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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています 

辞書作りを描く映画「舟を編む」を見た/この機に便乗し元祖辞書作りもの「愛斜堂」(岡本健太郎−山賊ダイアリーの人)復刊を

舟を編む」見てきました

本屋大賞を受賞し、
辞書作りを描く作品…、
という以上の予備知識は無しでの観賞です。つまり原作は未読のまま。

舟を編む

舟を編む

それでも見に行ったのは、自分は「記録や文化を後世に残す」ことをテーマにした作品が大好きだからです。
以前、「シュトヘル」についてかいたとき

自分は、文字だけでなく「知識、歴史、思いを記録し、伝えていく」 こと自体をひとつのジャンルとして好んでいる。
仮に「文化伝達もの」とジャンルを仮称しておく
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20120425/p6

と定義したっけ。
この名場面は、なんども紹介したな。

シュトヘル1 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)

シュトヘル1 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)

ただまあ、戦争だ内戦だの下で、記録を文字に残そうということような大きな危機があるではなく、現代日本では採算がとれないといって企画が中止の危機になるとか、編纂の中心人物、監修者が病気になるなどの危機だ。もちろん別に伝統・文化の危機は戦争や内戦に限られるわけではなく、そういう問題を描く意味も大きい。


と同時に思ったのは、「いろいろな仕事があれば、いろいろな人がその所を得る」ということだ。主人公はいろんな意味で、普通の仕事は向いていないが、こと「辞書作り」に関してはその性格も個性も学んだこともすべてプラスに働く。ただ作品を見ていて、現在2013年では「滅びの歌」も感じさせられたことも事実だ。十数年前が舞台で「PHS?うわーめずらしい」「こういう言葉も今度辞書に載せたいね」「この辞書が完成するころには、電子辞書が主流なのかもしれないなあ」というようなやりとりがあるぐらいだから「ウィキペディア」という言葉は作品には出てこなかった。
辞書が駆逐されることは、もちろん当分はないだろうけど・・・それでも採算が危ぶまれる程度にはその場所が狭くなっている、ような気がする。
浅羽通明が「昭和三十年代」主義の中で書いたことのうろおぼえだけど「昭和三十年代にひとと人のつながりが今より濃密だったとしたら、それは『人手』が今以上に必要だったからだ。いざというときはやはり人がいないと、生産・仕事に差し支える。だから親戚同士の付き合いも、職場の仲間との付き合いも必然的に濃密になった」と。

辞書の用例カードに、「用例採録」した新しい言葉をひとつひとつ書いていくのに向いている人は、辞書があるからこそその場を得られる。ウィキペディア時代に、そんな場は広まるだろうか・・・
ただ、ラッダイト運動の時代から「この機械でXXの仕事が無くなる」といわれながら、トータルで仕事は数も種類も増えてきている、ような気がする。あまり心配は無いのかもしれない。

あ、そうだ。この作品の後半で、用例を町で探していた関係者が「BL?」「ボーイズ・ラブのことですよ」というやりとりをしていたのだが、2013年現在、BLを採用した辞書はあるのでしょうか(笑)。

まったくどうでもいいが、監修者役をずっと、「うーん名前出てこないけど、見覚えあるなあ。俺が俳優の顔に見覚えがあるとしたら相当な有名俳優のはずだが・・・」とか思いながら見ていた。
最後のテロップ見たら
「お奉行様」でした。


それより先に「辞書づくり」でドラマをつむいだ岡村健太郎「愛斜堂」がある!これに便乗して復刊せよ!!

愛斜堂 1 (ヤングマガジンコミックス)

愛斜堂 1 (ヤングマガジンコミックス)

要らぬ知識と屁のような理屈のワンダーランド!!!
今までにない新しい辞書を作るため、愛斜堂出版辞典部の5人は今日も編集会議に余念がありません!!

2005年に1巻が発売された。(2巻は・・)「舟を編む」より何年も前に、辞書を作るという得意で面白いシチュエーションに着目して漫画を描いた岡本健太郎、さすが山賊ダイアリーの著者は前から違っていた。
何が違うかというと、
主にデッサンが違う(笑)

これは・・・だから「山賊ダイアリー」って、絵の技術はすごく上がってるんですよ、あれ(笑)。


もっとも、辞書作りの会議=言葉について議論する場、というシチュエーションを利用し、あれやこれや言葉から変な想像やへんな定義を膨らませる・・・という点では「伝染るんです。」などの吉田戦車作品や「サナギさん」などの施川ユウキ作品、相原コージ「コージ苑」のような、同じテイストのショートギャグ作品は多い。

コージ苑 (Big spirits books)

コージ苑 (Big spirits books)

サナギさん 1 (少年チャンピオン・コミックス)

サナギさん 1 (少年チャンピオン・コミックス)

日本語を使う日々

日本語を使う日々

ただ、それにも負けないような破壊的でシニカル、毒のあるギャグ・・・を、岡本氏はここで見せていた、ということは確認しておきたい。これは以前も描いたけど、「山賊ダイアリー」は知り合いも多数登場する実体験エッセイ漫画で、あと銃を扱うことを描いている点ではお上の目もたぶんきびしい。だから「ほのぼの」面を強調して描いているのが同作だけど、実は岡本氏はこういう破壊的なギャグも書ける人なのだ。


だ、もので・・・山賊ダイアリーマンガ大賞にエントリーされたりしてる今!!この漫画のパクリ小説(どこがだ)である「舟を編む」が映画化された今!!まさにこの「愛斜堂」は復刊されていいんじゃないか、と思います。
もちろん責任はとれない(笑)。
ただリスクやコストでいうなら、こういうときこそ電子書籍か、Jコミックか・・・

まあいまや、「山賊ダイアリー」路線をうまく進んでいけば文化人っぽいポスト(ネクス矢口高雄)の地位もあるから、逆にこれは”封印作品”かな(笑)

「山賊」3巻発売ちう。

山賊ダイアリー(3) (イブニングKC)

山賊ダイアリー(3) (イブニングKC)

空気銃で鳥を仕留め、山を見回り、罠を仕掛ける。獲れた鹿を捌いて食い、余った肉で燻製作り、付け合せは河原で採れたクレソン。とはいえ、時には暗い山の中で数時間も過ごすハメに……狩猟は自然の恐怖と隣り合わせでもある。近代的なマンションに住みながら、ちょっと山まで狩りに行ける、猟師・岡本の生活をあなたも味わってみませんか? おまけの1話「天然スッポン」の回も収録。