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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

22日大会は良興行。山宮の願いは、伊藤の意地は、ジョシュの問いは…

一年を締めくくる興行は、衝撃の短時間決着と緊張感の続く判定決着がバランスよく並び、2時間半というコンパクトな興行になったあことも含めていい大会でした。

老雄、伊藤崇文負けても輝く

パンクラス14年の歴史の中で最短KO勝ちの記録を持つ若武者・昇侍。勝った試合はすべて1本がちだという。対する伊藤はその14年を勝ったり負けたり、泣き叫んだりして生きてきた。

この二人が対戦する以上、勢いと経験がぶつかるしかない。
そして伊藤の戦いぶりは、引退まで示唆したウマハノフ戦をも上回る不恰好さだった。
全日本キックボクシングでプロ試合をやったことも売りにしているのに、昇侍と打撃で渡えりあう場面はほとんどなく、アマレス仕込みのタックル一本。それも切られたり、倒されてもすぐに立たれたり、体を返されて下になったりで、4本に1本ぐらいの成功率しかない。
それもきれいにズバっと決める、いわゆる「ゼニの取れるタックル」ではない。
這うようにして、しがみついてポカポカ5、6発殴られて、それでようやくよっこらっしょ、と座らせるようなものだ。

また、上になってもサイドを取ったりは何度かできたが、そこからパウンドできるわけでもなく、若い昇侍の暴れるのを必死で抑える以外に何もできなかった。
逆に昇侍が上になると、ものすごい大振りの強烈パウンドを叩き込む。(昇侍のセンスもさることながら、伊藤が下からプレッシャー、脅威を与えることが何もできないのだろう)
そのあとはしのぐだけ。亀になって防ぐだけのことも多かった。



だが、それがかっこよかった。
泥臭く、みっともなく、不細工な攻め方、守り方しかできなかったが、結局最後まで諦めなかった。4回に1回しかタックルが成功しないなら、12回タックルすれば3回は倒せる、そういう勢いで闘い続けた。

アリスの「チャンピオン」の歌をそのまま総合格闘技の世界で再現したかのような。
違うのは伊藤がチャンピオンでも何でもないことだが(笑)、あとひとつ違うのは、「静かに倒れて落ちた。疲れて眠るように」とはならなかったことだ。


最後に判定を聞いたあと、伊藤は自分の足でリングを降りた。
昇侍の「全勝利KO勝ち」記録は、このIsm道場長によってストップさせられた。


あとひとつだけ、アリスの歌と違っていたか。
あの歌では主人公が控え室で「帰れるんだ、これでただの男に」とつぶやくが、伊藤は「いっぱいいっぱいです」と弱音を吐いたウマハノフ戦とは違い、四方に「もぅ一回」とアピールする人差し指を立ててから花道を去っていった。
この男の「格好悪い」試合は、2008年シャイニングツアーでも見ることができそうだ。

KEI山宮山宮恵一郎)vs川村亮、血の死闘と涙のマイクと。

山宮ブログ
http://blog.livedoor.jp/yamamiya_k16/archives/51755787.html

良く無事に帰って来れてホッとした。
過去最高の恐怖と覚悟を持って試合をした。


川村選手は本当に強くて、皆の言う通りいい人間だった。

闘いの内容は両方一歩も引かない立ち技の応酬で、普通は「それならキックを見に行くさ」とこういう闘いは好きじゃないんだけれども、実際に会場で見ると大変にスリリングだった。
山宮の戦い方を見ていた別の観戦者は「山宮は、郷野に(2002年の試合で)自分がやられたアウトボクシングをやっていますね」と話していた。一回、ダウンも奪っていたね。
山宮が川村のどこを、技術的にどう上回っていたのかは「GONKAKU立ち技向上委員会」に任せよう。つうかわたしゃ分からんよ。
ただ、川村にとっては得るものも大きかっただろうし、名勝負を見せるなあ、という評価は微塵も揺らがなかった、どころかさらに上積みされている。


http://gbring.com/sokuho/result/result2007_12/1222_pancrase.htm

 1Rにダウンを奪ったことで差をつけた山宮が判定勝ち。マイクを握った山宮は、久々の“故郷”パンクラスでの試合が出来たことで号泣。そしてライトヘビー級王者・近藤有己との対決をアピールした。すると解説席にいた近藤は立ち上がり、リングイン。二人は固く握手を交わし、「ぜひやろう」と、近藤は受けて立つ構えを見せている。

このとき、身内が負けたはずなのに近藤は満面の笑みというかさわやかな笑顔で、「やろう」と山宮と握手。また、近藤はこういうとき敬語というか丁寧語を使うというイメージがあったが、このときはタメ口というか身内への喋りのようだった。
別の方に聞いてみたら、年齢はほぼ同世代だけど、ちょっと近藤のほうが先輩なんだそうだね。


ただ、この試合が実現したら近藤も相当、やられてまうかも知れないぞ。何しろ山宮は普段は打撃専従だが、アマレスキャリアを生かしたタックルもできる。すごく見たくはあるんだけどね。


ところで、スポナビ、GBRの両格闘ニュースの巨頭がばっさりカット、華麗にスルーしているのだが(笑)、山宮は、この近藤との対戦アピールの前に
パンクラスを…つぶさないでください!!」と涙声で訴えていたんですよ。


・・・・あのですね、「今後も発展させてください」でも「もっと盛り上げてください」でも無く、「潰さないでください」って。礼、非礼じゃなくて(だってこのブログのほうが何倍も非礼だったりするもの(笑))、「イッタイ貴方ノトコロニ、ドンナ情報ガ入ッテイルンデスカ」と訊きたくなってしまうんですよ。
まあ、ここをいじってもしょうがない。とにかく各方面において、色々と頑張れ、と。

ジョシュ・バーネットのキャッチが投げた問い。すなわち、北岡の怒りが投げた問い。

こちらを驚かせた「3月の次の試合」コメントの謎も解け
(※ http://d.hatena.ne.jp/lutalivre/20071223#1198402313 参照)
試合自体は安心しながら見て、どんな技、すなわち作品を見せてくれるのかということが興味だったというもので、いい投げ技を見せてくれたのだが…最後にひと波乱あった。
佐藤光留自体は満足して、ジョシュと笑顔で握手したのだが、セコンドの北岡悟が、声は聞こえないが推測でいうと「負けたのに笑顔で握手するな!」みたいなことを言って間に入っていった。そのあと、ジョシュは北岡にも手を差し伸べ、北岡も儀礼上握手はしたのだが、何かの文句を確実に言っていた。

おそらく、これも容易に想像はつく。
「実力差があれだけあるんだから、すぐに極める事ができたはずだ、あんなにお遊びをして、客受けを狙った技ばかり狙うなんておかしい!!」
ということなんだろうなあ。
桜庭和志がアンソニー・マシアスと戦った試合がこんな感じで、まだ桜庭と戦っていなかったヴァンダレイ・シウバは「俺はああいう闘い方は嫌いだ、相手への敬意を欠く」と批判していたことがあった。


今回のキャッチは間違いなくガチンコだったし、少なくとも佐藤は全力をつくした。桜庭に対するマシアスも。

それを受けたジョシュや桜庭のああいう闘い方は、観客でジョシュファンの自分個人は大いに楽しみ、是とするところだが、格闘技メディアはどう見るか。
藁谷浩一さんや高島学さん、また雑誌でいえば各々の雑誌はどう見るのだろう。
勝負論では大きな意味を持たない試合だから、そもそも次に各誌がどれだけスペースを割くかは分からない。けど興味があるので、この話がどう書かれるか注目したい。