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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

ミクラスさんインタビュー。「セブンのポリスマン?そういうのはよくわかんないっす」

※追記 その後、リンクを全体的に張り、世界観の説明もしたポータル記事がこちらです
m-dojo.hatenadiary.com

インタビュー前に

怪獣プロレス史の研究をしていて、自分がラッキーだったのは、最初にお話を聞けたのがエレキングさんだったことだった。
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20070804/p2

ウルトラ怪獣シリーズ 05 エレキング

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  • 発売日: 2013/06/29
  • メディア: おもちゃ&ホビー
エレキングさんは怪獣プロレス界で、セブン、タロウからウルトラファイトまで出演したその顔の広さや人当たりのよさ、マメさで、自然とこの業界の「幹事役」と自他共に認めるような、そんな存在だったのだ。そしてインタビューで、自分の興味や問題意識をありがたくも面白がってくれて、コーディネートや協力をしてくれるようになったのだ。

そんなエレキングさんの厚意に甘えて、さまざまなインタビューをできた。そして今回…、ミクラスさんに会いたい、とリクエストしたところ、エレキングさんは「ほう」という表情を見せたあと、しみじみと語った。


「そりゃあいい、すごくいい……だけどね、正直、ミクラスさんは骨の髄までオールドスクールの怪獣ですよ。義理堅く、そして口も固い。親分…セブンさんのためなら粉骨砕身、秘密は墓場まで持っていくと。そんな昔かたぎのひとですからね。貴方が興味をもっている分野については、語ってくれますかどうか」

ウルトラ怪獣シリーズ 55 ミクラス

ウルトラ怪獣シリーズ 55 ミクラス

  • 発売日: 2013/10/12
  • メディア: おもちゃ&ホビー

――ああ、そういう怪獣なんですか。とすると、話を聞くのもよくないですかね?
「いや…。ぜひ聞いてほしいと思います。実をいうとね、私は最初のインタビューでもちょっと彼について語ったけど、あのひとはそういうタイプで口が固く、誰にも何も言わないから、評価や人気があまりね…それは私から見ても残念でね。…それに、時代が変わる中で、そういう最後のタイプの怪獣からも、話は聞いたほうがいいと思いますよ」

そうエレキングさんはいうと、ふと思いついたように手を叩いた。
「そうだ!!ミクラスさんにインタビューをしたら、その後に私に聞いてください。そこで『答え合わせ』をしましょう。大丈夫、ミクラスさんは、自分は裏の話は語らないけど、他人がいうのに文句を言うこともありませんから…ふふふ、ちょっと楽しみですね。」


ミクラスさんインタビュー 本番

―今回は、カプセル怪獣として活躍なさったミクラスさんにお話を聞けて光栄です。よろしくお願いします。
「ウス…」

―もともと怪獣の中で、ミクラスさんのような「カプセル怪獣」というのは、非常に特殊なポジションだったと思います。どういう経緯で、ウルトラセブンさんのカプセル怪獣になられたんでしょうか?
「まあ…縁っすよね。セブンさんが完全に団体のエースになる前、そのころから一緒でしたから」
  
―いろんな資料を見ますと…いわゆる「カプセル怪獣」というのは、もともとは「セブン道場」と言われたグループのことだったそうですね。ウルトラの中で、試合前にリングを占拠して、いわゆるガチンコのスパーを熱心にやっているグループがあったと。本物の強さを追い求める、やや異質な集団で、その中心となって技を教えて、くいついてくる怪獣をことにかわいがったのがウルトラセブンさんだったと。
そしてセブンさんが団体の大黒柱になった時、そういう若手怪獣の中から特に選抜して、カプセル怪獣にしたのがミクラスさん、アギラさん、ウィンダムさん…だったとか?
「あー、自分じゃ異質とか、そういうのはわからなかったすね。うちの怪獣はみんな強かったすよ。みんな練習は、すごくしてましたよ」
 
―あ、いや、もちろんそうだと思います。ただスパーは、やるグループとやらないグループに分かれてた、というのはそうなんですよね。
「まあべつに、稽古とかやらなくても、恐竜界でやってて、そのままこの世界に来た怪獣とかは、火を吐くとか角から光線出すとか、そういう練習しないといけないすから。寝技のけいこ、やらない人も弱いとかじゃないですよ」
  
―どういう違いで、練習の重点が変わるんでしょう?
「新弟子はコーチもいろいろ言うけど、基本、最後は一人一人っすからね。稽古も好き嫌いですよ。おれも、楽しいからセブンさんやアギ(アギラ)、ダム(ウィンダム)とやってただけで」
 
―さっき、恐竜界で鳴らした人はスパーをかえってしない、というお話をされていましたが、ミクラスさんもバッファロー界の相撲でスピード出世をされてましたよね。
「勝ってたといっても、まだ下のほうっすから。厳しい壁に当たる前に、すぐセブンの大将のお世話でこっち来ましたからね。出世だとか、そんなのはもう……」
 
―でも、バッファロー相撲のバックボーンは随所に感じられます。怪獣格闘技界ではあまり使われない、頭突きの破壊力などもそこですよね。
「頭突きというか、かまし(ぶちまかし)っすよね。かましは頭ももちろんガンガンとぶつけて鍛えますけど、むしろ重心と、下半身の力なんす。効果あるんすけどね。

―以前、リアルファイトに出たいと言っていた若い怪獣に頭突きを教えた、とその方から聞きましたが。「頭突きを習うつもりだったが、まずすり足と四股を朝から晩までやらされた」と言ってましたね。でもそれが役立ったとか。
「それで下からどーんとかまさなきゃ、ただの首振りっすからね。奴は、かましたんですか?」
 
―あ、いや、結局参戦した団体は頭突き禁止ルールになったんだそうです(笑)。だけど四股と摺り足を続けていたから、足腰が粘り強くなって金網の四つ組で常に優位だったとか(笑)。
「そっすか。ごっちゃんす」
 
―あと、バッファロー相撲の話でいえば、”セブン道場”というかジムの練習の中で、ミクラスさんがちゃんこを結構仕切ってたそうですね。たいへんに美味だったとか。
「ダム(ウィンダム)とかに任せると、ロボ連中好みの味にしちゃうんスよね(笑)。俺はプロレスはただまっすぐぶつかるだけだったけど、ちゃんこは丁寧に下ごしらえしましたから。魚でちゃんこ作るときも、鍋にそのままいれるんじゃなくて、三枚におろしたやつをザルに乗せて、熱湯をかけるんすよ。そうすると生臭さがとれるっしょ。中骨も、干した後こんがり焼けばつまみになるっすよ」
 
―実はレッドキングさんが、「ミクラスさんがお店を出したら、絶対繁盛するぜ。というか、俺が行くぜ」と仰ってました。
「いやいや、そういう苦労は今更いいっス。店の経営も色々めんどくさいしね」
 
―「飲み比べで俺と引き分けたのは世界で6匹いるが、ミク公はその一人でな、いずれ決着をつけにゃなんねぇ」とか仰ってました。
(※レッドキングの飲みっぷりに関してはhttp://d.hatena.ne.jp/gryphon/20090906#p3 を参照されたい)
「もう今は、そんなに飲めないっスよ(苦笑)」
 


―話がだいぶ余談にそれました。ミクラスさんはそんなバッファロー相撲のバックボーンもあって、道場でも熱心に練習されて…そんな中で、「カプセル怪獣」じゃなく、ウルトラと闘うヒール怪獣としてスターになろう、そんな野心は無かったんですか?
「無かったスね」
 
―それはどういう…
「大将(セブン)の側にいられるんスから。もうね、別にほかのをやりたいとかないス」
 
―男が男に惚れる、というやつですかね。その結果、セブンさんの相手とまず戦う、そんな不思議なポジションに、ミクラスさんらカプセル怪獣のお三方は立つことになりました…そういえば、「カプセル怪獣は本当は五枠あった」とか「レッドキングアントラーカプセル怪獣の候補だった」という話を聞いたことがあるのですが、そのへんについては……。
「詳しい話はしらないっすけど、レッドさんとかがアントラーさんがカプセルやるかも、という話はあったみたいすね。ただ、レッドさんとかはもうあちこちで稼げる人だし、ふらりとカバン一つで出掛けるのが好きっすからね。カプセルに縛られるのはあの気性じゃむりっしょ。アントラーさんは、交渉がちょっと進んでたのか、道場に来たことあったすよ」
 
―その時、「5分やってみろ」とセブンさんが声をかけてスパーしたところ、ミクラスさんが圧倒したという話を…
「覚えてないっスね。アントラーさんは強いっすよ。みんな強いっすよ」
 
―あ、いや、当のアントラーさんから「ミクラスは別格だったね。その日は入団交渉がメインで、やる心積もりじゃなかったこともあったけど、さんざんだったよ」と…
「覚えてないっすけど、…じゃあ相手が準備してなかったから、かもっスね」
  
ミクラスさんは、セブン道場改めカプセル道場の師範代格だった、と言われてますけど、そのミクラスさんから見て、ウインダム、アギラの両名はどうだったんでしょうか?
「それはね…もちろん、大将に認められたんだから、俺たちはまぁ、そういう点ではハンパなことはしてねえぞ、というプライドはあるッスよ。だからみんな強かったスよ。でもダムもアギも、俺よりは巧かったですよ。俺はガーンといってドーンとやるだけっすから。カテえんですよ。俺があいつらから見習ったところも多いっス」
 
―アギラさんは、その後「ウルトラファイト」にも参戦したものの、正直、戦績は振るいませんでしたね、
「アギはあのころ、腰やっちゃってたんで。」
 

―そして、ミクラスさんはエレキング選手と対戦しました。
デビューしたばかりだったエレキングさんの出世試合でもあり、エレキングさんは、今でもミクラスさんに感謝と尊敬を折にふれ語っていますが。
「まあ、やられちゃったからね、こっちは。そのあとエレキングさんのほうは大スターでしょ。やられちゃうのも仕方ないね」
 
―でも、パワーで前半は圧倒しました。
「いつも、しょぱなはね。後半はだめっすから。」
(※この試合に関するエレキングさん側からの証言は、先ほど紹介したhttp://d.hatena.ne.jp/gryphon/20070804/p2をご覧頂きたい)
 

―そして…ガンダー戦ですが…これこそまさに、「一線を越えた試合」「不穏試合」であり、「ミクラスは、ウルトラセブンのポリスマンだ」と言われ一目置かれるようになった、そんな試合だといわれます。そのことに関して、じっくり聞きたいのですが。

「いや、もう見ての通りすよ。ガンダーさんが強くて、いかれちゃいました。ポリスマンとかいう言葉、よくわかんないっす」
 
―闘い方をみると、それだけでもないようですが…
「いや、ほんとそれだけっス。まぁ、俺はそんなに自慢するようなこともありませんよ。大将と練習して、おそばについてたんですけど、まあそれ以上のことで、なんか、こう、おもしろく記者さんにいえるようなお話は無いっスね。大したもんなくて、すいませんっす」
<了>

エレキングさんの「答え合わせ」

ははは、私もガンダーさんも『強かった、やられちゃった』でおしまいですか。まぁそうでしょうねえ…正直、そういう答えを予想してましたよ(笑)
あの人は中ではあたたかくも厳しいかたですけど、こと怪獣プロレスの話になると、リングでやったとおりのこと以上は絶対に言わないですよね。
勝った相手は、負けた相手がより強い。みんな本気で、自然状態で闘って、その結果だと。生き方と同じで、愚直に一直線なんですよね…。


で、ガンダー戦の話でしたね。
ようするに、人間界プロレスで言えば、「アントニオ猪木さんのパキスタン遠征」なんですよ。
地元のプロモーターが、トップをだまし討ちしてそれを商売につなげて、一山当てようという厄介な連中でね…まあ、そういうプロモーターは常に一定数いるですけどね…。

完本 1976年のアントニオ猪木 (文春文庫)

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あのポール星人ってのはそういうやつで、確かにセブンさんはとんでもない実力者で、ガンダーに負けるとも全然思いませんけど、ただ「寒さと吹雪の中では100%の力を発揮できない」というのは、まぁガチな設定でね…。
それを狙ってポール星人は無理を言って自分のホームの雪山につれてきて、ここで子飼いのガンダーに「仕掛け」させて、ガンダーを一躍スターにさせようとしたんですね。ガンダー本人がそれに乗り気だったか、プロモーター命令で否応なかったかはわかりませんが…
でもセブンさんは、遠征先で「王者ピンチ!!地元のトップのタイトル奪取なるか?」というアングルを務めるのも義務だと心得る人ですからね。吹雪で遭難しかけるようなプロモーションでも文句を言わず引き受けたんです。
でも、逆にその中でさまざまな状況から「こりゃ『仕掛け』が来るな」と読み取ったんです。
ここで面白がって本人が相手するとき(キングジョーインタビュー参照)と、そうでないときの境目は正直わかりません。けど、何か考えたんでしょうね、ここはポリスマンだと。
「最初にミクラスを出して前試合で盛り上げてくれ」と注文し、ポールのほうは普通の宣伝マッチだと思ったんですかね、決定ですよ…。

そして試合ですが、バックを取ったはずのガンダーが、なっかなかテイクダウン…倒すことも、極めもできなない、あれがすべてですよ。
ミクラスさんはいつも下半身の強化と、バランスの重要性の話をしましてね…私とかのスパーでも、ぽんと背中をみせて「好きにやってみろ」というんですね。時には片足を上げて。
でも、右左に引こうと背中側にひこうともびくとも…いやびくとも、じゃないな。軽くバランスをとってとんとんとん、とついてくんですよ。でもどうあっても倒れない。
あれ、やるほうは軽く絶望しますから。

ガンダーは、あれはプロモーター兼マネジャーのポール星人がワルだったからいろいろ本人もいい評判は聞かないですけど、ほかの悪口はともかく、「弱い」なんて悪口をいうやつはひとりもいないですよ。特にレスリングは、アマでもいいところまで行ってたはずです。
でも、それですからね。

それでガンダーのほうも心が折れちゃって、空を飛んでの空中殺法とか、冷凍光線でフィニッシュですよね。あれは「もうガチはいいよ」ってことですよ。本番の時は、セブンさんに「仕掛ける」なんて気は無かったんじゃないでしょうか。実際、円満な、ふつーの試合だったでしょ。


私に電撃で負けるなんてフィニッシュを選んだりしたこともあって、ミクラスさんを安く見積もるファンは多いですからね…。その罪滅ぼしに、今日はちょっとラインを踏み越えてしゃべらせてもらいましたよ。

ふたたびの<了>。

過去記事

怪獣インタビュー・リンク集 - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20140302/p1

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■最優秀怪獣賞受賞記念・エレキングさんインタビュー
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20070804/p2
■史上最強のシューター・キングジョーさん独占インタビュー!
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レッドキングさんインタビュー。「ビールとファイトと、時々ウルトラ」
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20090906#p3
ジャミラさんインタビュー。「地球人ギミック?最初はとまどったけどねえ」。
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■往年の名タッグ「恐竜戦車」インタビュー〜「恐竜」さんと「戦車」さんの再会対談。
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ミクラスさんインタビュー。「セブンのポリスマン?そういう言葉はよくわかんないっす」 - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20150727/p1
 
■(番外)もしウルトラ怪獣が最強決定トーナメントを行うなら、組み合わせはこうなる
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20120328/p1
■(番外)キリスト教だけじゃない!ウルトラ兄弟も「仁義なきウルトラ兄弟」と考えれば分かりやすい(本当か?)
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20140316/p3


ウルトラフェスティバル2015

http://ulfes.com/2015/

ウルトラマンX」放送中

http://m-78.jp/x/