http://mainichi.jp/opinion/news/20120703ddm003070079000c.html
自分の年齢の半分にも遠く及ばぬ若者に、こつこつ積み上げてきた生き方を否定され、不信の目さえ向けられる。
身につまされはしないだろうか。東京などで公開され、評判のフランス映画「キリマンジャロの雪」だ。
描かれる仕事一筋にきた初老の男の失意と、格差社会に募らせる若者の怒りは、今、遠い国の絵空事ではない。
舞台は南仏マルセイユ。
造船所で働くミシェルは50代で職場の労組委員長だ。不況で20人の削減を受け入れざるをえなくなり、彼は全員平等のくじ引き方式を選ぶ。委員長なら自分をあらかじめ外すことができたが、彼はせず、結局引き当ててしまう。
そんな夫を妻は「ヒーロー」といたわる。既に自立した子供らは金を寄せ合い、2人にアフリカ・キリマンジャロへの旅費と切符を贈る。
よき家族、よき仲間。つましくも幸せな老後生活が始まろうとした時、押し入った覆面強盗に旅費を奪われる。
捕まった犯人は職場の元同僚で、くじで職を失った22歳のクリストフだった。身勝手な親から見放され、まだ幼い弟たち2人を育てている。
警察で面会したミシェルにクリストフは、個別の生活事情を考えないくじ方式をなじり、あんたは会社から裏金をいくらもらったんだ、と不信の目もあらわにあざける。
ミシェルは衝撃のあまり・・・
そういえば、「築地魚河岸三代目」の主人公も、あんなノー天気な婿養子に見えて、実はたいへんな切れ者として銀行(だったかな?)のリストラ部門を担当、そのリストラが終わったときに、自分もリストラメンバーの一人として自発的に退職する・・という前歴があったと思う。
これからヨーロッパの不況やイラン原油禁輸など、いろいろとあるが・・・雇用はいつの世も一番の問題だ。
日本を海外が肯定的に評価する際、治安を含め「とにかく社会が安定している、安心できる」というふうに言われることが多いように感じるが・・・その中核は、おそらくなんだかんだの批判や数字の不備に関する指摘を浴びながらも存在する「失業率の低さ」にあるような気がする。(これは思いつきだが)
それはともかく、
「キリマンジャロの雪」か。ヘミングウェイの小説の映画化じゃなかったのね。
予告編を見たら、MASTERキートンのようなテイストを感じた。