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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

【建国記念日恒例】平田篤胤の狂信的国学を、常識・穏健の立場からツッコミ倒した「片山松斎」という人がいた(「お言葉ですが…」別館4より)

最初にちょっと、小粋なツイートを紹介。日本SUGOI


さて、
元は2017年の記事だったかな?この日に記事を「再放送」します。


建国記念日特集。
建国記念日がこの日になったのは、神武天皇がうんたらかたらだからですが(よく覚えてない)、そういう日本神話の復権に一枚かんだ人々が、江戸期のいわゆる国学者、あるいは神道家の人たちでした。
で、
賀茂真淵とか
本居宣長とか
平田篤胤とかは

教科書にも載ってますし、そもそもMS−IMEで一発変換できる、いわゆる歴史上の重要人物です。
とくに最後の平田篤胤は、水木しげるサンも興味をもって生涯を漫画化するほど、個性的な人物でした。たいそう熱心な勉強家でもありました。フハッ。


ただ・・・・・・・・・水木しげるが扱っているということは、実はかなりその言動・主張がアレであった、ともいえるのだ(笑)

片山松斎を紹介するためには、まず大前提として
平田篤胤のアレな感じを紹介しなきゃいけず、いまこの文章の元ネタにしている高島俊男氏は、それをやっているのだけど、そこまで引用するとおいらがしんどい。

この原典が岩波文庫になっていることを紹介し、あとは片山松斎の言葉を紹介しよう。


まず習作的にtwitterで以前書いた、ごく短文を再録することにする。

https://twitter.com/gryphonjapan/status/558049282256011266
 @matu2syun @ITAL_ 平田篤胤のせいで古事記で何の活躍もしない天之御中主神が急速に偉くなってしまった。この説をそのまま「日本神話」として説明しちゃう本もある


gryphonjapan ‏@gryphonjapan 2015年1月22日

一種の「ヒラタ教」なんですよね。宗教は宗教で、それを広めたのはみごとなもんですけど 

いつか書きたいけど「片山松斎」という同時代人が平田篤胤をたしなめた文が「神話は神話として扱いなさい。証明しようとするから矛盾が出る」「日本と外国に、上とか下とかないよ」という理性的なものなのだが、そんな人は全く無名、平田は歴史を動かした… 


【参考】現在(2015年1月)、”片山松斎”(髭をつけての検索)でのグーグル検索ヒット数は約 374 件 。
https://www.google.co.jp/#q=%E7%89%87%E5%B1%B1%E6%9D%BE%E6%96%8E
(※2017年1月現在、ヒット数は約 209 件に減ってた!)
 ※2022年2月の検索結果は約 715 件

自分が知ったのは高島俊男お言葉ですが…別巻4」収録「平田篤胤と片山松斎」





なかなか片山松斎のことを書けないのは、「片山の平田へのツッコミを銀魂風に翻訳したい」という不要なハードルを考えているから(笑)

あのそれ キリスト教だよね
どう考えても聖書のパクリだよね
おもいきり子供だましの妄想なんだけど

みたいな…



全く無名ながら、江戸時代の良識・常識の最高水準を示す「片山松斎」についてのツイートが多数RTされた。嬉しいので、元ネタの史料(高島俊男お言葉ですが…別館4」)を紹介しておきますね。ただ字数制限の関係で画像にて。適宜補足します。


片山松斎の平田篤胤批判(1)
「世界に本末を分かちて我国を以って万国の本国と褒め、外国を末国と貶すが如きは道理に於いて当ることなし。異邦人是を聞かば嘲笑軽賎せんこと疑いなし…(略、要は「地球は丸いのだから」)国土に上下本末いささかも有る事なし。」


片山松斎の平田篤胤批判(2)
「日本の天皇を万国の大君と称する事甚だ以って不通の論なり。…(略)…万国の中、何れの国にても日本の冊封を受ける国はなし…日本は独立の国にして山城の天皇は日本国の天子也。万国の天子に非ず。支那には支那の天子あり。西洋諸国各々其国の天子あり。」


片山松斎の平田篤胤批判(3)
「(古事記の)神代の事は強いて【XX(当方この字読めず)】する事無く唯其の儘置いて可なるべし。・・・…神代巻は夢幻也。うつつの事を以って談ずる事なかれ。巫祝の徒古事記神代巻の蹄(わな)にかかり、遁るる事能ず、憐れむべし。」



片山松斎の平田篤胤批判(4)
「無理無体に日本を褒称し、日本を漢土と同じ様に開闢(かいびゃく)も久しと偽り…空蒙虚冥を構て云い紛らす…(歴史の古さは自慢でも欠点でもない)…開闢の前後を争ひ日本は万国の本国などと誇耀するが如きは皆小智小見のなすところにして、大人のいふべき事に非ず」


実に正論で常識的。…で、そのせいでインパクトが無かったのではないか(笑)…と、高島氏がさらに元ネタとした研究者(中野三敏氏)も語っている。


「歴史のダイナミズムは却って篤胤の強引・片頗な解釈を、時代の牽引車として位置づける動きを示した」
…それが、歴史や宗教なのでしょうかね…(了)

平田篤胤の狂信・トンデモを科学的常識的にツッコミまくった「片山松斎」(高島俊男の本から)

少し、銀魂的ツッコミに翻訳してみる



西洋の窮理を断ずるに随て古事記神代巻は弥つまらぬものと成て守備善ふする事能力はず。西説を以て彼書を和合するときは木に竹接ぎたるごとくして一向に折り合わず。(略)所謂贔屓の引き倒しにして、神代は神代にさし置、西学は西学にして少しも附会する事なく正路に是を修学せば国家の益と成りて実の国者たるべし。


ちょっと篤さん(※平田篤胤)、アンタ、
なにさらっと西洋の天文学古事記の描写をまぜてんですか!まぜるな危険どころじゃないよ!
木に竹ついでるから、継ぎ目が初心者の造ったプラモデルよりバレバレなんですけど!
普通に西洋の学問は学問で、その古事記をちょっとこっちにおいといて学べばいーでしょーがァァァ!
それが国のためにもなるし、アンタも真の愛国者になるんじゃないですかァァァ?
(声:阪口大助

神代といふは日本書紀発端に術るがごとく太古の別名也。太古の人外国を経営する事はさて置き、自国を経営する事能はず。野に処り穴に住て、衣服もなく火食もなし。今の奥蝦夷の地、並びに当方亜墨利加の辺地など、神代といふべし。汝等神代といえへば滅多無性に有難がれ共、我は然らず。神代は一向羨むべきものにあらず。居家田畠もなく、茫々たる広野のみにて…禽獣に異なる事なし。実につまらぬ世の中也。仏者の仏在世を褒め神道者の神代を党と部は同床各夢の盲味、大笑すべし。


あのスイマセン
神代とかそういうのいいんで

そういうの、今でいえば(ピー)や(ピー)みたいなライフなんで
ぼくら都会っこなんで、ユニクロもガストもジャンプもないとか
マジありえないんで

そういう何にもない何にもないまったく何にもないなのは、ギャートルズムッシュかまやつさんにおまかせしますんで
(声・杉田智和

・・・・・・・・・・・やっぱ日本ツッコミ界の頂点に立つ「銀魂」、マネするのもむつかしいな(笑)


この無名人が、高島俊男氏に紹介されるまで

本人が詳しく書いている。

岩波書店のPR雑誌「図書」2010年5号、中野三敏先生の連載「和本教室」第24回で紹介された。
・片山松斎の平田篤胤批判書「国学正義編」は、現在その連載をかいた中野氏の蔵書と、もう一冊しか現存してない
・高島氏が興味を覚え、中野氏がこの書について論文を書いた「国際高等研究所報告書0701(中川久定編、2007年)」を読みたいと思ったのだが見つからず、やむを得ず中野氏に直接論文の読み方を問い合わせた
・そしたら中野氏が、資料だけでなくもとの原文コピーも送ってくれた。
・論文には、片山だけでなく同じように常識的・穏健的な学識と判断によって平田神学を批判した奥州二本松の服部大方という侍も紹介されていた


のだという。
専門の碩学・中野氏の論文を、専門家でもあるが現在はコラムニストとして一般の啓蒙にかかわる知識人がかみ砕いて教えてくれる。

それによって、現在著作がたった二部しか残っていない、ひとりの隠れた知識人が
「歴史法廷の再審」を受けることができ、平田篤胤の虚妄の学へのすぐれた批判が記録に残った。
ついでにブロガーが便乗で記事を一本書いた。

これも、歴史のダイナミズムかと思います。


平田篤胤についてもっと知りたいひとは

ウィキペディアや上記水木しげる漫画もあるんだけど、
このかた(ハコ氏)が、よく平田についてツイートしていて、面白いです

https://twitter.com/hakoiribox


https://kakuyomu.jp/users/hakoiribox

このひとの篤胤ツイート、今思えば折に触れてまとめてればよかったんだけど、
ごくわずかに、以下のまとめなどに採録させてもらってた

日本の「歴史の長さ」の議論から、神話や歴史の性質について - Togetterまとめ https://togetter.com/li/1032120


自分も項目を追加したウィキペディア「片山松斎」
ja.wikipedia.org

この小説に登場したんだって

学問好きのちせ、男装の浅茅、阿蘭陀人と遊女の間に生まれたアフネス、お家騒動から逃れた喜火姫、武術に優れた野風――少女たちは徳川12代将軍・家慶が治める御世に偶然出逢った。やがて五人は、摩訶不思議な計画で世界統一を目論む存在と対峙することに!!