まったく愚かな話ではあるが、今月前半にこのインタビュー記事を読んで「むちゃくちゃ面白い!紹介せねば!」とずっとパソコンの前に置いていたのだが、どうもそのまま忙しさに紛れて書けなかった。
そしたら本日は11月30日、このブログを読んだ人のだれかが本屋に行ってページをめくろうと思っても次の12月1日にはもう諸君!は次号が出ているんだよ。
まことに申し訳ないが、今日の間に書店をのぞくか、またはたいていこの雑誌は図書館にもあるからそこで読んで欲しい。
高橋氏というのはこの記事によると大蔵官僚から竹中平蔵の補佐官、内閣参事官となった人で構造改革の中で、いわば実際の戦地で砲煙弾雨の中、軍団の指揮を取ったような人なのである。
大所高所から、構造改革の罪、または功を語る記事や主張は多いが、現場の中でどんな議論があり、どんな攻防があったのかを知る機会はめったに無いから興味は尽きない。
特に自分が注目したのは、高橋氏が猪瀬直樹の知恵袋となって、道路公団民営化に関わった経緯だ。猪瀬の道路改革論・・・「日本国の研究」から続く一連の著作・・・は、自分にとっては官僚が都合の悪いことを、ある”トリック”を元に隠したりミスリードしたりする(全くの嘘データは出せないというルールもある)。それを民営推進側が見破っていく、という「上質のミステリー」として楽しんだ。
その、「トリック」と「暴く筋道」を実務的に見立てたのは、実は高橋氏だったというのだ。
たとえば道路公団は「債務超過」か「資産超過」かという、正反対の議論がなされた。
そこで高橋氏は「少なく見積もっても2,3兆円の資産超過です」と結論した。それはどういう計算に基づくもので、債務超過説の計算とどう違っていたのか? それは実際に読んで欲しい。けっこう単純だが、効果的なトリックだ。
また、これとは別に
国交省が錦の御旗にしていた5000本もある路線ごとの需要予測の方程式の誤りを指摘したときは、「どうして猪瀬さんが、道路需要のモデル式なんか知ってるの?」と不思議がっていたみたい(笑)。あとになって私が手伝っていると気付いたみたいですけど。
とも回想している。猪瀬はいばりんぼだから黙ってたのかもしれんが(笑)、こういう人を見つけて交流し、協力を仰いだこと自体がすごいんだよな。
この後もなんだかんだ、デフレ解消論や郵政民営化闘争が続き、また財務省が本当に怒ったのは「財政融資資金特別会計から一般会計に拠出する」という話だったんだという。何のことかよく分からんが。
最終的に高橋氏を、某財務省高官は名指しで
「高橋は三回殺しても殺し足りない」
と罵倒したという。いや、かっこいい台詞だなあ。あとで何かに使いたいや俺も。
そしてこれは、実は言われた高橋氏にとってもさらにかっこいいというか、財務省高官からここまで言われたというのは皮肉抜きで”勲章”だと思う。
そして、安倍政権の挫折で、高橋氏は官の世界にも当然戻れず、去っていくことになる。
面白いことに、実は彼は数学畑から経済学、財務省の世界に入ってきた人でアメリカ留学経験の長い、異色官僚だったらしい。面白いときに、歴史は面白い人を得たものだ。
もちろん、これは高橋氏という人をまるっきり知らなかった素人が、インタビューを読んで「おお高橋おもしれーな」と無責任に感心しただけ。「殺し足りない」とまで批判する側には、高橋氏がけしからんというロジック、反論があるのだろう。それなら、それをぜひ読んでみたいので出てきやがれ、だ。
インフレ論にしてもその通り。
なんと、このインタビューは20ページものスペースをとって掲載されている。
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