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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています 

日本最大格闘技団体「Krush」はこうして成功した〜このノウハウ、模倣可能か?(格闘秘宝館)

「人気とゼニは、あるところにさらに集まりやがるゼ……」(梶原一騎調)というか、リフレ株高的というか、Krushは何べんもいうが「今人気だね」「超満員つづきだね」ということ自体が話題になって、さらに注目度、人気が高まるという好循環があるようだ。
その火付け役の一人が

■観る側”を徹底的に意識した興行で、立ち技格闘技Krush札止め続出!
http://number.bunshun.jp/articles/-/450073

の書き手、橋本宗洋氏。そして、この記事のためのインタビューでは、原稿に仕切れなかった内容を、運営する「格闘秘宝館」メルマガの対談のネタにしている。商業的な文章ではサイトも紙面も「分量制限」からはなかなか逃れられないから、メルマガの利用法としては非常に有意義だ。
 
Krushの運営の中心となる宮田充氏の考える「興行」のあり方、その中核は、
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20130530/p1
にも書いたように
、『激しい試合で観客を満足させろ』『ただ勝つだけでは駄目』
という、競技性の観点からは永遠に賛否両論を呼ぶものだが…それはおいておくとして、それ以外のさまざまな小さいノウハウがある。
 
さて、そっちのほうは他団体にも参考となるのか?まねできないワンアンドオンリーのものなのか?メリット、デメリットはどんなものなのか?ちょっと考える参考にしてもらいたい。以下適宜引用、要約するが、一種の「プロジェクトX」ものとしても楽しめる。

高崎 (略)立ち技の世界でパンフレットを売ったのは全日本キックが最初じゃないか…
(略)
橋本 プロレスでは当たり前…宮田さんは…業界キャリアのスタートが全日本プロレスのバイト…売るのが当たり前だと思ってたら///薄いヤツを配るのが当たり前…(略)100円で売って…それでも最初は、古株のファンの人から「金取るの?」って言われた……自分でジムに電話して選手に意気込みを聞いたりして。そういうところから始まってる…

橋本 (略)…紙テープなし。花束贈呈なし。で、今は激励賞の読み上げもなくして…(※ジムからは「読んであげてよ」との声もあったが断行した)…何でかっていうと、その選手やジムに関係のないお客さんがどうしていいか分からない時間を極力なくしたいと。
高崎 …「ファンによる花束の贈呈」の時間も(略)…激励賞読み上げの中で「株式会社●●一同」…その会社の人たちだけが「オーッ!」と盛り上がるみたいな。
橋本 (略)そういう時間を省いていくっていうのは、ターザン山本さんの助言…(略)「あの時間、お客さんはみんなパンフ読んじゃってるよ!」って言われて、すぐに直し…あと、選手がすみやかに退場……「通路で友達と握手したり記念撮影…」みたいな。これも、その人たちにとっては大事な時間だけど、他の人たちには全く関係ない

橋本 …試合数を増やして選手をたくさん出すんじゃなくて、コンパクトに収めると。「長い興行は好きじゃない」って、宮田さん本人が断言…

橋本 (略)…試合後にマイクを持つ時は、南側が正面だからそっちを向きなさい、というのも言ってる……「君の応援団が東側にいようが西側にいようが、正面は南だから」っていうことは話すと。
高崎 選手はどうしても応援団の方を向いちゃいますよね。あれは他のお客さんはどうしても冷めますわな

ふむむ、なるほど。だが、ほかで採用できるかというとどうだろうかね。Krushを「ネオメジャー」と最近半分冷やかしで言ってるけど、「格闘技興行でメジャーとインディーを分けるのは試合数だ。メジャーは7−10試合。15試合も20試合も組むのはインディ」てな定義を聞いたことがある。これは一部、二部制にしても同じことですよ。

でも、そうなる理由はいろいろあって…競技として試合の場を、云々の”タテマエ”はこっちおいといて、試合出場者が一人増えれば親戚、ご近所、先輩後輩、職場の仲間…など客は15人、20人増える。やっぱり確実な集客方法だ。これが駄目なわけはない。これを選択するか、Krush的な選択をするかはやっぱり興行自体がメジャーかマイナーか、という志向の差なんだろう。
案外、この「試合数を絞る」というのをやっているのは修斗の後楽園興行だったりするよね。後楽園は延長料金や会場貸し出し時間のこともあるか。試合数を多くしたいんだったら一日貸切のディファでやれ、的な。
また激励賞アナウンスや花束、記念撮影も、1人の選手を応援するグループ十数人の満足度を高める効果はある。その集団の総和としてのお客さんを集め、運営していく…というのは、決してまずい戦略ではないと思う。というかやっぱり、その効果を重んじてこれらを行うか、えいやっと捨てて一般のお客さんの”ふわっとした民意(橋下徹調)”に重心を置くか。

これはむつかしいとこだが、Krushはそこでやっぱり後者に重心をおき、それが成功につながりつつある?のかもしれない。
 
プラス、「『身内の応援団』以外に選手の人気の輪を広げる場を、意図的に(無理やりにでも)作る」という戦略。これが面白かった。

橋本 Krushって選手との握手会をやるんです…試合のない選手がロビーにいて、帰るお客さんと握手してお見送りをすると。ファンは単純にうれしいし(略)「来月、僕試合なんでよろしくお願いします!」って言われたら「行こうかなあ」ってなっちゃう人情というか(笑)…選手にも意味があって、「君を応援しているのは君の応援団だけではない」っていうことを選手に教え…(略)知らない人から「応援してます」とか「ファンです」とか言われたら、選手も張り切っちゃうだろうなっていう…

高崎 ファンを入れての公開記者会見を本格的にやってるのもKrush……気の利いたことが言えないとその日の他の話題に埋もれちゃうんですよね。そうなることを痛感させるという効果も…

橋本…最近は大会の前に選手のトークコーナーを設けて…、客前でしゃべる経験をさせる…

お金は…まあこれも公開記者会見というのは会場も借りなあかんし、選手のトークコーナーだって、Krushでは特に貴重な「興行の時間」を分配しての取り組みだ。下手にまねできるわけでもないし、二番煎じのそしりも受けるかもしれない。
 
しかしとにかく、今現在「日本最大格闘技団体」に上り詰めたKrushが、こういうこまーかい工夫、試行錯誤をしていることが分かった。プロジェクトXというより「がっちりマンデー」だな。
そういう点で大変おもしろい。他団体を見るときも「あ、ここはKrushが排除しているXXXをやっているんだな」「それはなぜか?メリット、デメリットは?」と考えると、激励賞の読み上げの時間ぐらいはつぶれるだろう(笑)。