本日17日が「ハイパーインフレーション」の全話無料最終日となる。
\ 🔥2月17日終了🔥 /
— 少年ジャンプ+ (@shonenjump_plus) February 16, 2023
『#ハイパーインフレーション』が
今だけ✨全話無料✨で読める‼‼
ガブール人の少年・ルークは
大切な人を守るため「カネで戦う」ことを決意する…!!
この機会に一気読みしよう👍https://t.co/rHqer083kE
時間がないので、語りたかったことをいくつかに分けて投稿します。
まず作品自体の全体的な感想。
この作品が緻密な頭脳戦を描いた傑作であることは疑いないと思います。
90年代からのジャンプだけに限定した系列で言えば「(第2部以降の)ジョジョの奇妙な冒険」「幽遊白書」「ハンター×ハンター」「 DEATH NOTE」 などで練り上げられた駆け引きや戦略の対決……ジャンプの系譜から諸事情で離れてしまったが(笑)「喧嘩商売/喧嘩稼業」もね。 そういうエッセンスを吸収して、本人オリジナルのテイストも加えた知的なエンターテイメントだと思います。
ただその一方で… 2016年に新日本プロレスで行われ、その評価をめぐって世界的な論争になったリコシェ対オスプレイ思い出したのも事実
この違和感を、プロレス評論では結構第一人者でもあるジョシュバーネットの言葉を借りて説明してみよう。
「まず、2人とも驚くほどアスレティックで、高いスキルを持っていて、その技はファンタスティックだった。でも…僕個人の意見としては、ちょっと振り付けをやりすぎだね。そのせいで動きの全てが最初から決められているってことが丸わかりになってしまっていた。もはやレスリングとは言えないくらいの度合いで振り付けをやっているから、これならダンスやアクロバットを見ているほうがいいとも思うんだ。」
―オールドスクールなプロレス観からすると、あり得ないと。
「うーん、別に彼らの動き自体に文句を言いたいわけじゃないんだよ。レスラーならどんな技をやったってかまわないし。ただそれを自然に見せることが大切なんだ。スタントショーじゃないんだから。僕はそういうのを見たいときは別にプロレスじゃなく、シルク・ド・ソレイユとか、すべてがあらかじめ台本通りに進むものを観に行くよ。僕はプロレスでは、2人のアスリートが必死で戦うところを見たいんだ。イノキサンが大切にするのは、ものごとを大げさに誇張し過ぎて、バカバカしくしたりしないことなんだよ。リアルな感情、リアルな激しさを、目でストーリーを語って表現するんだ。気持ちやものごとを、一見しても明らかではないように、でも集中してみていればよくわかるような形で魅せるんだ。
(略)そのあたりが過剰すぎるから、2人は振り付けにおける次の展開にすすむための正しいリズムを守り、お互い正しい場所にいようとしていることが丸わかりになってしまったよ
なんか紹介しすぎて訳わかんなくなっちゃったけど……ハイパーインフレーションと上のプロレス話を繋げると
要はリコシェ対オスプレイが、両方の空中殺法があまりに綺麗で高度すぎ、絶妙のタイミングで技が決まりすぎるため、「なんか不自然なんだよなぁ」という白けを、見ている者に対して与える恐れがあるということ 。
それと同様に漫画「ハイパーインフレーション」においては主人公ルークと敵役のレジェットの、裏の読み合い、駆け引き、騙し合いがあまりに高度すぎるため、それが不自然でリアリティの欠落したものに見えるんですよね。
まあ、もっといい比喩があるのは知っている。推理小説における「密室のための密室」という批判だ。ディクスンカーらが進めた密室トリックは、実に緻密精密になった一方、あまりに複雑高度になりすぎて「本当にこんなトリックを犯罪する人間がやろうと思うかよ」「理屈の上でやれるけどオリンピック選手並みの運動能力必要だろ!」などなどの華麗なツッコミを生み、それが金田一少年や名探偵コナンで犯人役を主人公にして、笑えるパロディ漫画になるぐらいまで至りました。
comic-days.com
ただ!「それがどうした、そういうものだと思って読め。そこら辺で無理やりリアリティを盛り込んだ暗くてじめじめして、トリックがしょぼい社会派推理小説を読みたいのか?」と開き直って生まれた新本格推理が、これまた面白いのも事実なのです。
さっき例に挙げたリコシェvsオスプレイ だって「変な雑音はよせ、間違いなく名勝負だろ」と言われれば、うーーーーん確かにと腕組せざるを得ません。
まあそんな葛藤を呼び起こす時点で作品としては大成功なのかもしれませんね。
実はこの作品紹介で書きたい本題は別にあるんだけど、この部分だけ切り離して記事にできたらちょうど良かったかもしれない(了、だけど作品論は「つづく」)
追記と補足 上の話にセルフツッコミする「バカな強盗団は、頭のいいライバルよりよっぽど手ごわかった!」エピソード
この話まで書きたかったんだけど、時間が無かったんで後から追記。
上のようなことを、作り手側も認識はしているようで、だから作中にこういうエピソードを敢えて挟んでいる。
少し前に、ブクマで書いてたっけ。
この作品、途中でバカな盗賊が登場し「頭のいい奴なら自分の仕掛けに気付いて、そこから駆け引きで罠に落とせるのに、馬鹿だから気づかない!」と主人公が凄く手を焼くシーンがあって、「それな」と印象に残ってる。
https://b.hatena.ne.jp/entry/4731807807738801124/comment/gryphon
これは一応はシリアス系漫画だからこのへんがギリギリだろうけど、ギャグマンガだと、話を成立させるために目をつぶってる設定上の『大ウソ』を、あえてサラッと突っ込ませて軽いギャグにすることで終わらせる、という手法はありますよね。
異世界もの、タイムスリップものに共通するこの話を、「GS美神」では…
あと、こち亀51巻の「ハワイアン・パラダイス」の話も思い出す。
この51巻で最もおすすめなエピソードは「ハワイアン・パラダイス(前編・後編)」やや物語のネタバレになっているので注意。
物語は両津/本田の二人組が仕事をサボって海水浴に来た所から。本田の何気ない話で両津は中川と麗子が上司の大原部長の無欠勤勤続を祝うため、ハワイにでかけている事を知り激怒。自分だけのけ者にされた悔しさを晴らそうと「無謀だ!」と叫んで嫌がる本田と白バイを手作りのいかだに積み、海水浴場からハワイ目指して大海原へ漕ぎ出します。ハワイの方角は全然わからないが海流は日本から太平洋に向かっているため問題ないと語る両津ともめる本田。
(略)
…「ハワイは船で2ヶ月かかる。この話は最初からムリあるんだ」とグチる本田を「子どもの読者は知識が少ないからしらんぷりしていりゃいいんだよ!」と殴る両津。