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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

「戦極育成選手・アマ修斗大会活用騒動」をあらためて競技論から考える

(1)「アマチュア修斗は公共物ではありません」
http://blog.livedoor.jp/shooto_column/archives/697144.html

アマチュア修斗日本修斗協会の認可の下に行われている格闘競技です。(略)
 個人的にはより多くの競技者にアマ修斗を経験してほしいし、他プロモーションを目指す選手にも遠慮無くアマ修斗の試合で経験値を上げて欲しいと思っています。ただ協会役員という公式の立場から発言させていただくと、少なくとも修斗以外の興行で活躍する選手の育成を目的にする積もりはありません。
 「修斗」は…(略)…登録商標です。…(略)…権利者に無断で他者が自分の商売に使用することは、法律上許されないことなのです。
 (略)
対応策として「戦極育成選手の公式戦出場申し込みは一切受け付けない」ことを考えざるを得ませんでした。

(2)「戦極育成選手トライアウト告知のアマ修斗無断使用表記に関して」
http://blog.livedoor.jp/shooto_news/archives/51456526.html

…「戦極」を開催する株式会社ワールドビクトリーロードが発表した「戦極育成選手トライアウト」募集要項において、その育成方法として「アマチュア修斗で経験を積ませる」事が日本修斗協会への事前の申し入れのないまま無断で告知される事態が発生。
 日本修斗協会はこの件に関し、厳重に抗議。ワールドビクトリーロード國保尊弘より謝罪および経過説明があり…(略)…意見交換の後に合意がなされ、日本修斗協会常任理事会もこれを承認。


まだ時間も経っていないのに、修斗ニュースコラムや記事を再び引いて話題にするのはなかなかにチャレンジャーだと読者は思われるだろうが(笑)、まあ萎縮しても仕方ない。引用の分量と、本文との「主・従」関係に気をつければいいだけのこと。TBも送る(連絡する)しね。

「別競技」論

さて、当方がこの話を聞いて思い出したのはまだPRIDEやパンクラスと交流するかしないかとかそういうのが話題になっていたころ…だから2000年前後だと思う。若林氏ではなく黒豹・坂本氏が明快に語っていたのだが
修斗は、修斗のルール内で行われる一つの競技。あなた方はテニスの協会に『バドミントンとの交流戦をしないんですか?』とは聞かないでしょう」(大意)

という返答に、そういう視点がなく、まだ「NHB(当時)という大きな枠の中に、いろんな格闘技団体が修斗も含めてある」というイメージがあった自分には印象深いものだった。

「ひとつのルールに沿って競う」という立場に立つため、修斗といえば切っても切り離せない「VTJ」における数々の激闘も、この観点からすれば「それはまた別」となり、例えばこの大会の常連ジョン・ホーキもプロ修斗戦績としては四戦。VTJの戦績は別扱いなのだ。

http://www.x-shooto.jp/profile/j/joaor.html
http://mma.client.jp/JOAO_ROQUE.html



じゃあ修斗で鍛えた選手がPRIDEやDEEPやDREAMで活躍するのは何か、といえば、逆に上の理屈を敷衍すると「バックボーンの一つ」であるということになる。中学でサッカーをやってた選手が、たまたま陸上競技に出たら才能あったよ、いい成績だったよとか、ロードレーサーが競輪でもいい選手になった(朗報! 石渡治の「オッズ」はYSから週刊アクションに移籍し連載続行!)とか、柔道の選手が部員の足りない相撲部に助っ人参戦、個人戦にも出たらインターハイ5位に…とかと同じ、だろうかと。


格闘技だって多分同じで
「あの選手はレスリングやってますからねー。タックル上手いですよ」
「あの選手はマラソン大会にも出てるぐらいですからね。スタミナ抜群です」
と同様に
「あの選手は修斗もやっている(やってた)ぐらいだから、打投極うまいですよ」
というふうにみてしかるべきだ、他競技…じゃないや、他の「イベント」に際しては。(「イベント」と「競技」の使い分けも坂本氏のインタビューで最初に読んだ気がするなァ)


「参加の動機」は問われるか?

さて、
マチュア
がある。(意味無く司馬遼太郎風)

マチュアのスポーツにはいろんな競技団体がある。
財団法人・日本体育協会 ( http://www.japan-sports.or.jp/ )の傘下にあるものの場合は税金を使っているから、やっている人の勝手次第とはいかない(実際にはなっているパターンも多い)が、そうでないものは、まあ主催者が決めることは、論評は別にしても 最終的には彼らが決めるのは自由だ……ということを大前提にしたうえで。



そもそも、スポーツをやる動機ってのは星の数ほどある。
健康づくり、
弱気な自分を変えたい
友だちがやってたから
熊を倒す

etc。

スポーツをただやるだけではなく「大会に出る」とモチベーションも多種多用だろう。
純粋にこの競技で頂点に立ちたいぜ!という人もいれば
「クラスのマドンナ(死語)、お花ちゃんを賭けて勝負だ!!負けたほうはお花ちゃんを諦める!」「おお上等だ!」ってのもあるだろう。
「この五輪で一生懸命泳いでメダルを取って、それを足がかりに女優になるわ!」(あの人、いまどうしてるんだろう?)


また同一競技の中で「アマでメダルを取って(経験をつんで)、それを生かしてプロに!」というのもありますな。カシアス・クレイじゃないけどボクシングとか、野球のノンプロ経由→プロへってのもそうか。


この場合、一般的なアマチュア競技においては「その競技(大会)への参加目的が何か」は、基本的に”関係ない、関知しない”というところが多いんじゃないだろうか・・・というのが、ひとつの当方の推測。
(ここから仮定の話です)
そのへんの市民マラソン大会(立派な競技です)に「プロ格闘家を目指す若者の、体力づくり・スタミナ養成の一環として集団で参加したいんですけどいいっすかね?」というふうに言ったら「はあ、まあそれはそちらのご自由で。前の走者を殴ったりしなければ別に問題ないですよ」というふうになると思う。(あとで確認してみましょう)

石井慧も、結局はそのままプロ転向が決まったが、「将来の夢はプロ格闘家。その経験、基礎として柔道をやっています。近日転向します」と公言する若き実績十分のアマ柔道家が、それを公言しつづ出られるか。
しがらみ、圧力で出られないかもしれない・・・が、その際、理屈・正論としては「それで出られないのはおかしい」ということになるんじゃないだろうか?


「将来、戦極のリングを目指す若きスポーツマンが、その経験を積むためにアマ修斗のリングに参加します」というのは、修斗と他のMMAが「テニスとバドミントンほどに違う」ものだとしたら、実は問題になり得ないのではないか。
「宣伝に使うのが問題」という部分かもしれない。例えば最近、とみにリアリティ・ショー的になっているお笑い界では「あのXXXがマラソン大会に挑戦!!」とか「○○○、ボクシングライセンス取得への道」とかってのもある(あり得る)そういえば「リングの魂」で芸人が柔道の講道館黒帯を取るまでをやっていたな。
これらは協会とか、主催団体に事前に連絡、許可を取っていたようだ…だが、これらはいずれも「テレビ撮影の許可を取る」ために連絡の必要もあるわけで、そういうのが全く無かったところで、勝手に「○○がXXXに挑戦!」とやって、実際にその大会に出場したり試験を受けるのは、たぶん「宣伝に使われて不愉快だ」と主催者が思ったとしても止められないんじゃないだろうか?

それは逆に、競技であるがゆえに。


また、実績をそこで上げたら、仮に修斗登録商標であっても「アマ修斗王者ついにデビュー!」とうたっていいように、実際に目指すんなら無断・挨拶ありに関係なく「目指せアマ修斗」とうたってもいいと思う(このへんは法律的にどうなんだろう。「めざせM-1王者!」とか『「お笑いスター誕生」でおなじみのマギー司郎、ついに「知床お笑い・わんぱくフェスティバル」に登場』とかと同じかな、とも思うのだが)


「同じMMA」だからこそ問題?

実はもっと単純な話で「戦極育成選手がアマ修斗で経験を積む」というのが問題になったのは、「現実的な状況を見れば『戦極』のリングで行われていることと、修斗のリングで行われていることは、完全に同じでは無いが非常に似通った『MMA』という同一ジャンルのものだから」なんだと思う。
テニスとバドミントンの喩えも古い時代の話で、それから数年後にアマ修斗を経なくても、他のリング(競技かイベントかはいろいろある)での”実績”を考慮してライセンスが取得できるようになり、この前も小見川道大が参戦したことは記憶に新しい。
同じMMAだからこそ、戦極のリングの主催者と修斗協会は組織的なつながりを持たなければいけなかった、と言えると思う。


まあ今回の結論「プロ修斗の共催」「アマ修斗への協力」((2)より)

1)ワールドビクトリーロードは株式会社サステインとの共催で、2010年よりプロフェッショナル修斗公式戦を行う。

2)これに先駆けてワールドビクトリーロードは、2009年のプロ修斗公式戦、およびアマ修斗への開催協力を約束する。

によって、上の問題の根本が理屈として解決できるのかというとまだ未解決の部分が残っていると思いますが、ただ大会の参加資格を決めるのも主催者権限だから、「戦極育成選手の参加禁止」という規定をつくるのも最終的には自由。
今回は、そういう点で落ち着くべきところに落ち着いたのだと思う。

備考

【他競技】
柔道大会の参加資格というのもちょっとよく調べないとだめかもしれないが、吉田秀彦や、一度警官になろうとした青木真也が柔道大会に参加できるか?という話があったよね。ただあれは「プロ」の問題か。戦極育成選手はその時点ではプロじゃないしなあ。やっぱりややこしいや。プロレスラーが柔道大会に出るなんてことは昭和の御世にはなかったろうから、そもそも問題以前で。


アマレス界は谷津嘉章参戦時から、山本KID徳郁参戦までプロレス含め問題なしか。


ああ、だいぶ長くなっちゃった。