http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20060106
は、けっこう展開できそうなテーマだったので、少しずつでもこなしていかねばと思っている。
さて、最初に少し回り道をするとしよう。今年の冬も総合格闘技をテーマにしたパロディ漫画集「漢祭り」をKit氏から送っていただいた。この雑誌については
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/searchdiary?word=%b4%c1%ba%d7%a4%ea
を参照してほしい。問い合わせはPRIDE0@hotmail.co.jpへ。
カッコイイ中量級日本人選手が多いK-1に対抗しようと知恵を絞る榊原信行DSE社長とか、「的確」な批評を放つ前田日明、だんだん商品価値の減っていくヒクソン・グレイシーなど、あれやこれやに風刺の矢をあびせているが、その中に
「BTT(のアローナ)はマナーが悪い、対戦相手へのリスペクトがない」と批判するヴァンダレイ・シウバに「おいおい、あんたたちタチの悪い挑発ずっとしてたじゃん」と突っ込むという基本的にノンフィクションの4コマがあった。
あとひとつ別の4コマでは
「これまでのPRIDEはBTT=正義、CB(シュートボクセ)=悪の巣窟という考え方だった」
「ところが桜庭がCBに修行に出ることで、CBの地位が向上・・・」
という点をネタにしている。
このへんは佐藤、村上の煽りコンビのさじ加減にもよるのだろうが、ヒカルド・アローナはたしかに今回の男祭りでも、桜庭和志戦のイメージで「非情の寝技王」という路線をキープ。ヴァンダレイ・シウバを善玉的に扱っていて、判定でも(略)だったわけですよね。
ところがアローナがいうには「8月のGPでシウバを倒したら、ブラジルでは(BTT以外のの)みんなから『ありがとう!』といわれる」
「それはシウバが対戦相手に敬意を払わず、マナーが悪いので国中から嫌われているからだ。」
「あいつがMMAの象徴だから、ブラジルでは偏見がなくならない。俺が王者になったら、常識ある社会人としてMMAのイメージを高めたい」(kamipro)。
正反対のことを言ってる。
実際のところ、どっちがよりひどい奴らなのか?そしてどういう流れによって、悪玉・善玉っぽいイメージが選手にはついていくのか?
そもそもアローナは、基本的に前々からDSEはあまりプッシュしていなかった。元リングス王者で、たやすく頂点に上るとファンの残党が「やはりリングス最強!」と言い出すからだ、というのは初期にはあったかもしれないが(笑)、今はさすがに無いだろう。
それより何より、ランペイジ談のように「あいつの試合を思い出すと、それだけで眠くなっちまう」という試合っぷりや欠場の多いドタキャンイメージがあったからな。
自分も、最初の試合は慎重な塩試合だったことは認めていて「PRIDEは強豪ぞろいで、登場直後に負けたらそのイメージ低下は大きい。最初はなんとしても勝ち続けて地場を築き、それからアグレッシブな戦いを見せたかった」と言っている。
実際、結局アローナは「でも強い」というそれだけでPRIDEの番付を浮上させ、要所要所ではちゃんと名勝負も見せて、昨年はファンの後押しでGP出場権を得たという。
それでも、彼が興行の柱になるかといえばちょいと微妙だろうな。
シウバは、やはり桜庭和志銀行の貯金をごっそり下ろしたその稼ぎもあり、思い起こせばPRIDE-13以降、長くPRIDEの顔だった。やっぱり、興行側が対日本人とかならともかく、外国人同士の戦いではシウバ=善玉、挑戦者=悪玉の構図を描くのも無理からぬところだ。
と同時に、「DSEへの忠誠」という部分ではどうであろうか。
どっちも不利な判定には不満をぶちまけ、契約更改ではタフに交渉し、それでもPRIDEを最優先させるという点では同じなのだろうが、なんといっても「LEGEND」にアントニオ・ホドリゴ・ノゲイラが現役王者のまま参戦し、当時、DSEからかなりの怒りを浴びせられたあのイメージがBTTは強い。シュートボクセはK-1とDSEが良好だったころはK-1にも参戦していたが、(K-1では勝てなかったこともあり(笑))その後はやはりPRIDEラブという感じではあるなあ。
以前もらった投稿コメントに
という身もふたもないのがあったが、これをあれやこれやとつつくととんでもないものが出てきそうなので封印する(笑)。
シュートボクセ代理人の川崎浩市氏とBTT代理人の内田統子氏の不仲は、メディアでも隠されていないほどなのだが、その詳細はあの吉田豪でさえも活字にできなかった。
川崎氏はPRIDE創設にかかわった一人でもあり、内部の発言力は上であっても自然かとは思う。
さて、「最後に、どっちが実際にバッドマナーか」を考えよう。
ヴァンダレイ・シウバは思い起こせば、もともと桜庭和志を付けねらっていたのだが、初期のころは
「桜庭はスポーツマンとしても嫌いだ」
「なぜなら、リング上のパフォーマンス(炎のコマや胴着脱がしなど)は相手への敬意を欠いているから」
と、それなりに正論ではないかというコメントを残している。
と同時に、相手(桜庭)の写真をくわえてビリビリに破くなどの定番パフォーマンスもやっているな。シュートボクセはこの前、五味隆典の写真を集団で踏んづけるというのもやっていた、
まあ、これは煽り映像を撮る側の問題でもあり、プロなんだからいいだろう。
と同時に、やはりシュートボクセは仮に人気が上がっても「善玉ではあるが凶暴」という複雑なるキャラクター設定せなあかんということだろうな。
BTTの煽り映像はそういうことはないが、アローナのコメントはけっこう強気な部分を引っ張ってくることが多い。
なんといってもBTTとシュートボクセの間で「マナー」がクローズアップされたのは、その後「仁義無き戦い・血染めの南米編」と称される抗争の幕開けになったマリオ・スペーヒーvsムリーロ・ニンジャだな。
このときの、シュートボクセのセコンドの野次は直訳すると「貴方のお母さんは、リオ在住の売春婦でございます」というようなアレで、この種の言葉は単なる悪口にはとどまらず、本当に最悪の部類の罵倒だということである。
(余談ながら、昔なにかの本で「どの国でも最高に破壊力のある悪口は、性にまつわる種類のものなのに、なぜか日本語はそれに類する言葉はない」という説を読んだことがある。審議は知らないが、ぱっと思いつく限りではなるほどだ)
悪口を主に叫んでいたのは、今は離脱したペレだが、彼はジムの当時のリーダーだから全体の責任は免れまい。
ノゲイラは、スペヒーが判定で敗れたこともさることながら、その悪口があまりにひどすぎたので涙したことは有名。
そうそう、そもそもこの前史ともいえる両派のケンカは、シウバとアローナが一触即発になったことがきっかけでもある。
その原因は、山本宜久とノゲイラが雑誌企画で対談、技術をノゲイラが教えたことにあり、シュートボクセが「ヤマモトは今度、うちのアスエリオ・シウバと戦うんだぞ!あいつがブラジルの技術で手ごわくなったら、お前らが敵に塩を送ったことになる」と今にして思えば要らぬ心配をしたことがきっかけでしたな。
和良コウイチ氏が悪いというオチですが(笑)、この両派の因縁を煽っていいビジネスにしたという点ではDSE的にはグッドジョブだったわけだ。
ところが、このホテルの一件でも両者、「挑発してきたのは向こう!」と言い張ってるんだ(笑)。
で、本題に戻ると、シュートボクセの態度はvsマリオの時はひどかった、これは事実のようだ。しかし、ヒカルド・アローナもまだ記憶に新しい昨年のGP準決勝、これでシウバ戦が終わった直後に自らの勝ちを確信したか、横たわるシウバに「どーだこの野郎!」みたいな罵声?を浴びせているのが映像では確認できる。
どうもアローナが、BTTDでは技術はともかく「人間性では青帯はやれない」と、どこかの日本人のように言われているということのようだ(笑)。
試合ぶりでは、アローナが桜庭の傷口に指を入れたのが批判を浴びたのはみなの知るところ(それはルールの不備にあり、アローナは悪くないという主張を以前このブログで書いたな)。大してシュートボクセは意図的な技術かとも疑わせるような金的攻撃の多さ、ロープつかみ、バッティングなどが指摘されることも多い。これはあからさまな反則だしなあ。