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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

「絵が巧い」とは何か?「ZUCCA×ZUCA」(はるな檸檬)の絵は「美術的にすごい」と言われ驚愕、の話。

さて、ぼくは絵のシロートです。いや冠称をつけてド=シロートです。フランス人みたい(笑)それでも「たこのホームズ」イラスト描いたり、司馬遼太郎燃えよ剣」を勝手に漫画化したりと、好き放題にブログでやってますけど(笑)
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20140924/p4
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20130524/p3


そんなシモン・ド=シロート卿たるわたくしが、絵がうまい漫画家だなー、と思うのはだれか。
そうすると、ほんとにシロートっぽく
かわぐちかいじ
森薫
さらにいうと、北崎拓原哲夫…そんな各氏が脳内でぱっと思いつく。

もうこれでネタは割れてしまっているが、要はシロートは「描き込みが多い」と「絵が巧い!」をほぼイコール的に結びつけてしまうのですね。ほんと、シロートってだますの簡単だ。
さらにいうと、日本のよろいかぶとの武者を描いた絵が出てくるでしょ。あとは中央アジアの、よく名称も分からないがとにかく刺繍や装飾がいっぱいの民族衣装や敷物が出てくでしょ。そうすっと「わーすげー!」「これが『巧い絵』だ!!」と、もう無条件で感服するのですよ。俺だけかな?
いや、実際、上にあげた人々はガチで絵が巧いのだろうけど、それがはっきり、判るということですな。


いや、こいつらガチだよ。シューターだよ。セメントだよ!!!
ちょっと画面機能上ぼやけてるけど、オリジナルサイズで表示すると、もうウムを言わせない。


つうか、単純に言って「こういう絵かくの面倒だろーなー、いやだろうなあ」「それを描いてるのがすげーなー」という、まさにドシロートな感想なんですよ。
でも「ちはやふる」の作者の人、「描くのが大変だから、部のユニホームはシンプルなデザインにした」みたいなおまけ漫画描いてたしな。半分ジョークだとしても、そうだよねえ。
しかし、どうも突然変異的な天才という話を漏れ聞く森薫氏は、あのくそめんどくせー、複雑な刺繍入りの民族衣装を描くのがたまらなく楽しく、幸せだとの噂も聞くが…そういう性癖 能力は、もはやシロートのわかるところではない。


ですが。だが。


ここに、東村アキコの自伝漫画「かくかくしかじか」3巻がある。

美大を卒業したあと、就職せずに宮崎に帰った明子。日高先生に再会し… 少女まんが家を夢みたあの頃を描くドラマチック・メモリーズ第三弾!

すでに自伝漫画、はあ大家ですなあとニヤニヤするところもあるが、これもまた80年代〜90年代だ、それが「物語」「歴史」となる一環でもあるんだろう。
(これと同じ http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20141024/p4 )
それに実際、人気漫画家だし、自分を対象に描くのうまいしね。自伝漫画は大家が描く、というのが思い込みで、エッセイ漫画の延長とも見るべきなのでしょう。

いやまあ、本題はそこじゃない。この3巻に、かの宝塚(ファン)を描くギャグマンガZUCCA×ZUCA」の作者・はるな檸檬氏が登場する。
彼女が東村アキコとつながっていたことは知っていたが、実はその中でも旗本・譜代大名…つまり、宮崎県の同郷で、そこでの美術大志望者向け絵画教室でもアキコ氏の指導を受けていたつながりがある、ということを知ったのですよ。

そこ引用しますね。

はるな檸檬さん、昔は黒髪の美少女。いまは金髪のイキな三十路。はいメモ。
というかここ、また余談だ(笑)
それにしても「あまりの時の流れの速さに 柿ピー一気食い」というのは意味不明だがすばらしいポエムだな…


さて本題に、また引用…。

まず補足で解説すると「日高先生」というのは、二人が通った絵画教室の厳しい先生のこと。「あいつら」という女性二人は、この前に漫画の絵と美術の絵は違う、ということを解説するために作者が「絵画子」と「漫画子」というふうに擬人化してケンカさせてたのだ(笑)。その二人が仲良く融合して表現している…の図。


さて、解説が終わったところで驚きます
ええええええええ!!!!!


ここからは自分の恥の告白です。
私、宝塚はほとんど興味も知識もない仁ですが、「ZUCCA×ZUCA」は、「ファンの生態の面白さ」「熱狂の、はたから見ての滑稽さ」という普遍的な面白さを感じ、ずっと応援しておりました。

宝塚ファンは台湾に公演を見に行くのに、なぜ格闘技ファンはUFCシンガポールに見に行かないのか -http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20131107/p3
 
ふたつの迷信?の、宗教的に合理性のある??説明について(笑) - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20131111/p5
  
”熱狂”の滑稽を描く傑作宝塚(ファン)漫画「ZUCCA×ZUCA」最終回/毒に満ちた「独身OLのすべて」(ともにネット漫画) - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20140521/p4

しかし…ここで告白するのだが、わたしゃ「かくかくしかじか」3巻を読むまで、はるな檸檬ZUCCA×ZUCA」をば、脳内の「やはりギャグ漫画はアイデア勝負だね!お話が面白ければ、絵のうまさとか関係ないねフォルダ」に入れていたんですよ(笑)
具体的には、「山賊ダイアリー」の岡本健太郎とかのいるフォルダ(個人名を挙げるな)。

この絵ですヨ?
詳しくは連載完結後も公開されているこちらへどうぞ。(読んだら戻ってきてね…いや行きっ放しの人出てくるで、絶対)

ZUCCA×ZUCA ヅッカヅカ/はるな檸檬 h

※2020年更新 現在のURLは
www.moae.jp
 
※アドレスは間違っていないはずなのだが、エラーで行けないことあるようです。
念のため
http://www.moae.jp/
本体を貼り付けておきます。ここから「一覧」コーナーを探すと、すでに連載終了ですが公開されています。最終回から開かれますが、下のボタンで過去のを見てください


そりゃ、「ピカソはあの画風になる前に、普通に判りやすい写実の絵の傑作を何枚も残している」ことは知ってるし、デッサンのすごくうまい人、美大を出た連中が、そこから線をしぼりに絞り込んでシンプルな絵を描くこともしってる。


だもんで、正直、わたしは「かくかくしかじか」を読んだ後、『実はこの人の絵のうまさはすごいんだ、デッサンとかすらすらとリアルなの描けちゃうんだ。その人が敢えてシンプルに描いた、美術的な絵と漫画的な絵の融合したものなんだ』という前提、先入観越しに見ているのですが…


いやあ、美術の世界の奥深さだけはわかった(要はまだ「巧い」と実感できへん)。


その師匠格のアキコ氏だって、美大出でスケッチとかもさーらさら、絵画教室では師範代格の人だ。

この絵にもそのエッセンスが入ってるはずでし。
これも巧い、はずです。



皆さんは、「ZUCCA×ZUCA」のはるな檸檬さんや「メロポンだし!」の東村アキコさんの絵を見て「この人は美大出だろう。専門的に絵を学んだ痕跡が、にじみ出ている…」とか判りましたか。わかった人は、おれまじリスペクト。


美術大出身漫画家としては、しりあがり寿氏や西原理恵子氏がいる。
しょっちゅう、自虐ネタにしている(笑)

http://mainichi.jp/movie/movie.html?id=702154261002
 12月18日、金沢市で、漫画家のしりあがり寿さんと西原理恵子さんによる「画力対決」が行われた。美大出の人気漫画家同士が、頭のなかの記憶だけで絵を描き、「へたうま」の技を競い合う企画。03年発売の『西原理恵子の人生一年生2号』(小学館)に収録された第1回の「対決」が反響を呼び、第2回は06年の「手塚治虫文化賞」10周年記念イベント中に行われた。これが第3ラウンドとなる。(2007年12月18日掲載)

追記 twitterでの反応のひとつ

ナデッドナデッドナデーモンズナデデデデデ ‏@nadegata
https://twitter.com/nadegata/status/525843096508981248
 
@gryphonjapan 竹梨えり「かんなぎ」6巻にもこの話に通じるエピソードが有りました。絵の良し悪しがわからない美術部員の主人公が他の部員に否定・同情され、自分が美術に向いてないことが無力感に繋がり落ち込む話。
(※リンク先に画像あり)

今は埋め込みの方法覚えた



画像追記 藤田和日郎双亡亭壊すべし」で語られた「うまい絵とは何か」の議論(2021年…だったかな)

f:id:gryphon:20220124043722j:plain
双亡亭壊すべし」での「上手い絵」の議論 写真が生まれてから芸術もできた 藤田和日郎


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