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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

いまさら紙プロ79号の感想

今回の「紙のプロレス」、巻頭の「高田総統降臨」はとてもツマらなかった。
高田が元の文章を書いたり、基となるようなインタビューをしているとはとても思えないので、責めを負うのは構成作家だかライターだか編集部でありましょうが。
例えば「ハッスルハウス2」の高田−小川のやり取りはそれなりに面白かったのだから、やはり「元UWFの彼があのカッコをして話す」という付加価値で見せている部分もあるのだろう。
あのストーリーを100%なぞっていくだけの、波乱もハプニングもない文章に興味がもてるわけがない。


馬場にヒクソン戦を批判されて切れ、「彼ってなに? 人類?」とまで言い放った「高田延彦」インタビュー・・・。彼の破天荒な面白さ、素のダークさを見せ付けたあの記事の水準を、期待するのもおろかだ。
今後仮に総統ネタを続けるにしても、巻頭特集には耐えられる企画じゃないと思うね。


で、そもそも紙プロは母体のDSEと同じく「ハッスル」記事と「PRIDE」記事の間にクオリティの差が大きい。これは、なぜかということを書こうと思ったが、昔の自分の文章

グリフォン 投稿日:3/27-02:37 No.1274

>『紙プロRADICAL.NO72』は3月26日(金)発売!!
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
(略)
それと、WWEにかこつけて「ハッスル」はストーリーラインに乗った
報道を展開すべきだ、みたいな主張をしている。
おれは明確に反対である。


たとえば、今回コールマンやケビン、ボビッシュが集まって座談会を
やっているが、ハッスルのストーリーに沿った「モンスターの悪巧み」
を語ってもらうより、前の王者がGPに出られなさそうなことを受けて
の葛藤や、前回のPRIDEフライ戦の「しょっぱさ」に関する思い、
ケビンとコールマンの師弟関係のエピソード、
ビッシュやシルバのPRIDE出陣の感想・・・のほうがコンテンツ
としてはよっぽど面白いし読者ニーズに沿っているのは、プロの編集部
のほうが判るだろう。かりにハッスル関係で記事を作るにしても、
例えばたぶんGPに選考漏れ、ということを受けたコールマンの内面
【註:当時はコールマン出場せず、と言われておりました】
を隠さずに公開すればもっと楽しくなる、というのが「カミングアウト」
の効用なんじゃないかと。
そして、今までの紙プロはそういう形で雑誌をつくってたじゃん。
自団体だけはオモテのストーリーのみで話を進めるなんて、お天道さまが
ゆるしません。


自分で言うのもなんだがこれに尽きる。
DSEや紙プロは「ハッスルは(プロレスの虚構性を)見てはっきりわかるような形にカミング・アウトしている」と言っているけど、それはファンタジーという別の厚化粧をして、素での勝負を避けているようにしか見えないわけである。


上のは72号の感想だけど、その前に71号では堀江ガンツ氏が

「シンプルに試合内容で驚かせてくれれば、イチイチ裏側を出す必要はないと思うなあ。裏の面白さってあくまでボーナストラック的なものでしょ? DVCについてくるメイキングみたいに。プロレスの面白いエッセンスをつぎ込んで面白いものができれば、裏なんか見せなくても全然いいと思うよ」

と予防線を張っている。


しかし、紙プロって全編ボーナストラックみたいなもんだし(笑)。いや、褒めている。
要は裏の人間ドラマ−−。古い伝説を壊した真相の中に、新しい伝説を見い出すということをやってきたのが紙プロだ。「大山倍達とは何か?」ではプロレスラーと戦ったことはないという大山証言を得た際、前田に「それは夢のために公表するな」といわれても受けなかったよね。

それは格闘技の話というならば同71号、ビッグ・ボスマンインタビュー

ボスマン おい、このマガジンはトリックを明かしても平気か?


−−このマガジンはOKです!それを聞きに来ましたから(笑)


ボスマン ハハハハ! OK! この試合の2〜3ケ月前に・・・

しかし、こんな話が載っているからといって、WWEの凄みがなくなるわけではない。
もともとネット界にカミング・アウトの激流が流れるきっかけとなったのが「ビヨンド・ザ・マット」であったわけで、『面白いものができれば、裏なんか見せなくても全然いい』というのは、このレベルのものをこしらえてからじゃないかな?

少なくとも紙プロ読者の気質や性質、そして何より同誌が積み上げてきた歴史を考えれば、ハッスルハウス1のバルコニーに登場した「恐れ知らずの男」がハッスル4に出場しなかった経緯に関しては、「総統のビターンを受けなかったから」でお茶を濁す(形を変えた大本営発表にほかならない。新日がやってたら、当然ツッコミ入りまくりの筈)より、小生程度の部外者にも漏れ伝わってくるようなリアルな裏の行き詰る駆け引き、熱く重い人間ドラマを描写したほうがよかったと思うよ。
少なくとも編集長は、知らないはずもないし(笑)。