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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

「はだしのゲン」閉架措置に。「思想信条でなく、過激描写があるから」…逆手に取られた感はある

同市議会には昨年8月「子どもたちに間違った歴史認識を植え付ける」と主張する市民から、学校図書館からの撤去を求める陳情が提出されていた。だが市議会は同12月の本会議で、全会一致の不採択を決めていた。

 市教委の古川康徳副教育長は歴史認識の問題ではなく、あくまで過激な描写が子どもにふさわしくないとの判断だ」と説明。「平和教育の教材としての価値は高いと思うが、要請を見直す考えはない」と話している。
http://www.chugoku-np.co.jp/News/Tn201308170015.html

もともと、週刊少年ジャンプに載った作品ではあるが。
「あくまでも過激描写が問題」が本心か名目か…本心であると判断するにははどーにも疑わしいけど、単純ながらこの論法は堅固であるのも事実だ。ちびくろサンボが大手から絶版に追い込まれる世の中、ゲンはよくも持ちこたえたものだ。

そしてだ。
「ゲンは『いい作品』である。だから例外で過激描写もOK」というと、それは変なダブルスタンダードになる。過激描写の本一般を、むしろゲン水準に合わせてOKと見なす…「悪い本」も含めてだ。そのほうが矛盾がない。

作者中沢啓治氏自身が、なんども「はだしのゲン」再刊や文庫化に際し解説執筆者として指名した呉智英氏は、表現規制問題と「良書」「悪書」についてしばしば本居宣長の一文を引用していた。

(歌の中には)
政のたすけとなる歌もあるべし、
身のいましめとなる歌もあるべし、
また国家の害ともなるべし、
身のわざわいともなるべし

あ、呉智英で思い出したが、
「これは良書だから」で例外的に救われるとしたら、
ちびくろサンボ」追放の先頭にたった岩波書店が、ほぼ同じ用法の比喩表現に対してひとつは絶版、ひとつは知らぬ顔でそのまま再版を重ねる…というダブルスタンダードと同じようになってしまいよろしくないな。

岩波書店と「屠殺者」問題シリーズ
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20061202#p9
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20070408#p2
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20071201/p7
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20071206/p4

なんにせよ、ふたたび「はだしのゲン」が図書館の開架スペースに置かれることを望む。その場所の隣に「美味しんぼ」があっても「ゴーマニズム宣言」があっても、はたまた「嫌韓流」があっても…なにかの間違いで「ヘルシング」があっても(笑)、それはそれでOKだ。

これにつながるのでぜひ一読を

『ちびくろサンボ』絶版を考える

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ちびくろサンボよすこやかによみがえれ

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黒人も『ちびくろサンボ』が大好きだった!!黒人の図書館員・児童書専門家が、こぞって推薦していた絵本『ちびくろサンボ』は、ある日、突然、「反サンボキャンペーン」にみまわれた。日本で『ちびくろサンボ』が一斉に絶版になってから10年。アメリカでの調査をふまえて、いま、はじめて明らかにされる『ちびくろサンボ』評価の変遷。日米に共通の反差別運動の問題点。被差別者の痛みとはなにか。差別語の判定基準はどこにあるのか。被害者意識とルサンチマン。差別撤廃の希望はどこにあるのか。被差別者の真の友とはなにか。