アンデウソンシウバの引退も、ヌルマゴメドフの盤石の防衛とこれまた突然の”引退”も、グローバーの相変わらずの寝技技術も、クインテットの組み技攻防とチーム所の優勝もそれぞれちゃんと見ていたんだけど「どうせなら全部まとめて書こうかな」とか思ったのが大失敗で結局溜まったままになってしまい、そしてRIZIN.25の当日になってしまった(笑)
https://jp.rizinff.com/_ct/17408403
やはり試合前に、一言二言。
大晦日の前ということで、あまりたくさんエース級を投入するというわけにはなかなかいかないようだ。朝倉兄弟の弟は、大晦日に堀口恭司との大一番ということで、朝倉未来を投入するというのは、自然な流れだろう。
にしても、その朝倉の相手として、RIZIN参戦は「23」1回だけの斎藤裕選手に白羽の矢が立ったわけだけど…これは修斗にしてみればひょっとしたら”最後”のリベンジチャンスかもしれないわけですよ。
やはりなんだかんだ言っても朝倉未来は、そして朝倉海は「ジ・アウトサイダー」出身と言うバックグラウンドが外れることはない。不良とか前田日明プロデュースとか、色々な装飾はあるんだけど、それはそれとして、朝倉兄弟はまがりなりにも「アマチュア」を経てプロになったわけである。しかし…
もちろん対戦する斎藤裕も、修斗の正統として、ちゃんと全日本アマ修斗大会を経てプロデビューし、キャリアを積んできた。
https://jp.rizinff.com/_tags/%E6%96%8E%E8%97%A4%E8%A3%95
そして後者の修斗は、積み重なった歴史と堅牢かつ層の厚い「ピラミッド」によって、才能ある若手を競わせてふるいにかける、その育成力・選抜力を誇ってきた。
修斗選手がPRIDE武士道やDREAMなどに(修斗との関係も保ちながら)本格参戦し始めた時、UFCやPRIDE本体をも上回る「”世界最大の”格闘技 commission」、 であると麗々しくビデオで紹介された場面は今でも語り草だ(笑)。そしてそれは正しい認識だった。
一般論として格闘技というのは、一人の天才が普通とは違うようなキャリアをへて登場する可能性が高いジャンルかもしれない…それでもなお、「修斗」と「THE OUTSIDER」は、同じアマチュア団体と言っても、その内実も思想も全く対照的だ。
地方予選やら何やらがあるわけではなく、選考者の”お眼鏡にかなった”人間はいきなりプロにも遜色のないような華やかなリングに上がり、勝てば派手なガッツポーズとともに仲間たちの賞賛を受ける。
DVD や雑誌などの注目度はなまなかなプロを上回る…そんな魅力で集まった、「喧嘩自慢」的な要素も強い選手たちの選抜・育成は、やはり修斗の緻密さとは違う。
だからそこ出身の選手に、修斗出身選手が破れるというのは、やはり通常の1勝、通常の1敗とは、また意味が違ってくる・・・・・と思うのです。
※このへんのプライドについては、1日前に20日にONEで、テレビ企画からスター街道に乗った選手と闘う高橋遼伍選手の言葉が、対象は別人とはいえ参考になるだろう。
(略)……格闘技、真面目に一生懸命やっている奴らのために負けられないんですよ。
そうやって一生懸命やっているヤツは、『高橋、絶対に勝ってくれ』って思っているはずです。その期待には応えたいですね」
──それなのにここにいるABEMAのスタッフは、格闘代理戦争出身のユン・チャンミン押しですよ。今日の取材もチャンミンがありきの高橋遼伍、です。
南和輝ディレクター ……、そんなこと……ない。違いますよ……(苦笑)。
「アハハハハハ。まぁ……ホンマにボコボコにして、北野さんに自分が薄ら笑いしますわ(笑)」
──アハハハハ。
「ABEMAの人たちは格闘代理戦争をやっているから、それはしょうがないです。だからこそ、ここでチャンミンに僕が負けると『俺たちの企画は正しい。強い人間を生むことができる』ってなるじゃないですか。そうしたら修斗でコツコツやってきた坂本さんや北森さんの顔に泥を塗ることになるんで。
修斗の叩き上げなので、テレビの企画のポッと出のヤツとは越えてきた修羅場の数が違う。そこはしっかりと示したいですね。やっぱり叩き上げは違うなって、思わせたいです──格闘技関係者には」
mmaplanet.jp
そして、朝倉未来が修斗系選手で破ったのが、日沖発、リオン武、矢地祐介……前の2者はダメージが蓄積してるとか全盛期を過ぎてしまったとか、そういう視点でも確かに見られるだろうけど、そういいにくい矢地も含めて完勝してるわけで、やはり修斗にとって「朝倉未来の首」は、大きな意味があると思う。
今回の相手・斎藤裕は、前述したようにアマからきちんと駆けあがったという意味でも修斗代表にふさわしいが、宇野薫、リオン武、髙谷裕之という、やはりダメージ蓄積とか全盛期を杉田などはありつつも、ビッグネームを次々に倒し、修斗の歴史を自分の内部に取り込んだという点でも朝倉未来と対をなす。
この二人が闘うが、斉藤が自ら「下克上」と今回の試合を銘打つように、世間的な知名度も商品価値も朝倉未来は絶頂期にある。来年は何しろ、フロイド・メイウェザーの最有力対戦候補とまで言われているのだ。今後、 修斗からコツコツ勝ち上がってきて、RIZINでも参戦し勝利しました…みたいな選手が朝倉未来と戦う機会を得るという こと自体が難しくなるんじゃなかろうか。
そういう点で修斗にとっても、「最後のリベンジチャンス」なのではないかと思うのです。
果たして結末は。
スカパーその他で生放送。
オールラウンダー廻 コミック 1-19巻セット (イブニングKC)
- 作者:遠藤 浩輝
- 発売日: 2016/05/23
- メディア: コミック
追記 試合後に、こういう記事がでました
あと気になったのは修斗の斎藤選手は地道にコツコツやってきて、アウトサイダーの未来選手はそうじゃないと。ボクはその対立構造に異を唱えたいです。
(略)
そもそも修斗とは何か。今回、解説の中井祐樹先生は「修斗とはシステムです」と言ったんです。 それはアマチュアから競技人口を増やしていくというシステムですよね。それはある意味で修斗の否定ではあるんです。どういうことかといえば、修斗だけが総合格闘家を育成するというシステムは00年代の前半から終わりつつあったからです。DEEPもパンクラスもやり始めている。
(略)もちろん現在のアマチュアのシーンを牽引しているのは修斗ですが、「修斗こそがホンモノである、修斗だけを信じなさい」という強迫的な教えに内外から反発もあったのは事実なんです。信じられないですけど、修斗出身のファイターが他のリングで試合をすると裏切り者扱いされた時代がありました。…そのうち修斗以外からも、あたりまえのようにデビューできる時代になりました。2010年代になると、朝倉兄弟を輩出したアウトサイダーがアマチュアの受け皿のひとつになった。アウトサイダーは横浜文化体育館で興行をやったり、最も注目を浴びていて「アウトサイダーで試合がしたい」「アウトサイダーを見たい」と若者から人気があった。(略)修斗は、おしゃれ格闘技の先端でした。K-1MAXのモデルになったぐらいカルチャー面として若者に人気があって、Tシャツだけを買いに来るような若者のお客さんがたくさんいたんです…(略)要するにアウトサイダーもかつての修斗のようにカルチャーからも日本の格闘技を支え、育成というシステムが機能していたんです。
未来選手はその中で実績を積み、海外でも試合をして、メジャーにピックアップされて連勝を重ねた。今回は「YouTuber vs 叩き上げ」という構図で捉えている人もいますけど、朝倉未来も「叩き上げ」なんです。朝倉兄弟という存在は日本格闘技界というシステムの中からも立ち上がったファイターでもある。
(略)
斎藤選手が未来選手に勝つことで修斗は救われた。今回の試合で朝倉未来という幻想の浮沈が騒がれますけど、あらためて修斗という幻想も問われていました。その幻想は復活したかもしれませんが、勘違いしないで欲しいのは朝倉未来も修斗的な世界の体現者のひとりではあったということなんです。