もう、ウルトラマンマックスでメトロン星人が出てから何日たったよ。
そろそろ「メトロン星人応援団」の旗も降ろさねばならないので、当初から紹介する予定だった、天下の奇書を最後に紹介させてもらう。
この「ウルトラ博物館」がそれだ。

ウルトラ博物館 1: 学年別学習雑誌で見る昭和子どもクロニク 1 (学年別学習雑誌で見る昭和子どもクロニクル)
- 作者: 円谷プロ=,円谷プロダクション,秋山哲茂
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2003/11/28
- メディア: 単行本
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この本は何かと言うと、リアルタイムで当時(70年代ごろ)の学年誌、子供雑誌に掲載されたグラビア企画、口絵記事をそのまままとめたシロモノだ。
覚えている人は覚えているし、SF・サブカルチャーの戦後史をかじった人間は「大伴昌司」という不世出の天才が数々のフォーマット・新機軸を生み出し、もって怪獣ブームのみならず、今に続く文化の一部を確実に構築した、ことは知っているかもしれない。
しかしその半面、「子供向けに分かりやすく」という意識や「どーせテレビも雑誌も、後に残るもんじゃない。おまけにガキだから論理的矛盾なんか分かりゃせん、そのまま、その場のノリで盛り上げてでっち上げろ!!」という意識も作り手に満々だったことも疑い得ない(笑)。
いわば一冊丸ごと「なんという むせきにんなわしだ!」みたいなもんである。
これはいわば、その犯行(笑)の証拠物件といえる。
さて、その中でメトロン星人も登場するのである。
円谷怪獣は、けっこう格や序列がジャイアント馬場さん時代の全日本プロレスのように、あるいはK-1出場候補のように決まっていて、ベストオブベストの連中は常に第一線で活躍し続ける。
メトロン星人も当然、その一流どころの中に入っており、この小学生企画の中でウルトラマンタロウ、初代、ウルトラセブンが怪獣墓場を訪れた際(公式参拝か私的参拝かは不明)、彼らをそこで襲い
フフフ、それにおれ(註:バルタン星人)たち、メフィラス星人やメトロン星人が、おまえたちに、ふくしゅうするときをねらっていることをわすれるな。きょうはこれまでだ、またいつか会おう
といって去っていく、宇宙人同盟の一員として登場している。なんという揃い踏みだろうか。ハッスルだってWWEだって、こんな豪華なメンバーはそろわない。
全員、親子や兄弟ぐるみで地球征服を狙ったファミリー・ビジネス一家であることも押さえておきたい所だ。メトロン星人ジュニアが、また笑ってるよ。笑顔だよ。
しかし・・・・・同時に、グラビア企画はめちゃくちゃ辛らつでもある。子供の残酷さというか、実もフタもないところをそのまま載せちゃうからな。
この宇宙人同盟は結局、音楽性の違いから?解散し、メフィラス星人などを中心に怪獣軍団が再結成されたようだ。しかし、初代会長のバードン(タロウに登場)が兄弟に敗れた。
どうでもいいが、バードンって鳥だぜ、鳥。宇宙人が鳥を大将にあおぐなよ。
大しょうのバードンがころされたため、軍団のそしきをもういちどやりなおすためだ。
まず、大しょうを決めなければいけないが、とくべつにすごいやつがいない。
そこで、とりあえず、かんぶだったメフィラス星人、ヤプール、ヒッポリト星人の3人とさんぼう長のチブル星人の4人でマッチメーク委員会かんぶ会をつくり、軍団を動かすことになった
なんか写していくうちに、どんどん頭が悪くなっている気がするが(笑)、続ける。
一応、こちらもそうそうたる大物宇宙人がそろったといってもいい「かんぶ会」は候補に、エレキング、キングジョー、ブラックキング、べムスター、ヤプール、メフィラス星人をあげる。なんでも「レッドキングがこうほになった。しかし、どうも頭がよくないから、はずされた」のだそうだ。
マジにそう書いてある。
そしてその中から、キングジョーとブラックキングがはずされる。
ブラックキング「ナックル星人がついていないと、タロウにかてそうにないので、だめになった」
キングジョー「作ったペダン星人にきいたら、作るのに3年もかかるということなので、今回ははずすことになった」
なにこの実力至上主義。ボウリングで怪我したとかいうのとは違うぞ。
かんぶ会の中からメフィラス、ヤプールの二人が陣頭指揮に立つ、と思いきや、かんぶのメフィラス星人は初代に出てきた兄貴のほう、前線に殴りこみにいくのはタロウに出てきた二代目・・・弟のほうだったのだ。分かる人はこのへんで、すでにイヤな予感が漂ってきますね。
これは実は、「タロウ」に実際に登場する再生怪獣。グラビア企画的にはこいつらが、「キッド級」、世界最高峰のリングにたつ4匹なのだが・・・それにしちゃ、記事の文章がボロクソなのだよ。どうも、タロウの安易なストーリー、旧怪獣の安っぽい扱いに当時のライターも腹に据えかね、ホンネをぶちまけたようなのだ。
今回のウルトラマンマックスでは、綺麗な造形でメトロン星人も再登場したようだが、タロウの時代は、劣化したぬいぐるみをそのまま使用したり、初代怪獣を造形した天才・高山良策の技術に及ばないなどで「二代目・再生怪獣は弱い、カコワルイ」が前提であった。
そこでライター諸氏はここぞとばかり・・・・・
メフィラス 「にいさんより、頭は悪い」
あのなあ。もう少し婉曲に言え。
エレキング 「せいのうはよくなったが、ピット星人があやつらないので、ほんとうはだめになった」
本当はダメ、って全人格否定してるよおい。
ヤプール 「せい形手術(したのか、おい!)でも顔のまがった所は直せなかった」
マイケル・ジャクソンかよ。
べムスター 「まえのべムスターは、あやつられていないため、目が生き生きとしていた」
お前は質のいいマダイを選ぼうとしている、築地魚河岸三代目か。
怪獣軍団もメフィラスを「まるでだめなやつだ。」「それにしてもエレキングは弱すぎる。ヤプールの作戦がよくなかった」とケチョンケチョン。お前はどこぞのスーパーバイザーかと。
その他、ウルトラマンAがタロウについて語ったところではウルトラ学校で、タロウはAより合計点が15点も多い750点だったんだそうだ。(Aはウルトラ体育が苦手だったとのこと)
地球は、学校で700点を超えたエリートだけが行ける場所に当時なっていたそうだ。
ふーん、最初は業務中事故を起こした人や、観測員業務員がついでに立ち寄り逗留する僻地だったんだが、いつしか場所の格があがっていったんだね。
しかしその星の原住民は、文句までつけるぞ。
読者からの投稿
「ぼくらはレオにこう期待する」では
秋田県の佐藤和夫君が「レオ、もっとトサカを使え」だって。あれ、トサカか。
宮崎県の中村美子さんは「レオは、マッハ6ですね。もっと速くとんでください。いまのままだと、地球が怪獣にこうげきされたときに間に合わない」と、さすがにお前何様だといいたくなるような提言をしている。
やる側と見る側の溝か。山田英司さんでもこの断層は埋められまい。
なんか、読み直してみてあまりにも驚いたので引用が長くなり、ついまとまりを欠くようになってしまったが、結論としては、メトロン星人をはじめとする宇宙怪獣のナゾは、二重三重に底が深い・・・ウフフッ、という点と、一見華やかに見える怪獣の世界も、舞台裏では十人十色の人生模様があるということ。
そういう、梶原一騎的な世界が垣間見えたということである。
あと、梶原一騎的といえば、当時は相手がガキだと思って、いかに適当な説明、理屈付けが多かったかってことだな(笑)
しかし、同時に架空世界の中で「神学」ともいえる、精密な、表面の物語以外のストーリー、世界観をつくる楽しみと可能性をこのグラビアのなかで会得した人もいるだろう。
それが、80年代から21世紀にかけて、日本のSF、漫画、ファンタジーに、大きく反映されていくには、あとわずかばかりの時間が必要だった。
(了)
【補遺】おお、偶然だ偶然にも、http://mandanatsusin.cocolog-nifty.com/blog/2005/12/post_68dd.htmlにおいて、「大伴昌司のグラビアと少年マガジンの時代」について、最近出版された本の内容を取り上げて語っている。
著者は、内田勝=大伴昌司ラインによる少年マガジンのグラビア路線を批判していますが、少年マガジンのグラビアを批判する声は初めて聞きました。大伴昌司による少年マガジンのグラビアは、これまで賞賛されはしても(いろいろと復刻版も出版されてます)、批判されたことはない。
(略)マガジンのほうが売れてはいたが、これはグラビア重視による弊害である。さらにグラビアの内容がハイレベルになりすぎ・・・・・・・