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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

ベンソン・ヘンダーソン、母親を語る。「僕はコリアン・ファミリーが助け合う、あの街で育った」(ゴン格)

ゴン格は通算250号の記念特大号で、トテモ分厚く、まだ全然読み終えてない。そして値段もおたかく1300円。今後の値上げの布石(かな?)。

さてそのトップ記事と表紙を飾るはベンソン・ヘンダーソン。今年はいよいよ3月3日に火蓋が切られるUFC日本大会だが・・・・一年前のこの大会で彼はメインに登場しフランク・エドガーを超名勝負の末に下してライト級王者に…なんてのはいまさらいうまでもないな。

今回のゴン格は唐突といえば唐突ながら、ベンソンの人となり、生い立ちを聞いている。
 

いま、UFCと日本には「事前番組情報ギャップ」ちゅうのがあって、大会はWOWOWで放送されるがその周辺の煽り番組はやってこず…そして生い立ち、人間ドラマ、「彼には闘う理由がある(TBS調)」な話はそっちでやっちゃう。
だからベンソンの生い立ちもアメリカではとっくに有名かも…という一抹の不安はあるが、聞き手の堀内勇氏(またひねリンだ!!それに気づかず「あ、ブログで紹介しよう」と思う記事が偶然彼のものであるという恐ろしさ…)も「本場メディアでは詳しく紹介されてない」と太鼓判を押している。
じゃ珍しいだろうし、彼の韓国人の母親…一人のアジア人が太平洋を渡り、そこでひとりのチャンプを育てるまでの話が文化論的にも興味深い。
本文への興味を損なわぬよう……というか普遍性をもった現象として彼女の人生を読むには、むしろ徹底的にシンプルに記述したほうがいい。

ベンソン・ヘンダーソン…そしてその母親(韓国人女性)の人生

・アフリカ系米国人の父親がソウル基地勤務のときに結婚。兄は韓国生まれ
 
・父親は除隊、帰国後ベンソン4歳の時に両親は離婚。父は復縁を望んでいたが、刑務所などにも入り今は行方も知れない。
 
・母親はワシントン州のコリアンコミュニティに移住。互いに「シスター」と呼ぶ強い相互扶助の風潮がある街だった。
 
・母親が仕事のとき、ベンソン兄弟はその「近所のおばさん(文字通り「母親の姉妹」という感じだったという)」がお世話。
 
・母親は英語も話せない。生活保護を受けようとしたら「そのためにはテレビや家具を手放すことが条件(日本より厳しい?時代のせい?)」といわれ「息子からテレビを取り上げるくらいなら仕事を増やす」と生活保護を拒否。早朝から夜中まで働き、英語も徐々に読み書きまで覚えた。
 
・自分が練習熱心なのは100%ママの影響。そして父親のダメさから酒、薬、女性関係の乱れに厳しくなった。
  
・自分は韓国系パブティスト信者。自分がオクタゴンで祈ったりクリスチャンラップで入場するのは勝ちたいからじゃなく、すべての影響を神から受けている
 
・母親の料理は毎日韓国料理だし、今も毎週食べてる。韓国語も、韓国で周囲に道を訊ねるぐらいは簡単。
  
・母親は今でも働いている。食料品店を営むようになった。最近ようやく、店員1人を雇って「早朝から深夜の労働」が「早朝から夕方4時までの労働」になった。
 
・自分は11、12歳ごろテコンドーを学んだのが格闘技に触れたきっかけ。母親は韓国文化を身につける一環で自分に学ばせた。家の中はすべて韓国文化だった。


ここから先はベンソンが高校でレスリングをはじめ、MMAの世界に入ってからの話になり、そこの格闘技論…とくにベンソンはエリオ直系のグレイシー柔術を学んだというのだ!その話もヒジョーに面白いのだが、ここでは割愛する。てかだれかが語ってくれるだろう。


今回、当道場本舗はあくまで「渡米後に夫と離婚した子連れコリアン女性と、その息子」の個人史と文化論に注目する。

しかし・・・実に典型??なのか、彼女だけ超人的にすごいのか。
ただ、子連れマザーが早朝から深夜まで働くとき、無条件で預けられるような濃密な人間関係や相互の依頼、協力関係は一昔前の韓国コミュニティの特徴かもしれない。
自分はほんのちょっとの実例以外は書籍で知るのみだが、しばしば韓国の人との人間関係は、日本人基準で言えば「遠慮がない」「ずうずうしい」と感じるような…たとえばあいさつもしないで友人の家に入り、まっさきに冷蔵庫を開けて何かを取り出し飲む…ぐらいはフツーだし、そんな関係から見ると現代日本人の平均は「冷たい」「よそよそしい」となる、という。
これはいい悪いではなく、文化の型の差・・・なまじ見た目はそっくりだからそういうところで余計な軋轢を生む・・・・なんてのはスピリッツでテキトーに連載している日韓カップル?の恋愛漫画「スジョン」あたりでも出てくる話なので詳細はそっちでも見てくれ。

水晶日韓恋愛狂詩曲 1 (ビッグコミックス)

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恋心をはぐくむには、文化、風習、民俗…など、
かなり手強い障壁だらけ……
はてさて、この一途なる愛、無事成就となるのやら……!?
異国×異文化間恋愛ラプソディー、熱烈的開演!!

そういえばこんなのもあったな。


ただ、日本以上に少子化も進む韓国本国ではこんな関係性はどうなのかしらね。ベンソンのコリアンコミュニティ(ワシントン州)はそういう境遇の女性のための特化した相互扶助共同体だったのかもしれない。
まあこのへんも、もっと詳しい人はいるでしょう。
 
そして、テコンドーはケンカに勝つとか健康のためではなく「私の母国の文化を学ばせる」という意識でやらせると。そういうスポーツ伝承も、例えば中東系移民なんかにあるのかな。


さらに…ベンソンは大学卒業間近にMMAに挑戦するのだが、レスリングでネブラスカの大学に行ったという。その理由が興味深い。
ここだけ忠実に引用しよう。

ママから離れたかったんだよ。というのもね、僕ら在米コリアン・ボーイズはみんなママべったりになりがちなんだよ(笑)。僕のイトコたち(※ベンソンは、育った街はみんな母親が「シスター」同士=子供たちはみんな「イトコ」同然、という意味で言ってる)もみんなそんな感じだった。だからこそ僕は「ここで男として1人でやっていかねば!」と思ったんだよ(略)

ふむ。
これも実際のところ、「文化の型」が大きな役割を果たしているようだ。どうも人間の親子関係は、生物学的な本能のインプットが無いらしく、文化の型をなぞる…韓国系の人々が、父親、母親と関係が強く従順なのには当然「孝」の伝統が無いはずはない。特に教育に厳しく、それで結果を出す「タイガー・マザー」もアジア系の特徴として有名だ。
ヤマザキ・マリさんは自分の夫の家で母親や祖母が非常に旦那に密着していることをあきれて書いている…イタリアの大家族文化も有名だね。

モーレツ!イタリア家族 (ワイドKC)

モーレツ!イタリア家族 (ワイドKC)

しかしベンソンは、一歩外へ出ればアメリカの文明文化である環境で「俺はマン(男)にならなきゃ!」と意図的に韓国文化の母親から離れようとする…こんな風景は、他の移民にも別の形であるのだろう。


まあ、自分は海外経験も乏しいので、このベンソン母子の挿話はむしろ材料として、いろんな方に語ってもらいたい気がするのであります。典型なのか例外なのか、アジア系とくくるべきか韓国特有か、ベンソンの行動とその他の「イトコ」はどちらが有るべき姿なのか・・・・


でも
最後に凄いネタを。働き働きで息子はチャンピオンにもなり、やっと店員もやとって楽ができる=「早朝から深夜」が「早朝から夕方」になったお母さん、その余暇をどう活用しているか。
ベンソンいわく

ママは4時に仕事が終わってから柔術道場に通うようになった…週3回やってるよ

お母さんの身長は150センチたらずだという。

작은 고추가 맵다 チャグンコチュガメプタ
「小さな唐辛子こそ辛い」

とはこういうことでしょうかね。

そんなベンソン・ヘンダーソンは次回、UFCにとって「最後の外敵」となる男…ストライクフォースの殺戮天使、ギルバート・メレンデスを迎え撃つ。