最新号のゴン格・kamiproが、ともにかなりのスペースを割いて「武道」を特集してます。
- 出版社/メーカー: イースト・プレス
- 発売日: 2009/08/23
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Kamipro no.138―紙のプロレス この辱め、どうしてくれるの!?(トム・アテンシオ?) (エンターブレインムック)
- 出版社/メーカー: エンターブレイン(角川GP)
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ヒトラーとスターリンが正反対の方角から同じ地点に至ったように(笑)、この両誌が同じテーマを扱うというだけでアレなのですが、kamiproは小さな旧版時代の「神秘とは何か?」(もう知る人も少ないだろうが、古本屋で見たら購入の価値あり)にも大きくかかわった大槻ケンヂ氏が
「山の中ならヒクソンに勝てる」(ネイチャージモン)とか「目隠しで戦え」(龍飛雲)
などの「ずらしての最強論」という、大変重要な概念を提示した。
その直後に「うちは目突きと金的を極めて真の武道に到達した」という、活断層並みのずらし方をしている骨法が登場するというすごさです(笑)
あと、夢枕獏の「空手道ビジネスマンクラス練馬支部」などの名台詞、名エピソードの多くが大道塾の加藤清尚に由来することを獏さん本人の口から聞けてよかった(どこかでこれは既に読んでたかもしれないが)
ゴン格のほうはゴン格で、町田嘉三(LYOTOのパパイ)の空手や武道的に見た藤原敏男のすごさ、盧山初雄のローキックの神秘、を散々書いたあとで
「武道にはあってスポーツに無い、って言い切れるものなんて無いんじゃないですかね?」
と中井祐樹が盛大にちゃぶ台をスイープ、いやひっくり返してるし(笑)
ウオー(ノ-o-)ノ〃┻━┻
「アグネス仮面」の、武道論のすごさ
さて、そんな武道論の一典型として紹介したいのが、タイトル通りの「アグネス仮面」だ。「ヨリが飛ぶ」「REGIEE」などのスポーツ漫画で活躍、今はゲッサンで新撰組(沖田総司)の物語をかいています。
アグネス仮面はギャグ的なプロレス漫画でして、
「プロレスラーが自称するギミックって、はたから見れば間抜けだよね、矛盾もあるし」(※そもそもタイトルの「アグネス仮面」は、「アマゾン仮面」と間違えて付けられた、というオチ)
「アントニオ猪木ってけっこういい加減な人でなしじゃね?」
「プロレスラーもある意味会社に勤めるサラリーマンだよなあ」
というのを、すべていい意味で「誇張」しまくることで爆笑のギャグにしたものです。と同時に「受け」るプロレスラーの凄みなども描いた、なかなか類書のない作品です。
で、上に描いたようにここにはアントニオ猪木がモデルのラスボス的人物、マーベラス虎嶋がいる。
漫画の中での「アントニオ猪木」像の変遷と拡散は、それだけで深く研究すれば漫画文化史を切り取る一つの材料になるだろうと思っている。
※漫画の長島茂雄を研究した
- 作者: 夏目房之介
- 出版社/メーカー: 太田出版
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ただ、それはいつかの宿題とするとして、猪木がモデルの人物が出てくれば当然、ウイリー・ウイリアムスと大山倍達がモデルの人物も出てくるさ。魂の因果律です。
むろん彼らは、地上最強はプロレスだと名乗るやからは許せん!と挑戦してくるのですが、それに先立ち大山モデルの人物が、ウイリーモデルの人物に最強武道「天地拳」の”極意”を伝える場面がある。
この場面が、格闘漫画や小説の架空名勝負ベストテンに入ろうかという傑作なのです。拳児もホーリーランドも空手バカ一代も六三四の剣も、ここまでは到達していない。というかその先すぎる。バキにはちょっと類似の部分がありますか。
■組み手の前に、膝を突いて深々と頭を下げる師匠に、慌てて自分もそうする弟子。そこから・・・
■「宇宙、それは無限」とかなんとか言い始めた師匠。そして再度問う。
■日本を学ぶなら「空気」を読むという難題に挑戦しなければいけません。
ということで、結局一回もコンタクトしないまま、おしまい。
この後も、この大山モデル氏は、分厚いプロレス道場の看板を叩き割れるか? 人間を吹っ飛ばせるか?などで典型的な、大槻ケンヂ言うところの「ずらし」を連発します。
しかし、実際に武道はこういうずらし、ハッタリ、精神論、禅問答的神秘主義・・・いわゆる”達人は保護されているっ!”問題を抱えつつ伝統を保ってきました。その一面を、こんなに面白く表現した「アグネス仮面」、あなどれないでしょう。
これは6巻のエピソードです。
http://www.7andy.jp/books/detail/-/accd/07148621
- 作者: ヒラマツミノル
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- 発売日: 2005/08/30
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現在、作者が連載中の新撰組も、まだ沖田・土方・近藤勇が町道場時代の話で、このパターンに類似した「江戸剣術のハッタリ・自己宣伝合戦」に切り込む気配も感じられて面白いものです。