いまだに少々、膨大な量にしんどさを感じつつも呼んでいる格闘技雑誌。
リニューアル格通、業界全体のパイも小さくなったがゆえの隔週から月刊化という面は否めず、ああ、月刊誌になったのね、というレベルでスルーしようとしたのだが、それを購入させたのはミノワマンvs鈴木みのるの対談と、この桜庭和志コラムだった。
これが直筆文章か、インタビューの再構成かは置いておいても味わい深いフレーズが並ぶ。
心が強い人間は、やっぱり心が強い人間だからこそ可能な試合をする。逆に心が弱い人間はそれなりの試合しかできない。相手をフェイントで騙せても、そこでは自分にウソはつけない。格闘技はまさに精神のストリップショーなのである。
試合中、ぼくは相手を憎んだり、恨んだりはしていない。(略)憎悪の念は抱いていない。楽しいとか怖いとか悲しいとか、そういった感情もわいてこない。どうやってこのガードを崩そうか、どうやって懐に潜り込もうか。リングの中での僕の頭は絶賛思案中。例えるならば、難しいテスト問題を解いている感じか。一本勝ちという回答にたどりつくためにひたすら集中。
ぼくとヴァンダレイは3回も心の中を見せ合った。Koされたのでまったく覚えていないが、そのときヴァンダレイはぼくに向かって「マイフレンド、マイフレンド」と話しかけていたらしい。(略)
ぼくは口下手で、子供のころは決して友だちが多いほうではなかった。(略)しかし、格闘技に就職して、試合を積み重ねていくことで、世界中に友だちをつくることができた。(略)もしかしたら、ぼくは友だちをつくるために格闘技をはじめたのかもしれない。闘いの中で、友だちを増やしたかったのかもしれない。
(略)もう少し、あと少しだけ、僕は友だちを増やします。だからこそ一戦一戦、完全燃焼していきたい。(後略)
二番目の引用部分で、このカール・ゴッチの言葉を思い出しました。
http://www20.tok2.com/home/gryphon/JAPANESE/BBS-SELECTION/Gotch.htm
(闘いの心構え)
「勝ちたい、という気持ちさえ、闘いにおいては邪魔になるのだ。その瞬間、もっとも効果的な技を出すことだけを考えるんだ。勝利はその結果として、天から与えられるものに過ぎない。」
UWFインターってゴッチイズムを相対化しようとしてダニー・ホッジやルー・テーズを招聘しイコンとしたのだが、くしくもゴッチイズムを桜庭が(笑)というより普遍的な話なんだろうな、この部分は。
あ、そうそう、この言葉は夢枕獏氏が、餓狼伝で「堤城平」というキャラクターを作る時のモデルとし、作品中にも出てきているはずだ。
、
前田吉朗
変な悔しさは無いですよ。たぶん、それえはトーレスが気持ちのいいヤツだったからでしょう。僕も思う存分殴ったし、ミゲールにも思う存分殴られたし。気持ちよく、しばきあったなっていうのがあるんで。むしろ尊敬の気持ちがありますね。もっとアッサリしていると思ってたんですけど、背負うものの大きさとか、そういう人間の強さで戦ってきたんやなという感じだったんで
ついでに稲垣克臣代表のコメントを
「悲壮感がなくて申し訳ないですけど、吉朗は『赤字だ赤字だ』と叫んでました。というのも、ベストバウトのボーナスをもらわないと税金で30%、メディカルチェックで700ドル、ライセンス発行で200ドルと引かれていくんですから(要約)」
いかにも典型的大阪キャラクターでよろしい(笑)。
そして、試合後二人は再び会って談笑、一緒の写真に納まった。
これがその写真( http://inagakigumi.com/ より)
顔の切り傷や腫れを抱えた(というかお互いがつけあった)二人が、笑顔で記念写真を撮る・・・・古いファンは、2000年のUFCで高阪剛とバス・ルッテンが同じように記念写真を撮った一枚を覚えているかもしれません。
あれは本当にいい写真だったな。格通にも週プロにも乗ったと思う。
ネット上には見つからず、ちょっと探しているのだが、第何号か分かる人は教えてほしい。
今回の試合は、「21世紀の高阪vsルッテン」だったのだ。
何を書くかより、何を書かないかでその雑誌が分かるものだ。
この、吉朗の挑戦を退けたミゲール・トーレスのインタビューは各誌に載っているのだが、これまであまりインタビューがないこともあって、生い立ちなどを語っている。メキシコ系としての誇り、ガレージでの独学で学んだファイトスタイル、バーでのファイト・・・など興味深い。
ゴン格は前田との防衛戦の後のインタビュー、kamiproは前日のインタビューという違いはあるのだが、凄いのは後者。
日本人に興味はあるか?というテーマで山本KID徳郁は当然として、今成正和、所英男のことまで聞いている(ミゲールは、今成は「トリッキーでいいファイター」所は「ホイスと試合した選手だね。所がどうこうより、ホイスが全盛期を過ぎた感じだった」との評)のだが、翌日にタイトルマッチを行うはずの前田吉朗について聞き手がほんっとに一言も聞いてない(もしくは聞いたけど構成で全カット)ところがいさぎよくてすばらしい。
何しろ同誌に何度も寄稿し、携帯サイトに連載も持っている高崎計三氏が「kamiproはパンクラスが嫌いのようですね」と聞かれて「編集部全体がそんな感じです」と断言するぐらいなのだ(爆笑)。
ウソと思うなら彼のブログで聞いてみたまへ。
http://www.plus-blog.sportsnavi.com/solitario/
昨日、雑誌に党派性があるなら、それも個性になる、というような話を書きました。(DEEPの佐伯繁氏は「団体ごとのルールは個性」と話していましたね)
kamiproのパンクラス嫌いもこういうところまで徹底すれば、ひとつの個性になる・・・のかな?
かなり適当に言ってます。