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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

「機密費問題」を考える&上杉隆さんへの問い


一番メインになる記事はネット上で読めるので、まず紹介しておきたい。

田原総一朗×上杉隆vol.1
「私が体験した『政治とカネ』のすべて」
民主党政権も明かせなかった「政界とメディア」最大のタブーに挑戦する
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/657
VOl.2
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/672

本題の前に、上杉隆氏の評価を

わたしは見直してみると彼への評価・批判って。偶然のように交代交代で並んでいるんだよな。
総括するなら、まず記者会見と記者クラブに関しては、「もともと民主党は党首会見を(岡田克也時代から)既にオープンにしている」というのを、上杉氏の雑誌インタビューで教わって、ちょうどネットメディアの増加成長に合わせて興味を持っていたのだが、氏はそこから一歩進んで、その野党が、政権交代で与党になるかもという、千載一遇のチャンスをうまく活用し「あなたがた民主党が与党になっても会見はオープンなのか?」ということを、よく言われる「アジェンダセッティング(議題設定)」。小沢一郎党首や鳩山由紀夫党首に公の場でそれを語らせることで実質上の公約とし、それを梃子にして個別の大臣公開を少しずつオープンにしていった。(私は政権交代翌日から、無条件でオープンになると予測していたので、その後のちょっとした紆余曲折は意外だった)その功績は大だと思う。

ジャーナリズム崩壊 (幻冬舎新書)

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記者クラブ崩壊 新聞・テレビとの200日戦争 (小学館101新書)

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西松事件以降の「リーク報道」批判については、このあとも余裕があれば述べるけど「守秘義務のある人から、それに違反する情報を聞く(逆に言うと語る)」ということの一般的な善悪と、その周辺への批判が(その後は軌道修正したが)少なくとも当初はごっちゃであり、そのせいで彼の主張は少なからず混乱していたと思う。
また「関係者」といった匿名の情報源による報道への批判に関しては、自己の記事や著書と照らし合わせても首尾一貫していなかった。


ただ、これらの、そして下の機密費に関する報道も含めてもっと本質的なところで評価できるのは、それらの報道に不思議なユーモア感を漂わせていることで、それがメディアに長年ひっぱりだこ(本人は「タブーを報道したことで締め出されている」的なことを書いているが、実際に露出の機会はあまり変わってない気が)な理由でもあると思う。
以前有名ブロガー「切込隊長」がそれを評して”愉快犯的”と表現したが、言い得て妙の指摘だ。TVタックルレギュラーの「笑い」とはまた別物といえると思う。それはわずか1年前に始めたtwitterにもっともよく出ている。

なぜツイッターでつぶやくと日本が変わるのか(晋遊舎新書007)

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そして最後に本題に戻って今の機密費報道。
まず彼の手元には、入手した真偽不明の「機密費リスト」があるという。これが信用できるかどうかは、実は氏の記事では「関係者」のコメントによってしか分からない(笑)。
でもまぁホワイトビーチ、組閣、同日選と連戦連敗の某ドラいもんさんでもあるまいし(笑)、ある程度は永田町に出回っているものであろう。


で、週刊ポストではそれを基に一人一人聞いてみて、おおかたは「もらいましたか」「もらってませんよ」で終わっているんだけど、三宅・俵だっけ?「講演料としてもらった」とか「それはその政治家個人のお金のはずだ」とかいろいろエクスキューズはあるけど、まあ1・2人でも「報酬を得た」と判明した以上、それは成果だと思う(ちなみに同時期に他メディアでも同じ取材はあり、三宅氏らも認めている)

上杉:このリストの中で認めた方もいらっしゃるんです。認めた方は名前をいってもいいと思うんですけど、評論家の竹村健一さんと俵孝太郎さん、お二方は認めてます。まだ記事に書いていないんで名前は出せないんですが、論説委員でもお一人認めた方がいらっしゃっる。その方は、「確かにそうだった。申し訳ない」とはっきりいってる。「それをお返しするかどうかはこれから考える」と話している…
 

「現代ビジネス」サイトから考える

さて、この対談は田原総一朗氏が「もらった金を(別の人を経由して)付き返した」話をいろいろ書いてある。当然、初出の情報が多い
これを一覧にしたいが、はてなで表を表示するやり方わかんないんだよなー

・田原にあげようとした人(贈り主) 
・金額 
・贈った手段(直接渡した人) 
・どうやって返した・断ったか
の4項目を挙げよう。

田原総一朗にお金をあげようとしたリスト(「ビジネス現代」より)

贈り主 金額 贈った手段 どう断ったか
田中角栄 100万か50万円 本人が直接 後日事務所で、秘書に返却
ある政治家 講演費相当?不明 秘書から 即座に断ったが、政治家本人は返却知らず
中曽根康弘 100万円? 秘書。断ると脅す 中曽根と昵懇のテレ朝幹部経由で返却
安倍晋太郎 金額不明 城代家老”の秘書から 森喜朗に返却
笹川良一 50万円? 本人が直接 その場で返却、感心される
野中広務 金額不明 料亭の女将?から 森喜朗に返却


おっ、表がはてなで作れた!うれしー。
んでまぁ、これだけの名前がずらずらと挙がってきたのだから、この対談はまさに「スクープ」と言っていいと思うですよ。

情報リーク→「情報あげる側」が重点 機密費→「もらう側」が重点

リークに関してなんですけど、取材が「正当な手段」「報道目的」でなされた場合、実は取材したほうや紙面にのせたほうは、多くはお咎めを受けないんですわ。
最高裁判決

「それが真に報道の目的から出たものであり、その手段や方法が法秩序全体の精神に照らし相当なものとして社会観念上是認されるものである限りは、正当な業務行為というべきであるが、その方法が刑罰法令に触れる行為や、取材対象者の個人としての人格の尊厳を著しく蹂躙する等、法秩序全体の精神に照らし社会観念上是認することのできない態様のものである場合には、正当な取材活動の範囲を逸脱し違法性を帯びる。」

なんかへんな話といえば話なんだが、そういうことで、逆にいうと情報リークというのは、いったん守秘義務のある立場の人からメディアに(正当な形で)渡されると”ろ過”されてしまう。「僕はパパを殺すことに決めた」の草薙厚子氏や、防衛機密をすっぱ抜いた読売新聞記事などでも
http://www.nikkanberita.com/read.cgi?id=200704012145200
「情報を渡した側」のみがお咎めを受けた。
その反対に、機密費というのは、実は渡すほうからしてみると…国会対策云々とかは職務権限がらみで問題になるかもしれないけど、実はたとえば記者に渡しても「情報収集の対象がたまたま記者だっただけです。問題は無い」と言えば言える部分はあるのね。
この問題に途中参戦してきた佐藤優は、現在「みんなの党」の議員である江田憲司から30万円をもらったと言っているけど、江田が「記憶に無い」と同時に「もしそれが事実だとしても、真っ当な使い方だ」というのはそれなりにもっとも。
当時、ロシアで「スパイ」をしていたと自認する佐藤優に、数十万円の工作費を、予算書その他の記録に残らない形で渡すのはただしい措置だろう。というか焦点はその工作費を佐藤優が真っ当に使ったかに動く(笑)。

さらに、もう一本の補助線を引こう。
実は上杉氏や週刊ポストなどの懸命の調査でも、そのお金が「官房機密費(あるいは外務省から上納された機密費)」かどうかは分からない。分からないのが当然で、お金には「機密費から」とは書いてないから(笑)。
もとは国民の税金ですよ!というのを元に追及していると、実は攻め手が無くなっていくのだ。というのは…上の「田原さんにプレゼントリスト」をご覧ください。
これ、実を言うと派閥全盛時代の話が多いんで、もっとあやしげな「派閥のボスのカネ」が原資の可能性も大きいわけだ。派閥のカネと言うのは、どこかからよっしゃよっしゃともらったり、なぜか自宅に数億円単位で転がっていたり(笑)、床下に金の延べ棒があるなど、まあ税金じゃないっぽいお金が多い。

そういうお金が基だったとき、政治評論家や記者が「XXX万円もらいましたけど、税金ではなく派閥ボスのほうの資金です」と答えたら、「あっ、そうなんですか」と納得する人がいるか。いるわけねぇ(笑)

だから「機密費問題」はまた別の話として「機密費からもらったかどうか」でやっていくとまた齟齬が出てくる。さらに言えば「政治家主催の講演会でしゃべったり、レポートを作ったりした。その報酬をもらった。(領収書も切った)これは正当だ」と主張しても、払った政府側は情報収集や工作の一環として、その費用は機密費から出ていたら?
これもまた微妙になる。政治家主催の講演会なんぞにはそもそも一切出ない、出ても報酬はもらわないという立場もあるかもしれないが。


上のような話で「出す側より、もらう側のほうが問題である」という話の意味は伝わったと思う。

「出す側」は罪は無くても「へーそこに払っているの」のは知りたいもの

同じことを、上杉氏も田原氏も言っている。

上杉:(略)私個人としては官房機密費はあったほうがいいと思ってるんです。ただアメリカみたいに30年したら公開する、50年したら公開するとなったら抑止力になるんですよね。もらうほうも。たとえ100年先でも、これもらったら、100年後に自分の名誉が傷付けられるんだと思ったらもらわない可能性も高くなる。 そういう意味では、今までのように記録が残らないというようなかたちじゃなくて、正当に国益とか、国民の利益のために使えばいいという感覚なんですけど。


田原:僕はね、機密費については、必要だと思ってるんですよ。それは何かと言うと、情報提供料ですよ。あるいはスパイですよね。そういう情報提供料としてはあるんでしょうね。ところが、政治家が外遊するときの餞別、勉強会、それから新聞記者、あるいは評論家へのお金になってる、これは問題です。


上杉:僕も正直、配る側は問題ないと思うんですよ。秘書だろうが、政党職員だろうが、海外の人間だろうが、記者、メディア関係者だろうが、配る政治側に問題があるんじゃない。受け取るマスコミ人に最大の問題があるんじゃないかとずっと言ってるんです

このへんはほぼ同感。
「50年後に名前が出る」おことが情報収集にやや支障をきたす可能性はなきにしもあらずだが、そこはわたしは「すべては歴史の前にひれふす」教の信者なので、その程度の不都合は受容するしかないと思っている。

ただ、「あいつはカネを配った(くばるようなやつ)」「あいつはカネを受け取った」というような情報が、しっかりした取材の上で、また原資がどうとか、名目は何かということも一応仕分けした上で広まる、これもまたいい話だ。

さて。
そこで。
ここからが本日の目玉、パンパカパーン!!

上杉さんにお願い。「当事者」として断言できる人の名前を教えてください

この「現代ビジネス」の対談、読んでからエントリにするまでに間があいたが、読んだ直後の感想を、わたしゃブックマークにしている。
http://b.hatena.ne.jp/entry/gendai.ismedia.jp/articles/-/657

gryphon 「私も秘書やってたんで、…渡すほうの役割をやってたんです。そういうときは相手が取りやすいよう・・」上杉氏は誰かに聞くより実体験として、あげた相手の実名言わなきゃ全てがムダと嘘


100字の制限をはずしダイレクトに前文引用すると、ここですね
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/672

上杉:渡すほうも受け取りやすいようにいろいろ考えるんです。私も秘書やってたんで、あまりここでは言えませんけど、渡すほうの役割をやってたんです。そういうときは相手が取りやすいように、会食をして、「今日はいろいろありがとうございました」とお土産を渡しながら、そこに御車代とポンと入れておく。

 あとは結婚記念日だとか調べて、そのときに渡したり。これは官房機密費じゃないですよ、子ども手当ですね、鳩山家の。これはまずいかな(笑)。

上杉さん的には、おもいっきりまずいと思いますけど(笑)、ふつうの読者にとっては大変重要な情報。
というか、これ読んだ人がなんで声を合わせて言わないのか、いまだに不思議なんだが…だれも言わないから、ぼくが言おう。そして聞こう。140字で

週刊ポスト記事とはこれ↓


お土産の「同額返し」というのは「こちら大阪社会部」にもある伝統の手法(もっともこれはヤクザと丸暴との関係であったが)。そんなにうまく同額で返せるのかね、とか、官房機密費から仮にお土産が出たらそれをその政治家やら秘書に渡してもどうなの?とか、追及してる「もらった記者」が仮に同じことをしてても記録には残りませんよね、とか、NYタイムズでもそういうルールなんですか、とか、そもそも本当ですか(笑)、とかいろいろあるけど、現場の苦労ってものもあるだろうからこれはひとまず受け入れて、上杉さん立派ですと認めよう。


で、その上で……ほんとになんで今まで、だれも聞こうとしなかったのかなぁ・・・上杉さんのフォロワーあんなにいるのに、真の理解者はGryphonひとりかしら(調子に乗ってます笑)。


いいすか、当事者証言ってものと取材で得た証言ってものがあります。
「お金(機密費?)もらいましたか」「もらってません」「そうですか」
「お金もらいましたか」「XXX年前にこれこれでもらいました」
こういう取材も確かに重要ですけど、裏取りも必要だろうし、しょせんは伝聞になります。
しかし上に書いた質問「1」と「2」は、上杉隆さんが「自身の体験談」として、そのまま書けばいいことなんですよ。1分で答えられるお話ですよ


そして、上杉さんが、官房機密費を含め、ジャーナリストに権力者から金が渡る(受け取る)ということを本気で悪であると考えるなら、どう考えてもそもそも(1)と(2)の実名を明かすことを躊躇する理由が思いつかない。というか、この実名を挙げない限り、いくら「わたしは機密費や、権力とジャーナリストの癒着を追及する!」と言っても説得力がないと思うのであります。

ツイートでもいいし、どこかの記事でもいいので「ある官房長官」とかぼかさず、ちゃんと発表して欲しいと思います。事件報道の「関係者によると」を批判していた上杉さんだからこそ、でもあります(笑)

以上の問いは、twitter上で上杉さんにも直接お尋ねしました(見逃す可能性は常にあるが)

いま、twitterから引用したわけだが、これで構造上、上杉さんの目に留まることになはなるだろう。どんなレスポンスがあるのか、無いのか、それは彼の自由です(@uesugitakashiのツイートだけでも毎日膨大だろうから、物理的にムリであることも十分考えられる。また、「それは将来、雑誌で発表するつもりの企画なんだから」というパターンだってあるだろう。)

ま、一連の話についてわたしが感じたことを、まずはまとめてみたということ。ただ、一応目に留まりやすくするための努力もしてみた。

あとどうなるかは、成り行き任せってことよ。

書ききれなかったこと

・「野中機関」の闇−−官房機密費、メディアとの癒着をキーワードに「野中広務 差別と権力」「闇将軍」を読み直す。

野中広務 差別と権力 (講談社文庫)

野中広務 差別と権力 (講談社文庫)

闇将軍 (講談社+α文庫)

闇将軍 (講談社+α文庫)


・「金を渡す」にもテクニックがある。古今東西、買収する側のあの手この手は?「スパイのためのハンドブック」に書かれた「贈賄マニュアル」とは?

スパイのためのハンドブック (ハヤカワ文庫 NF 79)

スパイのためのハンドブック (ハヤカワ文庫 NF 79)


・鳩山家の資金移動は?「子供手当」は上杉氏の秘書時代から?


などなど