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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

戦国時代の転向キリシタンによる聖書批判がぶっちゃけ。「なんであまぼし(禁断の実)食べると天国追放なの?わけわかんね」

2009年に、こういう本を紹介したことがある。

新潮選書から「不干斎ハビアン」の本が出ていた。 - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20090825/p4

出家、改宗、棄教――。世界に先がけて、東西の宗教を知性で解体した男。

禅僧から改宗、キリシタン全盛の時代にイエズス会の論客として活躍するも、晩年に棄教。世界に先がけて東西の宗教を解体した男は、はたして宗教の敵か、味方か? 独自の宗教性と現代スピリチュアリティとの共通点とは? はたしてハビアンは日本思想史上の重要人物か――。その生涯と思想から、日本人の宗教心の原型を探る。

この人を紹介する文章はいろいろ読んでいたので、大体の概要は知っていたのだけど、あらためて一冊の評伝を読むといろいろ知ることもある。、

んでね、やっぱり日本人の?というか、フラットな立場で最初に?キリスト教の教えを知った人の反応、或いは転向者のつっこみたくなるところは、1000年前も500年前も同じなんだなあ、と可笑しくなったので、本書からその批判を紹介しよう


要約すると、こういいたいのだハビヤンは。

(1)たかが「あまぼし(禁断の実)」食ったら天国追放ってきびし杉。ケチワラタ。

(2)「全能の神」なら、ルシファーがアダムとイブをだますのもお見通しだろ?助けないのワラタ

(3)「全能の神」なら人類が生まれて、苦しんで、懺悔して救済されるの、ぜんぶお前のしわざじゃん。自作自演ワラタ

デウスと言う唯一なる神の戒律が、よりによってマサンとかいう甘干(あまぼし。干し柿のこと)のようなものを食べてはならない、などとは。老人をたぶらかし、子どもをあやすような話である。天国か地獄か、という一大事の因縁が甘干しとは、あまりにも役者不足である、古蜂屋入道は『あまぼし談議』と名づけたというがもっともだ。そもそも、なぜデウスは、アダムとエヴァを助けなかったのか。しかも、だましたのは、自分で作ったルシヘルである。あまぼしを食べたから、全人類は地獄いきとは…なぜデウスは、アダムが破戒するのを知らなかったのか。とても全知全能とはいえない。とにかく論理破綻しているなあ」

「切って継ぎ番匠」ということわざがある。せっかく長さが十分ある材木を、わざわざ切って継ぎ合わせたがる大工のことだ。
また、禅では「好事無きにしかず」と言う。たとえ好事でも、何もないことにはかなわない、ということだ。
わざわざ破戒者であるアダムとエヴァを作り出し、苦しみを与え、そして懺悔したら救ってやるという。おかしいではないか。

195-197P

読んでの感想

これ、何度か書いた話だけど…不干斎ハビヤンと同じ疑問点って、自分は独自に神学研究…てえほど大層なもんじゃない、普通にキリスト教の歴史や宗教学に接した際、独自に到達したのであります。ハビヤンは戦国時代においては当代一の知識人であり、その批判と同じ結論に達した、というのは少々は自慢なんだけど、さらに調べてみると、やっぱりこのへんの突っ込みは、みんなしているんだと分かった(笑)。
これは昨年でしたか、

ザビエルの書簡を基にして「日本人は優秀だからザビエルは困った」的な解釈が流布され、それが再度検証されたとき、同じツッコミは日本人だけでなく、中世以前にキリスト教改宗を勧められたゲルマン人の酋長もしていた、ことを思い出しましたねん。
詳しくはKousyouブログの

ザビエルはキリスト教の矛盾を論破されたのか説得したのか問題 http://kousyou.cc/archives/4462

「日本人、ザビエルに突っ込む」話に関する参考資料など - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20130209/p3

なんぞをごらんください。
もちろん、キリスト教側も、このへんに対する答えは用意しているのであって、それはまた「自由」「自由意志」ということの考察にもそのままつながっていったなりよ。


彼らの見解は、三浦綾子氏が端的にまとめて(引用して)いる。

「神様が全知全能なら、なぜ人間に悪をさせるの?」という問いにキリスト教はこう答えている(三浦綾子) - http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20101224/p7