が興味深かったのでメモしておく。
これはNumber通算980号に掲載された、 連載23回目の記述から要約。
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・35000人を収容できるさいたまスーパーアリーナでの興行が超満員になったとする。公共施設だから会場費は意外に安く本番当日料金は1000万円強、 設営やリハーサル日は550万円程度。
・チケット収益は3万5000人を集めれば、5億円は超える
・スカパー年間契約金は6000万円から8000万円。しかしそれ以外にインセンティブ契約があり、視聴数がある一定数を超えると、一件あたり1500円から2000円の収入が得られる。多い時は1大会で2億円が入ってきた。
・フジテレビの放映権料は生放送でなければ約1千万円程度。3000円のパンフレットが2万部売れれば6000円ぐらいの収益。大体ひっくるめるは1大会で7個億円近い収入が得られた。
ちなみにこの回では2002年の、Dynamite! 初開催についての記述もある
(メインは桜庭和志対ミルコ・クロコップだった)が、演出やギャラなどに諸々の経費もかかって、利益は「100万円」だったと言う(笑)
ちなみにもう一つ見逃せない発言をしていて、石井館長は
国立競技場を借りる時は大変でした。格闘技には貸せないって断られたから、森喜朗さんに口利きをお願いしてようやく借りられたんです。森さんとは長い付き合いで、 K-1の 会場にもよくお招きしたし、大会当日の国立競技場にも足を運んでいただいて、控え室からずっと一緒でした。
森喜朗さんに口利き…
長いお付き合い…
控室からずっと一緒…
こ、コ、コンプライア…… たとえばその「口利き」のお礼はなんだったのかな。カステラとか、おせんべだったのだろうか。

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「どるから」って連載続いてたんだ!そして9月に最新刊が出るんだ!!!