サナギさん [著]施川ユウキ
[掲載]2005年07月24日
[評者]南信長
子供の頃、学校から家まで一つの石を蹴(け)り続けることを自分に課したり、車道と歩道を分ける白線の上を「ここから落ちたら死ぬ」という設定で歩いたり、なんて経験は誰にもあるだろう。あるいは、もしもドラフトで指名されたときのために記者会見のセリフを考えたり(てのは私だけ?)。そんな子供時代の役に立たない妄想を、そのままマンガにしたのが本作だ。中学生のサナギさんと親友のフユちゃんは、いつもヘンなことを想像しては、怖くなったり、感動したり、ビミョーな気分になったりする。たとえば、「パンダに足りないモノ」を考えて「グレーゾーン」と言うフユちゃんに「足りない! けどいらない!」とツッコむサナギさん。将来何になりたいかという話から「絶対なりたくないモノ」の話になり「餌食」と答えるフユちゃん。そんな2人の脱力系漫才みたいなやりとりには思わず頬(ほお)がゆるむ。
が、こうしたネタを実際に考えているのは、子供ではなく大人の作者であり、純真ほのぼのギャグのように見えて、実は結構シュールだったりブラックだったりするから侮れない・・・
さてさて「あるある系」の笑いも「シュールな笑い」も、最近のお笑い界の中ではかなり一般化している。「クロ高」のように、お笑い界のエッセンスをギャグ漫画に導入したものだろうか。
子供の自分ルールや妄想設定の面白さ(けったいさ)は、水道橋博士が「この漫画上の経験は、ほとんどすべてしている!」と驚愕した「中学生日記」
- 作者: Q.B.B.
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が有名だが、
「よつばと!」(本格的な感想を書くといって、まだ書いてないな・・・)なんかはどうであろうか。あの主人公も、相当に非論理的な発言・行動をするがあれは「子供のリアルさ」っつえば言える。
「究極超人あ〜る」はさすがに大嘘だろうと思いきや、「遅刻しそうなので二階の窓から入った」とか「全国どこでも、迷わないために埼玉県の地図を持ち歩く」というのはある人物の実話だというから恐ろしい。
経験や実際にあったことと、脳内で考えた奇想のエピソードが渾然一体となるのは、逆に才能ではあるが、さてサナギさんはどうでしょうか。実際に読んで、調べてみたいと思います。
- 作者: 施川ユウキ
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