※追記 その後、リンクを全体的に張り、世界観の説明もしたポータル記事がこちらです
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バー「とうめいえんばん」。
「じゃあ、まあ名刺がわりに、今はこういう仕事をしてますってことで一杯飲んでみてください。私が厳選したテキーラです」
ちょっと小さな港町にある、瀟洒なバーだ。引退後のジャミラさんが経営し始めたこのお店は、テキーラベースのカクテルが特に評判で、現役時代のジャミラさんを知る世代だけでなく、若いカップルなどにも人気があるという。開業前の忙しい時間に、特に今回、時間を作ってもらってインタビューをさせてもらった。
――うわー、インタビューで飲まされるとレッドキングさんのときみたいになる(※リンクを後述)からなあ・・・じゃあ一杯だけ。 ・・うわっ。自分はお酒はよく分からないけど、このテキーラは飲みやすいですね、このお酒って強いと聞くけど。
「そういえば、私がテキーラ好きになったのも、現役時代に関係しているんですよ。テキーラは別名『火の酒』でしょ?自分はそのころ、火を噴く技で売り出そうとしてましたからね。そしたら『火を噴くやつは火の酒だろ!』って言われて無理に飲まされて・・・さっき出てきたレッドキングさんに(笑)」
――あ、やっぱり(笑)。今日はその、現役時代のご活躍をたっぷり語っていただこうと思ってうかがいました。往年のファンには、ジャミラさんの戦いぶりが一番印象深い、という人が大勢います。あの試合ばかりは、絶対的ベビーフェイスの初代ウルトラマンがヒールのようになり、会場から割れんばかりのブーイングが飛んだそうですね。今でも語り草の試合です。
「それ(ウルトラマンがヒール扱いになったこと)が、怪獣レスラーとしての『いい仕事』と言えるかは、なんとも言えないですけどね(苦笑)。ただ、自分としてもあの試合は、もちろん生涯忘れられない試合ですよ。語り継がれるレスラーはそのキャラクターを記憶されるタイプと、『伝説の一戦』が話題となるタイプがいます。才能もなく、あの世界でそれほど成功したともいえない自分が、ファンに覚えられているのは後者としてでしょうね。どちらにもなれず消えていく怪獣がほとんどの中で、これがどれほどありがたいことか」
――やはり、完全に狂気に陥り破壊を続けているとはいえ、元人間を救うこともできず、秘密を守るために抹殺しなければならないウルトラマン・・・というストーリーラインが、ウルトラマンと戦うジャミラさんをベビーの座に持っていったのでしょうね。
「じゃあ、あのギミックを考えたプロモーターに感謝しないと」
――えー、そこなんですが・・・公然の秘密とはいえ、正式なカミングアウトはまだでしたね。あえて聞くのも野暮かと思うので、お答えの仕方は任せますけど・・・本当に元地球人ではない、ですよね?
「ええ、違います。てか、見てわかりますよね」(あっさり)
――まあインタビューをしてると、昭和的に、ギミックは墓場まで…という気質の人もいるんですけど・・・ねえ。やはり、歴史の真実は残しておきたいものですから・・・。さて。仰っていただいたところであらためて伺うことにしようと思います。ジャミラさんが、「元地球人で、水の無い惑星という地獄を生き延び、UFOを自作して地球へ復讐に戻ってきた・・・」というギミックにいたるまでのことを。
「そうですね・・・では、ここでもう一杯、カクテルでも飲んで頂いてから」
――ん、これもうまい!女性が好きそうなカクテルですね。
「まあ、地球人ギミックといっても、劇的な変身のエピソードがあるわけじゃないんですよ。そのときお世話になってたプロモーターのアイデアに従った、というだけの話でね・・・、そのプロモーターの信条が、『素の部分をそのまま個性にした怪獣は大成せん。非日常を客は身にくるんだから、怪獣も日常から離れたキャラクターを身につけるべきだ』というものでした。もちろん怪獣は他のテリトリーから来る大物もベテランも多いから、そこにまで押し付けはできないんですけどね…。でも私らみたいな、そこでデビューした子飼いの怪獣は、出身地とは違うギミックをつけさせたんです」
――非日常って、怪獣はそのまんま非日常じゃないですか(笑)。ほかにもそういう怪獣いたんですか?
「たとえば私の同期だったぺスター、あいつホントは、華麗な空中殺法を得意としてた、コウモリギミックの怪獣だったんですよ。コウモリといえば悪役の定番だ。華麗に飛んで見せればウルトラマンに一回勝っての前後編まで行けるぜ!とか野心満々だったんですけどね。でもプロモーターにある日、『お前の翼、明日までにペイントしてヒトデ風にしてこい。お前は、石油好きの飲んだくれ怪獣として、ウルトラとコンビナート・デスマッチでメインを張るんだ』とね。抜擢されたんだから正直うらやましかったんですけど、ぺスターは当時、『石油ってまずい。なんでこんなのをタッコングとかは毎日飲んでいるのかわからん』とかぼやいててね(笑)」
――あははは、ぺスターさんは石油、好きじゃなかったんだ。タッコングさんは本当に好きだと(笑)。
「でもその後、仕事で飲んでくうちに慣れたみたいですよ。まあ石油の飲み比べしても、タッコングもぺスターもレッドキングさんにはかなわなかったでそうですけど(笑)。ほかに有名どころではブルトン君かな。彼はもともと『ホヤとフジツボが合体し、巨大化した怪獣』としてデビューするはずだったんですけど、そんなの地味だろ!とプロモーターが『四次元からやってきた怪獣』というギミックを考えたんです」大怪獣シリーズ(R) ウルトラマン編 「四次元怪獣 ブルトン」少年リック限定仕様
- メディア: おもちゃ&ホビー
――え?そのルーツは初耳だ!!ブルトンはフジツボとホヤの合体怪獣だったんですか? そういわれれば納得する姿ですが、知らなかったな。
「いや、皆が知らないのも理由があるんですよ。ブルトンの実家は父方のホヤも、母方のフジツボも海沿いではそりゃあ有名な名家でね。本当は跡を継ぐはずが飛び出て、この世界に・・・その時も相当もめたそうだけど、最後は『貝のすごさ、かっこよさを世間に知らせる大活躍をしてこい!』といった方向で実家も応援することになってね・・・それでデビューしたらブラウン管に映っているのは”四次元怪獣”でしょ。あのころは四次元にも理解が無かったしね・・・あっちで親族会議が開かれて、『ブルトンという子はいなかったものと思え』って話になって・・・けっきょく勘当ですよ」
――ひゃあ・・・昔は熱かったんですね。ブルトンさんもショックだったでしょう。
「ただまあ、勘当されたときの心境は分かりませんが、ブルトン君は本人も納得づくでの変身でしたよ。貝の怪獣じゃ地味だというのは自分も分かっていただろうし、四次元というキャラクターは今まで無かったしね・・・けっこう今でも活躍してるんでしょ?マネージャー役で」
――ええ、「異次元をつなげる」能力というのは使い勝手がいいみたいですね。設定に無理が出てきた二つのシリーズを無理やりつなげるとか、矛盾を解消するのに役立つから、ちょこちょことリング外から手を出すマネージャー役としては大人気です。
「自分も、そういう長く稼げるギミックにしてほしかったな(笑)」
――実際、はじめに「元地球人」というギミックを言われたときはどう思ったんですか?
「そりゃあもうね!まず最初に思ったのは『無理あるだろ』と。」
――あはははは。
「そりゃね。自分の顔は自分で毎日見てますからね。とにかくこっちは火焔を盛大に吐き出して、ビルを手当たり次第にぶっこわす・・・そんなキャラクターを確立しようと一生懸命だったんですから。裏切られた哀しみで、地球に復讐に来る、って、暴れるのは同じかもしれないけど、方向性は正反対といっていいほど違うわけでしょ」
―ーそりゃまあ、とまどうでしょうね。
「だけど、プロモーターが『俺を信じろ、お前なら出来る』ってしつこくてね。そこまでいわれると、じゃあやってみようか、と思うんですよ。でも、あとで聞いたら『お前は尻尾が無いから、まあ地球人に似てる』ぐらいの考えだったんですよ!!」
――いいかげんなもんですね(笑)
「だからね、自分が元は地球人だったと分かるアングルをどう描くんだ、ってところもまぁ適当でねえ・・・。あの男はリングアナとかやってたのかな? そいつが、自分をみて『あっ、ジャミラだ』って気づくって鉛筆(※筋書き)だったでしょ。おれは人間時代、どんなハンサムマンだったんだ?と思いましたよ・・・」
――たしかにそうでした。しかし、そういう矛盾を感じさせない、力強いドラマ性があったと思います。それはジャミラさんのたたずまい、動きに哀愁があったからだと思いますよ。
「そう言われると照れますね。でもそれを聞いていま、思い出したのは試合後にウルトラマンさんが同じようなこと言ってたことです。『怒りながら泣く、泣きながら怒る。それが大事なんだ。君の顔はそれにぴったりだな』ってね。言われたときはスターから言われたんで、言葉を吟味せずにただただ嬉しかったけど、よく考えると深い言葉ですよね・・・」
――あの時、異例の大ブーイングでしたけど、それに対して怒ってた、とかは?
「ぜんぜん! 『いやあ、俺も本格的にヒール転向するかね』とか上機嫌でね。ウルトラマンさんにとっても、初めての体験だったのかな。たぶんそうだよね」
―ーフィニッシュが「ウルトラ水流」というのは意外でしたが。
「あれも、元はプロモーターの無茶ぶりでね・・・『元地球人を粉々にふっとばすのは体裁が悪い』『体はそのまま、じわじわとのたうちまわるようなフィニッシュは無いか?』って言うんです。まず言ってることが相互に矛盾してますよね(笑)・・・で、たしかウルトラマンさんが『ふざけるな!俺は相手をのたうちまわらせるような残酷なフィニッシュはしない』って怒ったんだけど、ふと一転して『そういえば・・・この前ペスターのときだけに使った、手から水を出す技があったな。ジャミラ、突然だが君は水に弱いってギミックにしてくれ。それで水をかけて、君が苦しむってのでいこう!』・・・と、こうなったんですよ。あのギミックのせいで、そのあと大っぴらにプールや海に行けなくなったのは苦労でした(笑)」
――へえ、それは意外な裏話ですね。
「だけどね、プロモーターがそれで『さすがボス(ウルトラマン)だ!しかしよく、そんな小技を持ってたね』って調子に乗って言っちゃったから、『お前がコンビナートデスマッチ(vsぺスター)とか思いつきの企画やるから、その尻拭いでフィニッシュ用にこの技考えたんだよ!』とか怒っちゃってね(爆笑)。・・・あのプロモーターは悪いやつじゃないし、アイデアマンだったんだけど、往々にしてアイデアマンというのは後の始末を考えてないもんでね(笑)」
―ーわかります、わかります(笑)。ほかにあの試合で印象に残っていることというと、万国の国旗を最後に体に絡み付けて・・・評論家が、あの場面を「ナショナリズムと帰属意識、そして国に最後は裏切られることを象徴する屈指のシーン」と絶賛していました。
「評論家の言葉は難しくてよく分からないけど…たしかにあの時は元地球人になりきってたからね。『俺は地球に、国に裏切られた!』という気持ちが自然に出てきてね・・・不思議なもんだよね」
――アドリブですよね?
「もちろん。でもね。あの時、試合前にウルトラマンさん、『あの旗を一回り大きくしろ!』って命じて大急ぎで替えさせたんだって。だってよく考えたら、あの旗は確かにビルや私のサイズから考えると大ぶりすぎるんですよ(笑)」
―ーえ??そうなんですか?あとで見直してみます・・・・・・でも、その旗をどうこうというのはアドリブなんですよね?
「そう、周到に準備しておきながら、肝心の私には何も言わないんですよ。私が気づかずに、その旗を無視していればそれまで、準備も無駄になる。でも事前には、何もいわなかったんだよなあ・・・不思議だなあ・・・。」
――いやあ、必ずその旗を生かす、という確信を持ってたんでしょうね。さすがウルトラマン!、という思いを強くしましたよ。それだけジャミラさんの潜在力を買っていたんですよ!
「とはいえ…。私はその後、大活躍できたかというと、そうでもなかったですからね。やはり何シリーズも、次のシリーズにも呼ばれるには、『地底から出てきた大怪獣』みたいなミステリアス(なぞ)な部分があったほうがいいんです。いろいろローカルも回ったけど、『あ、地球に復讐にやってきた元地球人ジャミラ』は、どこでもトップをとれるというわけには行かないな、と早めに気づいたんですね。」
――うーん、そういう部分もあるのか・・・
「でも、だから自分は早く引退しようと思って、怪獣仲間のような派手な遊びもせずに少しずつ金もためて、バーテンの技術も覚えて・・・それでこの店を始めて、まあ順調にやってるんだから、良かったんですよ。ウルトラファイトとかにも誘われたけど、そっちはやらなかったから大きな怪我もなしで第二の人生を歩めてるしね。それに・・・最初も言ったけど、こんな『伝説の試合』ができる怪獣はほんの一握りなんですから。いい夢を、見させてもらいました。・・・もう一杯、どうですか?」おしまいRAH リアルアクションヒーローズ ジャミラ 1/6スケール ABS&ATBC-PVC製 塗装済み可動フィギュア
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読者のみなさまへ。過去の記事リンク
最近このブログを読み始めた人もいると思います。
で、「これはなんだ?」と言われても、こっちも困ります。
過去にこういうものを書いていたので、その流れだと言うしかありません。
■最優秀怪獣賞受賞記念・エレキングさんインタビュー
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20070804/p2
■史上最強のシューター・キングジョーさん独占インタビュー!
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20080730#p2
■レッドキングさんインタビュー
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20090906#p3
■(番外)もしウルトラ怪獣が最強決定トーナメントを行うなら、組み合わせはこうなる
http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20120328/p1
今日、この記事をアップしたのは、昨日からWOWOWでこれが始まっているから、であります。
http://www.wowow.co.jp/drama/ultra/
http://www.wowow.co.jp/pg_info/release/002121/index.php
巨大ヒーローという新機軸で、続く数多の作品に大きな影響を与えた空想特撮TVドラマ「ウルトラマン」がついにハイビジョン化!今回だけのスペシャルトークも必見!
2011年6月にハイビジョンリマスター版を放送して大好評を博した、円谷プロの空想特撮TVドラマ、ウルトラシリーズの第1弾「ウルトラQ」。それに続き、第2弾「ウルトラマン」のハイビジョン化がついに実現!全39話を一挙放送する。
1966〜1967年に放送された「ウルトラマン」は、巨大なヒーロー・ウルトラマンが防衛チームと協力して、怪獣たちと戦う物語。スペシウム光線などの必殺技や、バルタン星人、レッドキングなど個性豊かな怪獣たち、科学特捜隊のメンバーのドラマに、大人から子どもまでが熱狂。平均視聴率36.8%という「ウルトラQ」を超える大人気を博し、特撮ヒーロードラマの金字塔となった作品だ。
今回の一挙放送では、毎日の1話目の冒頭と最終放送話の最後に、スペシャルトークコーナーを放送。「ウルトラマン」に並々ならぬ想いを抱き、現在は各界の第一線で活躍する“ウルトラマン世代”のトップランナー達が、「ウルトラマン」出演者・スタッフと対面。熱いトークを展開する。
この後、冬にはウルトラシリーズ第3弾、「ウルトラセブン」のハイビジョンリマスター版を放送。さらに2013年には、なんと「ウルトラQ」の新作シリーズを新たに製作するプロジェクトが決定した。円谷プロとWOWOWの壮大な計画「円谷プロ×WOWOW ウルトラ三大プロジェクト」が今、スタートする!
なお、「ジャミラにインタビューしたら?」という案はid:washburn1975 氏の示唆によるものだということを記し、感謝したい。だがしかし、「元地球人というギミックを急に演じることになった怪獣」というネタは、正直斜め上をいった自信がある(笑)
これらはキラー・カーンの回想や、カルガリーで修行した際にインディアン、モンゴル人、べトコンなどさまざまに”変身”させられた日本人レスラーのインタビュー・・・または
- 作者:ヒラマツ ミノル
- メディア: コミック
また、「ジャミラが体に巻きつける旗は寸法の比率上、本来ありえないほど大きい」といった小ネタは
- 作者:実相寺 昭雄
- メディア: 文庫