人気ブログ「さて次の企画は」にて紹介。
http://d.hatena.ne.jp/otokinoki/20070329/1175173575
まだアマゾンに登録されてないのでタイトルを書いておくと
「星新一 一〇〇一話をつくった人」(新潮社)です。
彼女のノンフィクションは少し読んだが、テーマが自分の興味の領域からやや外れていたこともあり、強い印象を残したとはいえなかった。ただし、既に星新一を論じた作品紹介エッセイ本、とでもいうべきものを発表している。
- 作者: 最相葉月
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2005/08/28
- メディア: 文庫
- 購入: 2人 クリック: 10回
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さすがotokinoki氏の紹介の腕は大したもので、自分は今回は即買いを決定してしまったのだが。、まず、本の内容の前にひとつ、申し上げたい。
それは「読者は虱に似ている」という山本夏彦の名言だ。
どういうことかというと、「作家本人が死ぬと、読者は離れていくものだ」という意味である。実際のところ言った本人の山本夏彦も含め、死後も多くの読者を持ち続ける人はいるし、浅羽通明は「日本の文学者の中で、世界で最後の最後まで残るのは星新一だ」とも書いている(これ、前にも書いたな)。
だが、一般論でやはり言うならば、作家というのは、生きて、発言して、新作を発表することそれ自体がプロモーションであって、去るものは日々に疎し、なのです。
だからこそ、意図的にいうと聞こえは悪いが、どこかでキャンペーンを行って、ブームを巻き起こすことは必要になってくると思います。星新一も、そろそろこいうことを仕掛けるべきであり、新潮社が「評伝・星新一」をプロデュースするのは大変いいことでしょう。
書評は本を読んでからの話となりますが、それとはやや離れた所で二つ書いておきたい。
まず、リンク先で紹介しているくだりを再引用。
面白かったのはこのエピソード
(略)・・・・・小松左京は、ふとした事がきっかけで星新一も父親の事業で苦労した経験が在る事を知った。不渡り手形の話をしていた時だった。新一が、
「小松さん、あんた、手形なんか知ってるの」
というので、知っているよと答えると、こんな話をした。
「こういうふうにするといいよ。払えって持ってくるでしょ。・・・・(略)」
これを読んでですね、私は平井和正が書いたハチャハチャSF(懐かしい表現)の短編、「星新一の内的宇宙」つーのを思い出したんですよ。
さあ自分でいうのもなんだが、ここから面白くなってくる。
このSF短編はまず「小説より面白い」と当時言われていた、SF作家が集まっての大マージャン大会を実況中継。噂話、ホラ話、薀蓄話、馬鹿話、艶話が東西南北からパイと一緒に飛び交い、大爆笑と狂気に満ちたものだった光景の一部が切り取られている。そこで、ある作家が、「内的宇宙」の話を持ち出し、「SF作家が集うこの世界は、実は倒産の危機に苦しむ、若き二代目実業家たる星シンイチ氏が、孤独な苦しみから逃れるために作った内的宇宙なんじゃないか?」と壮大なバカっぱなしを展開する。
ところが、それはどうも事実じゃないかという傍証が・・・・
という、話です。
夢オチというか、某エヴァンゲリオンの先取りという気もするが(笑)、それはさておき、現実の二代目社長・星シンジ君ならぬ星シンイチ君が、まだ世の中にはまったく浸透していなかった「SF」の道に進んだことと、そのつらい会社経営の間にどんな関係があったのだろう?
世の中で生きにくいナイーブな感受性の青年が「心の王国」に慰めを得る。それも現実からはずっとかけ離れた、空想の世界を求める・・・・というのは、あまりにステロタイプな見方だろうか。たぶんステロタイプだろうし、また、少なくとも自分はそれを批判的な意味で言っているのではないことは分かってほしい。
ただ、この地獄ともいえる、傾いた会社の二代目社長たる日々と、SFに傾いていく心の動きの相関関係。この伝記が、その部分をも解剖していることを強く願う。
こんな本(新書)をどこか出してよ
このネタも前に書いたかもしれんが・・・星新一はギャグだろうが、「原子をまず見せてくれ。見せないと信用できない」と原発見学で語ったという話もあり、ハードなSF設定、科学的知見など自分の作品には登場させていない。
なのに、星新一がわたしの知る限り、現代社会を撃つ、まさに今の問題を語っている話をもっとも多く書いているのだ。
◆「電話でのやり取りや通販、宅配便が発達し、部屋から一歩も出ずに経済活動や社会活動ができる社会の騒動」(デイトレードで数億儲けるニート・・・)
◆「言論統制も盗聴も歴史捏造もOKの秘密警察。しかし、目的は『平和を守る』こと。戦争に関する言論はすべて統制せよ」(言葉狩り、ナチ規制・・・)
◆「自分の家を国と宣言したマイ国家。訪問した客を拉致して捕虜に」(国家とは何か?シーランド公国、台湾、パレスチナ・・・)
◆「官僚たちがある”机上組織”を結成。『自分たちがミスしたら、すべてその秘密結社のせいにしよう』」(山ほどの不祥事・・・・)
◆「ある放送局で突然、入った人は誰も出て来れなくなる椿事が発生。その模様が、筋書きの無いドラマとして大受けするが・・・」(フジの28時間TVを見たとき、これを思い出したよ)
◆「世界中の監視カメラが家のテレビと連動し、どこでも居ながらにして見られるように。それを一日中見て過ごす人が・・・」(CS多チャンネル、インターネット。つうか俺(笑))
◆「出版、映像制作が技術の進歩でだれでも出来るようになり、みんながアーティストに。それはいいんだが、あまりに多量の作品があふれ出してお互いうんざり(笑)。それを批判する『批評』も、これまた増えてさらにうんざり(爆笑)」(ブログとMIXi・・・つうか俺(爆笑))
星新一のショートショートは読んでまずは楽しいのだが、これを法哲学とか倫理学とか社会学とか、そういう面から問題意識を持って読むと宝庫だよ。
「コビト」「白い服の男」「とんでもないやつ」などなどだけでも、すごく深読みというか斜め方向から読む、すなわち斜め読み(誤用)が出来る。
実は、上に挙げた浅羽通明は
- 作者: 浅羽通明
- 出版社/メーカー: 早稲田経営出版
- 発売日: 2005/06
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 12回
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彼は前にも書いたように、今後商業的な著作活動に力を入れているというし、全部書かなくてもアンソロジー的なことを任せてもいい。
「星新一で読む現代社会」みたいな本を、新書サイズでコンパクトに読みたいなあ、と思いました。
以上、ひとまず読みきり。
自分も、事件や社会問題のとき、適宜に関係あるような星新一作品を、これから紹介していきますよ。