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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

VTJ雑感。前田吉朗、マモルがフライ級トーナメントから共に退場。世代交代か、その「闘い方」か……

http://d.hatena.ne.jp/lutalivre/20140223/1393148579
マモルはVTJでは2連敗中。昨年のDEEPでは前田吉朗相手に3R挽回しドローだったものの、3年近く勝ち星から遠ざかっている。

組み付いたスクラヴォス。投げを狙う。バックに回って背中に乗る。チョーク!パームトゥパームで絞めて落とした。
(略)茫然自失のマモル。スクラヴォスは鮮やかだったが試合時間が短すぎたし正直わからない部分もある。

http://d.hatena.ne.jp/lutalivre/20140223/1393149273
3R。タックルに入った前田だが切られる。しかし飛び膝入った。またタックル。また切られた。前田疲れてる。パンチが手打ち。ノーガード。……神酒ダメージはないが押されて下がる。手を出していく前田だが威力がない。神酒の右がヒット。しかし前田テイクダウン!立った神酒。両者売ってこいとアピールし打ち合い…死闘。両者出しきった。判定。29-28×3の3-0で神酒勝利。

前田は最後まで攻め続けたが、1Rにパンチを貰ってから雑で大振りになった感は否めない。それでも普通はあそこまで盛り返せないが……。気持ちの強さは相変わらずだが、打たれ弱くなってる。打たれても打っていくというジャパニーズMMAを体現するような戦いぶりで試合を盛り上げるが、ダメージが蓄積してきているか。

見出し的には並べてかいたが、実のところマモルの試合は攻防が簡単過ぎて、逆に個人的な感情としては「相手が強かった。またがんばってください」で終わらせられるような感覚がある。前田でいえばビビアーノ・フェルナンデス戦のようなものだ(専門家から見ればまた違うのだろうが)


それより考えさせられたのが、前田吉朗の試合だ。VTJの中でも白熱した一進一退の攻防のすえ、神酒龍一に一歩及ばず、判定負けを喫した。
前田の日本人相手の敗北は高谷裕之DJ.taiki、中村アイアン、今成正和など同世代的な相手に喫することが多く、若手に道をゆずるような試合は今回が初めてだったかもしれない。

で、今回のVTJ、ニコ生中継の解説者が急遽青木真也に決まった。そして青木は、長南亮ジムを通して前田吉朗と練習などの付き合いもあるらしい。
青木コメントの記憶による要約
・「前田吉朗は、練習している人間から見ると、本当に強いし、気持ちのいい男。だがレコードを見ると、その実力のわりに報われないという印象」
・「試合中、戦うことそれ自体を楽しんじゃうのが悪い癖」
・「良くも悪くも、むきになって殴り返すタイプ。自分とは反対ですね、自分はずっとクール状態です」


・・・…どれもこれも、もっとも。
「試合を楽しんでしまう」は吉朗本人も、高谷裕之戦の敗戦直後に反省点として挙げてた敗因だった。今回は(疲れてガードがしんどい、もあっただろうが)3Rにはノーガードの挑発や、ハイタッチ後の壮烈なるドつき合いなど、「モダンMMA」をゴン格が特集するご時勢にはあまり見られない、いわば「ゼロ年代総合格闘技」的なファイトを見せてくれた(※新世代の神酒もそれに乗ったからこそだが)。
 
見せて「くれた」だ。
こういうファイトには常に批判が付きまとう。アオキの解説も「本当はこういうのは良くないんだが・・・」というニュアンスをたっぷり含んでいたし、ジャイアント馬場さんもジャンボ鶴田が「オー」とやると「あのねェ、こういうことをやる前に攻めりゃいいんですヨ」と解説席で苦言を呈していた(関係ない)。

UFCでも、パット・バリーミルコ・クロコップにこういうリスペクトを見せて…逆転負けを喫し、批判を一部から浴びたことは有名だ。
http://manabelldo.exblog.jp/m2010-06-01/

しかし。
前田吉朗の全戦績を通し、かなりの試合がそういう吉朗スタイルのゆえに、ファンにとっては飽きさせない”名勝負”だったことも間違いないと思う。
http://www.inagakigumi.com/new/fighter/maeda.php
何しろミゲル・トーレスとの試合はダナ・ホワイトが年間ベストバウトに選んだぐらいだし。
今は「そういう派手な倒し倒されや、男気のままのど付き合いではなく、緻密に隙無く闘う2者の試合をこそ名勝負と見るよう、見る側が意識変革をしなければ」というのを、「ゴン格記事の4割を書く男」こと高島学氏が啓蒙しているわけだが(笑)。


もし、そういう意識がさらに一般化していくなら、さらに前田吉朗は、トーナメントに敗退したとか王座を失ったとかとは別の意味で「一昔前」になっていくのか、という感じを抱いてしまう。


もちろん、マモル戦や和田戦、大塚戦を見ると…またそもそも神酒戦が接戦だったことを見ても、まだトップに位置するかもしれないし、「隙の無い戦い方」もできるのかもしれない。今は長南亮の模索する北米流も吸収しているし。
またそもそも「フライ級に体が慣れればまた違う」とも「フライ級は少し無理があるので、バンタムに戻していいんじゃないか」とも言われたりしている。確かに今回は「パンチが当たっても、今までより相手のダメージが少ないな?」という印象もあった。



ただ、それでもなお前田は、かりに戦績的にトップクラスに居続けても「一昔前の総合格闘技スタイルを見せてくれる男」になっていくのだろう、という予感がある。


そしてそれは、それで美しいのではないかとも思うのだ。
たとえば試合も、現役王者に挑戦する試合より、相手にそういうスタイルに近い相手を選んで、いわば”レジェンド対決”的なものに重点を置く・・・チュール・ソネンやランペイジ的なスタイル。

そういうことがあってもいいかなー、と思いました。