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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています 

藤子・F・不二雄漫画の落語の影響、「オバQ」編

もともとはこの記事を読んで

■藝人狂時代 落語の視点で読む『ドラえもん』 〜らくだ〜
http://omoshow.blog95.fc2.com/blog-entry-1560.html

■落語の視点で読む『ドラえもん』 〜天災〜
http://omoshow.blog95.fc2.com/blog-entry-1542.html

何の気なしに、はてブで「オバQにもいろいろありますね」と書いた。

gryphonjapan (MMA)
オバQにも、大人になって「あ、落語が元ねたか」とわかったもの多数ありますね。「ヘタの横好きの大家さんの、画の個展にいく話」(寝床)やドロンパと神成さんで「うまや火事」とか。 / “藝人狂時代  落語の視点で読む『ドラえもん』 〜らくだ〜” http://htn.to/c4YmGH

ごく平凡な感想のつもりだったが、意外なことに連動しているtwitterではかなりたくさんのリツイートを頂いたので、もう少し詳しく紹介してみようと思います。

まず、大大大前提として、藤子不二雄はコンビで相当の落語好き、落語通であったということです。いろんなエピソードがあるらしいのですが、もっと詳しい人に任せて略す。

で、時代についても。
1958年に真打昇進した林家三平の司会で「歌って踊って大合戦」がスタートしたのが1965年。「落語四天王」がテレビで縦横に大活躍していたのもこの1960年代で・・・笑いのスタンダードを、(まあ、みな落語におさまらない活躍をしていたとはいえ)落語ががっちり握っていた時代でした。

で、藤子不二雄が大ブレイクした「オバQ」は1964年のスタート。おそ松くんは1962年から。このトキワ荘発の笑いは、実は革新的なものであり、ほのぼのとした「ユーモア漫画」からスピーディで破壊的な「ギャグマンガ」に変わっていく、そんな革命の旗手だったそうです。実はこういう見立てを、自分は藤子氏(まだ合名時代)のエッセイで自認しているのを読んでいる。

とはいえ、それはまだ初期の話だから、落語の笑いをそのまま、あるいは発展させて漫画に移植するという試みもたくさん行われたとおぼしい。落語ギャグにそもそも著作権はないしね(笑)。


だから、自分が覚えているのは自分のあさい落語知識と、ずっと昔に読んだ「新」を含む「オバQ」の記憶によるものだけ。双方に詳しい人が、全藤子作品を読んでリスト化すればもっとたくさん出てくるでしょう。


なので、自分的にはオバQの「落語翻案漫画」の最高傑作と思える、「大家さんの画の個展」話を紹介したい。藤子・F・不二雄大全集で復刻された、オバQ11巻に収録されています。

藤子・F・不二雄大全集 オバケのQ太郎 (11)

藤子・F・不二雄大全集 オバケのQ太郎 (11)



まさに「寝床」ですね。落語では義太夫だが、ここではヘタの横好きの絵。

仮病で逃げ出した店子を、大家本人だけがうぬぼれて「見られないとは気の毒だなあ」と同情するギャグも、「寝床」に出てきます。

さて。
ここから「寝床」を翻案した「藤子流落語」のギャグが展開されていきます!!
今回は義太夫ではなく画で、しかも本人は具象画のつもりだがどう考えてもシュルリアリズムにしか見えない作品の数々(笑)。「おこると家賃を値上げする」という伏線が冒頭で張られていたが、それは具体的には「何を描いた作品かが分からないと家賃値上げ」というルールらしい(爆笑)。

とうぜんこれはテレビの中で「クイズ番組」が根付いた高度成長、1960年代だからこそのギャグだと思いますが、高邁で上品な絵画鑑賞とその批評が、100円だ200円だのみみっちい賞金つきのクイズになるおかしさ。
自分がとくに覚えていたのは、このへんのテンポのよさだったのでしょうね(小学生時代「コロコロコミック」に再録された。これはそれ以外、てんとう虫コミックスでも読めない作品だったのです)
しかし、そういう近代化だけでなく、藤子先生はもうひとつの趣向を凝らしている。

あ・・・これは「こんにゃく問答」だ(笑)。
このふたつの最強爆笑落語をコラボさせ、この「なにげないひとことが偶然正解となる」ことによって家主さんにすっかり気に入られたQちゃんは、絵のモデルになって・・・というふうに話がつづく。
かずある「オバQ」の中でも屈指の傑作であり、また藤子漫画と落語の関係(単にアイデアを貰うだけでなくどんどん発展させる)を示す絶好の材料だと思い紹介させてもらいました。
この話、ほんとに「寝床」の大家さんの後日談、または親戚当たりの話ということにして、絵を日本画か何かにした上で落語に”逆輸入”できないかな・・・。
ここではあえて紹介していないが、オチも秀逸なのだ。

おまけ 藤子漫画といえば

http://d.hatena.ne.jp/koikesan/
の日記内を「落語」で検索するのも一興。

http://d.hatena.ne.jp/koikesan/20060709

のび太ジャイアンのやりとりは、古典落語の「壺算」が元ネタになっている。
(略)
藤子・F・不二雄先生は、この、壺をめぐる徳さんと番頭さんのやりとりを、アイスクリームをめぐるジャイアンのび太のやりとりに置き換え、『ドラえもん』の作中に取り込んだのである。
(略)
 落語好きの藤子・F先生は、この作品以外にも落語を元ネタにした話をいろいろ描いているが、そのさい自作の世界観や読者層、時代背景、自分の好みなどに合わせて元ネタを巧みに換骨奪胎している。この換骨奪胎の仕方にFテイストが満ち満ちていて、まことに楽しいのである。

追記 コメント欄より

id:Arturo_Ui 2012/10/12 10:22
21エモン」のゴンスケ(=飯炊きの権助)とか「チンプイ」のワンダユウ(=三太夫)とか、落語の登場人物から名前をもじっているキャラクターも、藤子作品にはちらほらいますね。

gryphon 2012/10/12 18:44
そうだ!21エモン!!!
チョコマカ星人とスローモー星人(長短)、ジュゲム星のチョーキューメー氏、料理「アラバカベッソン」・・・最初のリンク先にはその議論もありました。

■落語の視点で読む『21エモン
http://omoshow.blog95.fc2.com/blog-entry-1546.html