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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

秋山成勲、韓国でCM王に。両国での善悪イメージ差って、これ偶然か必然か

http://sadironman.seesaa.net/article/96838544.html

経由の中央日報の話題だが、

 総合格闘技ファイターの秋山成勲秋成勲=チュ・ソンフン)が国内CMモデル界の‘新星’を予告した。
 15日、起亜(キア)自動車側によると、秋山成勲はキム・ミョンミン、キム・ジュヒョクに続いて「ロチェ」の新しいモデルとして6カ月間の出演契約をした。 ピングレ牛乳、ハイトビールに続いて3本目のCMとなる。
 秋山は今回のCMでよりいっそう洗練された魅力を見せる。
 

リンク先でも書かれているが「もう3本目ですか。しかもビールや自動車なんてCM界の王道ですよ。韓国のCM王になる日も近い?」というのはその通り。
プラスkamiproにもこの前「魔王はアイドル?」という秋山の韓国人気の話が出ていた。歌のアルバム収録、しかもその印税は福祉施設に寄付して社会的評価、女性有名人があこがれの人として秋山の名前を出してさらに話題と。ドラマ化計画なんてのもあるんだっけ。


なんつうかね、実に笑ってしまう部分があって。

なるほど秋山のデビューの時、既に同国での格闘技ブームの萌芽はあったから、話題にはなってもおかしくないとは思うし、知名度も柔道とアジア予選でいろいろあったから知られていただろう。
ただ、まったく同じ一人の選手の評価が、同選手が出自と育ち・国籍でともに帰属意識をもつ2つの国で、プラスとマイナスでこれだけ綺麗に、方向は正反対だがエネルギーの総量がおなじぐらいの勢いでなるなんてデビュー時はだれも思いはしなかったろう。

つうかね、極端すぎなんだよ何もかも。


まず、反則が過剰だった。柔道時代から疑われている手法を再現とかね。
その被害者が、一番ファンが多く知名度も抜群の桜庭和志ってのも過剰だ。
その後の白の切り方もさらに上積みだ。


そして、復帰戦ではデニス・カーンを完全KOして世界トップ級を証明するってのもなんとも。


その次に、三崎和雄に一番注目を浴びる大晦日の舞台で鼻の骨まで折られてKO負けってのもできすぎ。
その三崎は特攻隊に共感し、「日本人は強い」が日頃の決まり文句で、熱く説教する性格だった…なんてのはいくらなんでも過剰なボーナスステージです(笑)。
おまけに後からノーコンテスト裁定になるなんて完璧。



これらすべてが片方では大喝采を浴び、片方では怒りと憤激と同情を買って、気が付けばあんな狭い玄界灘をはさんだ、隣接する二国で正反対の評価を受けている・・・なんて展開、ほんとに考えてみると冗談みたいな話だ。

釣りバカ日誌でもめぞん一刻でも、こんなに偶然が重なって事態がおおごとにならないよ




それに第一、いくらアマ柔道の実績があったって、その選手がよくも悪くも話題を呼ぶレベルの選手に育つというのは、本人の努力と谷川貞治らの眼力もあるだろうけど、それもひとつの運命だ。
秋山のような出自、国籍の複雑さがいくらあっても、そもそも実力的に勝ったり負けたり(瀧本誠)が繰り返されてたら、こんなに話題を呼ぶモンスターには変貌していなかったろう。そういう点でもすごかったとは思う。



この秋山評価について、私はかつて呉智英が言ってた言葉を思い出すのだよ。
呉智英に対しては「いつも事象の揚げ足取りばかりで、自分から価値の創造や枠組みを提示しないではないか」…という批判をされることが多いが、著作のそれぞれを読んでみる限りでは、二つそれに類するものを提示している。
ひとつは「文化の厚み」というもので、これは省略(なんどか当道場本舗では触れているので、検索してみてください)。
あとひとつが「国境と文化を超えた知識人の連帯」というものだ。
http://www.geocities.jp/cato1963/PKJlyc.html

先生は東の未開人の国に引っ越そうとなされた。
ある人が言った。「むさくるしいでしょうね」 
先生は言われた。「君子がそこに住めば、何のむさくるしいことがあろうか」

これを引用していたのかな。
彼はよく「男と女(の考え方)に差はないし、黒人と白人に差も無い。この世にたった一つある差は『賢者と愚者』だ」、てな言い方もしている。例として、インドで夫が死ぬと妻も後を追って死なねばならない風習があることを、文化の際をそのまま放置するなら異文化の人間は決して許さないで野蛮視するだけだし、その文化の人間は嬉々としてそれをまもり、外部からの干渉には反発するだけだが、だが、双方に「知識人」がいるなら、文化の差異を相対化しつつ、他の批判や中の独自性を把握することができるはずだーーーーてな論法。


そしてこれは知識人じゃなくて数寄者、オタク、趣味人…でも本来通じる。
その国の選手を無条件で応援するような枠組みは、健全にして単純なる大衆のものであって(もちろん共有しているけれど)、ディープな連中は桜庭の全盛期、彼をどの国であっても受け入れた(除モナ)し、その他もしかり。拒否する少数派も、また違うロジックで批判していたわけで。


これが「中産階級の発展によって、アジアでサブカルチャーの枠組みは大方共通していくだろう」と常々言ってて、韓国や台湾の動向を注目していた理由のひとつ。つまり、サブカルチャーの評価のワクの中では、政治や民族性の摩擦を越えておおかた共通の評価が生まれるんじゃないかと。


そういう中で、MMAの大衆人気という点で共通しながら、あっさり秋山成勲は両国の間で評価が180度かわり、またその評価がそれぞれ極端だという(笑)すごい異物になっちゃったと。
こえも人間力って奴かなあ・・・・と思いました。