鳥山明の追悼、漫画史的な位置づけを語れる人は、山ほどいると思う。
そういうものを、基本的には「読む」側になって、あの巨人を追悼したいと思う。
だから、そういう論になる以前の、ごく素朴な個人的好みを描くね。
自分は超熱心な読者ではないけど、雑誌連載におけるドラゴンボールをおそらく完走したひとりだ。その自分が「ドラゴンボールで一番好きなところは?」と聞かれたら、本当にクリアに、すぐに答えられる。
この場面、このバトルが、大好きなのだ。六巻における忍者ムラサキとの対決。(ムラサキはレッドリボン軍の一員。名前が色だしね)
忍者ものでは、じつのところ「おなじみ」の見せ場である、畳をばーんと跳ね上げて盾代わりにする、というテクニック。ハットリくんも使ってた。
#畳の日 #忍者ハットリくん
— hide (@hide61339966) September 24, 2023
『忍者ハットリくん』🥷
忍法畳返し🥳 pic.twitter.com/cFeroMXZo1
実のところ、そのお約束を大前提にしたパロディなのだ。
彼から奪った手裏剣を悟空が投げても、ムラサキはその「畳み返し」で手裏剣を防いで調子に乗る。どんどんやってく。
そして……
畳の数が足りずに、頭に手裏剣ぐっさり。「やはり四畳半では…六畳一間にしておけばよかった」
手裏剣が刺さっても普通に生きてるギャグも含めて、完璧すぎるでしょ。これ、多分単行本で修正かかってて、セリフの「次では」は雑誌では「来週号では思い知らせてやるからな」という楽屋オチだったと記憶している。
この巻、6巻だけ持ってるんだから、間違いなくこの部分が一番自分は好きなのだ。
ただし、一般的にはこの路線は非常にウケず、打ち切り危機ですらあった、ということだ。
◆ドラゴンボールの「打ち切り危機」
Q ドラゴンボールはずっと順調だったんですか?
A いや、それが最初は良かったんだけど、順調じゃなかった。Dr.スランプの作家なので最初は色ページが付いていた。ところがそれがなくなってくると、じりじりと人気が落ちてくるわけです。このままじゃまずいなと。読者アンケートで10位くらいまで落ちて、このままだと連載打ち切りだと。
彼と話をして、「主人公がやっぱりぱっとしない」「生きていないね」と。で「(主人公の)孫悟空ってどういうキャラクターなの?何をしたい奴なの?作品のテーマって何なの?」と徹底的にディスカッションした。ひと言でいうと「悟空は『強くなりたい』というキャラクタ―…(後略)
鳥嶋氏:
…実は『Dr.スランプ』の末期に鳥山さんが苦しまぎれに運動会で話数を稼いだら、それが大好評で『北斗の拳』を抜いて1位になったという事件があって、僕も「日本人は甲子園みたいなトーナメントが、やっぱり好きなんだな」とは思ってたのよ。
――でも、その鳥山さんの判断は大当たりで、以降の『ドラゴンボール』はトーナメントに引っ張られる形で看板作品に育っていきましたよね。
佐藤氏:
その後、他のマンガもどんどんトーナメントを狙うようになっていったけど、鳥嶋さんはどう見ていたの?
鳥嶋氏:
やるのは勝手だけど、二番煎じには新しさがないよね。
m-dojo.hatenadiary.com
そうなんだろうな。だいたい、上の話は、いくらニンジャ大好きの外国人だってついてけないだろうし(笑)。「タタミ」も四畳半と六畳一間のギャグも……。いくらなんでもハイコンテクストすぎるだろ。
でも、自分にとっての鳥山明って、こういうものだったんだよな。
あらためて、その自分にとっての鳥山明も、世界の人が愛したトリヤマ・アキラも偲びたい。
ありがとうございました