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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

ホームズの属性を変える二次創作が流行なので、たこをホームズにしてみたら。

ホームズものの人気なんてずっと継続しているからブームも何もなかったりするのだが、やはり「シャーロック」の世界的ヒット以降は追い風が吹いているような気がする。

んで、整理してみると…

BBCドラマ「シャーロック」。/現在のロンドンを舞台に、21世紀の若者にホームズの属性を変更。
http://kadokawa-d.jp/lineup/sherlock/
  
三谷幸喜「シャーロックホームズ」/寄宿舎の学生にホームズの属性を変更。
http://www.nhk.or.jp/sh15/
 
製作中の映画「ミスター・ホームズ」/ホームズその人という設定ではあるが、93歳になった姿を描く。
http://movie00.seesaa.net/article/401554582.html

 
 
そんでな。
この前、書店の棚に「シャーリー・ホームズ」なる書名のハードカバー本をみっけた。

シャーリー・ホームズと緋色の憂鬱

シャーリー・ホームズと緋色の憂鬱

  • 作者:高殿円
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2014/07/24
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
2012年、オリンピック開催に沸くロンドン。アフガン帰りの軍医ジョー・ワトソンは、早々に除隊したものの、物価の高さと仕事のなさに鬱々としていた。このままでは路頭に迷ってしまう。そんな折、友人ミカーラからフラットシェアをすすめられた。シェアの相手はシャーリー・ホームズ。ちょっと変わった女性だという。だが、実際に会ったシャーリーは、ちょっとどころではなく変わっていた。乗馬服に身を包んだ清楚な美貌、人工心臓を抱えた薬漬けの身体、初対面で経歴を言い当てる鋭い観察眼、死体置き場で寝起きする図太い神経。なにより驚いたのは、彼女が頭脳と電脳を駆使して英国の危機に立ち向かう、世界唯一の顧問探偵であることだった。 ベイカー街221bで同居を始めてまもなく、ヤードの女刑事グロリア・レストレードが訪ねてきた。死体がピンク色に染まる中毒死が続発しているらしい。いまだ無職のジョーはシャーリーに連れられて調査に赴く。それは二人がコンビを組む、初めての事件だった。 表題作に短篇「シャーリー・ホームズとディオゲネスクラブ」を加えた、目覚ましい独創性と原作への愛に溢れた、女性化現代版ホームズ・パスティーシュ登場!

ホームズを女性キャラクターにしての二次創作。
ふむ、まあありましょうな、そういうのも。
ワトソンのほうを女性に描いて、ドラマになったものもあるとか。
http://www.wowow.co.jp/drama/elementary/



そしてこれは本格的なパスティッシュらしい。

https://twitter.com/kumonoaruji
巽昌章@kumonoaruji
ルネ・レウヴァン『シャーロック・ホームズの気晴らし』は楽しかった。ホームズのパスティーシュが好きで、目につくと買うのだが、そのくせストライク・ゾーンが狭いらしくめったに満足できたためしがない。むろん、それは一読者としての好みの問題で、出来栄えと好き嫌いは一致しないのだが。

シャーロック・ホームズの気晴らし

シャーロック・ホームズの気晴らし

きまじめに原典をなぞったパスティーシュは、力量のある人が書いている限り、雰囲気やホームズとワトスンの掛け合いを愉しめるので好きだが、ぜいたくなもので、読んでいくうちに、もっと刺激や新味がほしいという気持ちがきざしてしまう。かといって、宇宙人と闘うような奇抜すぎるのには抵抗がある。
 
で、『シャーロック・ホームズの気晴らし』は、原典を忠実になぞっているようでいながら、いつのまにか独自の世界を作り上げていて、原典尊重と個性味のバランスがいい。いや、無難にバランスを取っているというのではなく、むしろ、ワンアンドオンリーの作風だというべきか。
 
収録されているのは長めの短編が6つ。いずれもホームズたちの活躍を懐かしいタッチで再現しているのに、その捜査はいつの間にか、歴史や文学の考証に横滑りしてゆく。しかも、謎解きの果てに立ち現われるのは、類推や暗合への偏執的興味に満ちた壮大な偽史的世界観なのだ。その横滑り感が気持ちいい。
 
私はもともと、推理小説の「推理」を、決定論幻想、因果の構図がもたらす魅力、類推の誘惑、暗合への偏執、すべてが隠れた領域で結びついていると考える妄想的世界観などと不可分のものとしてとらえようとしてきた。『シャーロック・ホームズの気晴らし』は、だから、ど真ん中ストライクなのである。

一時は原理主義的なホームズパロディ異端攻撃もしていたわたしだが、いまや「みんなちがって、みんないい」である。それぞれが人気を得られんことを。


さて。
そして。
こんなふうにシャーロック・ホームズの属性を変えるのにも「なんでもあり」な状況なら、シャーロック・ホームズをたこにできるのではないか?と考えた。
このへんの考えのプロセスを説明するのは難しい。ここのブログ内、エントリーにもある「たこ」タグでも押して、過去記事を読んでほしい。
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/searchdiary?word=%2A%5B%A4%BF%A4%B3%5D
そしてだ。名探偵がたこなら、怪盗はいかだろう。説明不要

実行。


そして……
読者は驚かれるだろうが、ここから先の展開はまったくないのである。
別にたこのホームズがたことして活躍する本格推理とか、怪盗いかの痛快活劇ロマンとかは別に無い。ただ、たこのホームズというのを世界で初めて描いてみた、というだけである。
 
以上。