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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています 

「お前はアンクル・トムだ…」TUFのラシャドvsランペイジ抗争が教える人種問題の複雑さ

まずはこれらの情報をあらためて。

ラシャド vs ランペイジ、その前後の話題 < Gryphon
■TUF 今後の放送
http://www.wowow.co.jp/extra/tuf/episode09.html
http://www.wowow.co.jp/extra/tuf/episode10.html

ランペイジ、映画出演をちょっと後悔。負けたら訴訟?
http://playmma.matrix.jp/modules/d3blog/details.php?bid=304
「(略)あのクソ映画があったからね。クソ映画に出た事を後悔していると言っても過言じゃないね。」「。Fox-Cannonは俺が戦うのを知らなかったんで、俺が負けたら訴えるって脅してきたんだ」

■次回はリョートvsジャクソン?
http://playmma.matrix.jp/modules/d3blog/details.php?bid=306
ダナ・ホワイト「ここ数日でマチダと会って相談・・・(対戦相手は)ランペイジになるよ。」

■ラシャド、今後は「レスリング勝負」を宣言
http://sadironman.seesaa.net/article/151803146.html
俺はリョート・マチダに負けた後、またレスリングで勝負・・・引退するまでずっとレスリング戦法・・・ブーイングが多いから打ち合いに行くということはしたくない・・・

おさらいすると、TUF=ジ・アルティメット・ファイターという、若手格闘家が2チームに分かれ、トップ選手がそれぞれのコーチになって対抗戦をやる人気テレビシリーズがあると。
最後にコーチ同士も戦うと。
ところが今回、コーチ同士の中がシリーズ屈指のガチンコな憎しみあいになり、またランペイジが映画「特攻野郎Aチーム」に出演するなどの紆余曲折を経てようやく実現したので、さらに全米の注目を集める試合になったと。


さて、そんな中でも、海外情報を教えてくれるサイトを読んでいておやっと引っかかったのがこのくだりでした。OMASUKIFIGHTより、重要なのでちょっと長文を引用させてもらいます。

■ラシャドがランペイジを嫌いな理由のひとつは・・・

http://omasuki.blog122.fc2.com/blog-entry-827.html
ことのおこりは、ESPNの記者がジャクソンに、「ランページ、しばらくぶりの試合になりますね。休暇は時には不利益 (detriment) になりますが、同時に有利 (advantageous) にもなり得ると思います。しばらくMMAから離れていたことは、試合に有益 (benefit) だと思いますか」と聞いたことだった。

ジャクソンには風変わりでちょっと自虐的なユーモアのセンスがあって、こう切り替えした。

「なによりまず、なんであんたはそんなに抽象的な言葉を使うんだ?あんたが何を言っているのか、さっぱり解らないよ」

取材陣にとっては何ら驚くことのない答えだった。ジャクソンらしい答えだ。(訳注:たしかに detriment とか advantageous とかいうビッグワードを使わなくても、good, bad と言った言葉で表現できる内容の質問ではある)でもエバンスは愉快に思わなかった。ほどなく、ジャクソンの答え方を批判し始めた。

アンタもアホじゃないんだろ。アホのふりをするのはやめな」。エバンスは報道陣を無視してジャクソンに語りかけた。黒人だからと言って、そんな風に振る舞うもんじゃない。そう言うのは嫌いなんだ。そんな態度には辛抱ならない

わかりますか?
わたしは最初、ラシャドがどういうことに怒っているのか分からなかった。
つまり『ランペイジはわざと「無知な黒人」を演じている!』という、日本では分かりにくい複雑な怒りがあるようなんですよ。
さらには

エバンスは後日語っている。「ランページは、『黒人による黒人に対する犯罪』とか、その手のことを口にするが、それってステレオタイプを助長していると思う。笑わせようと思って言ってるんだろうし、それが彼のユーモアのセンスなんだろう。でも僕には、アンクルトムのようにしか見えない

アンクル・トム。
もともとはリベラルで進歩的な白人が奴隷解放を訴えるために書き、実際にその点では歴史的な意義を果たした作品ですが、ホンカツこと本多勝一アメリカのルポを書いた時代から、「黒人なのに、白人に従順で媚を売るやつ」という悪口に転化していたのでした。マルコムXも多用。

新訳 アンクル・トムの小屋

新訳 アンクル・トムの小屋

新・アメリカ合州国 朝日文芸文庫 ほ 1-40

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いまではその言葉を出すとピシッ!と緊張が走るようなワードにすらなっているとか。

ランペイジをあらためて考える

実は自分、もしこれが「ランペイジがラシャドをアンクルトムと呼んだ」という話ならすんなり納得し、理解したと思う。
というのは・・・これは大いにkamiproの功績なのだけれど、ランペイジの「粗にして野だが、なお知性あふれる」語り口に、今までも大いに驚いてきたからです。そしてランペイジは自分の人種という点に大いに自覚的で、私は逆に彼がUFCに行ったときに「あんなに人種問題を持ち出したらアメリカでは受け入れられないんじゃないか?」と心配したぐらい。
もっとも、受け入れに関してはランペイジのそのトークは大うけで、同様に移籍したミルコ・クロコップがインタビューをしばしば拒否して報道陣から文句が出たとき、ダナ・ホワイトが弁護の言葉として「みんなが皆、ランペイジみたいには(面白い話を)できないよ」と言ったという(笑)


ランペイジトークの面白さ、下品さ、それでも分かる頭の回転のよさ・・・プラス、常に前面に押し出す「黒人意識」、そういうことを知るにはkamiproやゴン格のインタビューに加え、放送中の「TUF」(吹き替えだが)・・・さらには何度か既にランペイジがらみで紹介したこの「ひねリンブログ」を読むといい。
格闘技ブログもどんどん増えて競争が激しいが、ひねリンブログのアーカイブのどこに、何が書いてあるかを把握しているのは当方の強みである。
http://hinerin.blogspot.com/2004/06/ppv.html

・アナ「1Rあと一分を切りました。このノゲイラvsヒーリング戦は、ランペイジ・ジャクソン選手をゲストにお送りしております。」
ランペイジSupport da black man. (この黒人を応援してくれ)
個人的にはこれが一番ウけた。いきなりなに言ってんだこの人?


・2R開始前にアナ「ランペイジ、君がノゲイラのセコンドだったらどんなアドヴァイスを与えるかい?」
ランペイジ「口を閉じろ、と言う。毛玉が入らないよーにな。」(←ん? なんで毛玉? どこの毛?)
アナ「(一瞬絶句した後、気を取り直し)この解説は、常に楽しいランペイジ・ジャクソンによって皆様にお届けされています。」
ランペイジ黒人の、な。

(略)
北米PPV本日の主役、ランデルマンの入場時に
「俺は最初にプライドにやってきたとき、こいつに嫉妬してた。俺がここのtoken black guyになりたかったからな。
token black guyというのは、白人ばっかのハリウッド映画とかでかろーじて一人だけ出演するよーな脇役の黒人のこと。ストーリーにあまりからまないとこで、典型的な黒人英語をしゃべってステレオタイプな身ぶりを見せたりする。とっとと殺されたり。


・アナ「ジャクソンがヒョードルをテイウダウン・・申し訳ない間違えた。ランデルマンが、です」(バカでー)
ランペイジいいよ。どうせ黒人はみんな同じにみえるからな
アナ「そうじゃないですよう! そうじゃないですよう!
ルッテン「わはは。日本人もよく(そのテの混同を)やるよね。」
ランペイジ「ああ、あいつらはよく俺のことを、ゲーリーグッドリッジと間違える」
ルッテン「ひゃははは」

どうだ、周りもツッコンでいいのかリアクションに困りそうなこの発言!!
おまけに良かれあしかれ「token black guy」の典型といわれても仕方ないであろう、Aチームのコングを演じたあとでこのやり取りを見るとさらに味わい深い。
(つづく)

長くなりすぎたな。いったん中断…の前にもうひとつ挿話を。

ここを再開して延長するか、新エントリをつくるか。
だいたい、まだ本題に入ってないし。

あ、最後にこういうエピソードを。
ランペイジは日本に来ては女性に声をかけまくっていたが、その時の誘い文句がきまって「コクジン、スキ?」だったんだってさ(笑)
なんなんだか。

さらに補足。今回のラシャドvsランペイジ

http://omasuki.blog122.fc2.com/blog-entry-830.html

ほとんど誰も気にしていないが、黒人同士がメインイベントを勤めた初めての大会となった。おまけにレフリーとラウンドガールまで黒人だった。UFCはしばしば、白人による白人のためのイベントと言われてきたが、その風評は吹き飛ばしそうだ。


【第二部】
夜につづきを書き始めます。
ラシャド・エヴァンスだけど、レスリングやフットボールのエリートだと聞いた。念のために調べたら「ガイドージュツ」とかいう謎の術を学んだとかいうらしくて(笑)けっこうアレでもあるんだろうけど、少なくともランペイジよりは陽のあたる場所を歩いてきたとおぼしい。


そういう選手にとってランペイジ的なふるまいは「アンクル・トム」だという。この根の深さよ。
だってランペイジは上に書いたように「おれは黒人だからな」というのを必要以上にアピールする。ブッシュは大嫌いだとも言ってたし、アングリー・アフリカンのアイコンとして振舞っているようにはたからは見えたのだ。


ところが、ランペイジのそれはたしかに、一種の「拗ね」が入っているとみなせる部分があるし、無知っぽい、バカっぽいところをわざとアピールするのがまた・・・あくまでも一種の、ある部分の「黒人文化」を形作っているところもあるのだ。

日本だと・・・ちょっと余り似ていると逆に差しさわりがあるので「大阪」で考えよう。
「わて大阪人やから、複雑なことようわかりまへんわ。結局それ、儲かるんでっか?」「東京の人はタテマエばっかりでんな。わては本音を言わせてもらいまっけど、XXXXやろ?」

みたいな。
それはたしかに、「王を叱れるのは道化のみ」という部分でひとつの批評であり、決して媚びだとは決め付けられない。
だが、正攻法で行こうという大阪人Bからは「なんで大阪人だからって『ホンネ』とか『損得』を前面に出すんだ!お前だって実際にはそうじゃないだろ?」という怒りも生まれるわけだな。

しかしこれは今度は「キャラクター」とか「ステレオタイプ」による位置取りとかなんとか、そっちの是非にまで議論が及ぶ。そうするとかんたんには議論が収斂しないかもしれないのでした。

ちょっと体力的な限界も感じたところで、ここで筆をおく。
参考に

黒い憂鬱―90年代アメリカの新しい人種関係

黒い憂鬱―90年代アメリカの新しい人種関係

という本と、

それに加えてステレオタイプの国からステレオタイプを広めに来た、ステレオタイプ王子こと

ヘタリア〈3〉Axis Powers (BIRZ EXTRA)

ヘタリア〈3〉Axis Powers (BIRZ EXTRA)

を紹介しておしまい。

人間、まとめ方を考えてから文章はかくもんですね。
というか仕事してたら書こうと思っていた構成を忘れちゃったんだ(笑)。
文章というのは一方で途中で休みを挟まず、勢いに任せて一気に書くべきでもあるな。

あ、おまけにこれも。個人的にはすごくいい本だと思うが、まだ出ているのかな。

『ちびくろサンボ』絶版を考える

『ちびくろサンボ』絶版を考える