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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

「へうげもの」

昨日書くつもりだったが無理でしたのでこっちに。
本能寺の変」、すなわち明智光秀の叛乱が、何らかの裏があるのでは・・・・・というコンセプトは、フィクションはもとより真面目な研究もふくめてかなり多い。というか、いまだに明智光秀が突然主君殺しに踏み切った理由が不明なのだ(いじめ云々といったエピソードはほとんどが後世の創作であることはもはや共通認識)。
だから、秀吉が明智を扇動すると言う展開も、虚実を行き来する戦国異説としてはさもありなん、といったところであろう。

それに一味を加えたのがその前の週、秀吉をさらに先導したのが千利休だったという枠組みだ。そして、その理由というのはなんと「派手で豪壮華美な美を好む信長が天下を握っていては、侘びさびを至上とする、自分の考える『美』が日本を制覇することができないから」というものだったのだ。

そういえば、「ギャラリーフェイク」にも外国の人間が「日本の文化はこじんまりと美しいが、悪く言えばスケールが小さい」といわれたフジタが「知ったかぶりしなさんな、この田舎っぺい!」と一喝、安土桃山の屏風絵を見せて「ここには宇宙がある!」と脱帽させる、という回がある。
でもその絵はキン,キラキンの黄金作りではなく、黒一色の墨絵だというところが二重三重の奥の深さなのだが。


その「黒」・・・・・一色ゆえに、全ての色を内包するそれこそが利休の美の真髄らしい。利休初登場の回で、織田信長の誇る軍船に「一切を黒く塗ればよろしいかと」と提案、信長に「なるほど、黒は相手を威圧する死の色だから軍艦にふさわしい」と採用される、というエピソードが、今につながる伏線だったわけだね。
(つまり、信長ですら利休の真の美意識をつかめず、その程度の認識に留まった、ということが後につながるのだ)


その折、http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20050928#p2
にも書いたけど、「政治と芸術」「美と俗」の相克を描くとき、たいていの作品は「政治が猛烈に美を侵略しようと攻めてくるのに対し、芸術は誇り高く立ち向かう」というパターン。しかしこの漫画では、千利休の大胆な態度によって「美が政治に攻め込んで、屈服させる」という奇想天外なる展開を見せます。



余談ながら、小生はかつて金日成から金正日に代替わりする前、この奇矯な二代目独裁者の「映画好き」「芸術指導」ぶりが伝わった際にこういうシノプシスを思いついたことがある。

「芸術至上主義で、映画のためならどんな常識ハズレのこともやってのける映画監督(黒澤明フランシス・コッポラを連想せよ)がいる。彼はレニ・リーフェンシュタールの『意志の勝利』や『民族の祭典』を崇拝し、自分も独裁者のための一大ページェントを記録映画にしたいと公言、顰蹙を買っている。


その隣国に、自称大芸術家の独裁者がいて(モデルは(以下3字抹消))この話を聞きつけ、監督を招聘(拉致でもいいんだが)。監督は国内の猛烈な批判などおかまいなしで早速この条件に飛びついた。
強烈な個性の二人は対面するが、案に相異して映画オタクの二人は意気投合、監督は独裁者の許可を得て、式典のために無尽蔵に予算も人員も権力も振るえるようになった。


だが撮影が半ばを過ぎたとき、監督は『俺の美意識では、式典の中心になる独裁者があの醜く太った男では傑作にならん』と発見、監督はなんどクーデターによる政権交代を準備する・・・・」

まだまだ北朝鮮タブー健在なころの話で、小説やらにする気もなかったからそのまま脳内にお蔵入りしていたが、最近の「へうげもの」の展開で思い出したので一応字にしてみた。
あとお蔵入りしたのには一つ理由があって、星新一を読み直したところ、もっと日常的なスケールで、このストーリーを先取りしたショートショートがあったんですよ。ネタバレになるから題名などはいいませんけど。
見つけたときはがっかりした半面、例えば親父がまだ腕相撲などで自分より上だったときの息子が感じるような、「やっぱり親にはかなわないな」てな嬉しさがあった。
やはり星新一らが、自分のセンス・オブ・ワンダーを規定しているのだ。
いやいや余談余談。



なんにせよ、「へうげもの」はこれから当分の間「いかに秀吉が明智光秀を誘導し織田信長への叛乱を起こさせるか?」がポイントとなって展開していくと思うが、そこに古田織部がどう関わっていくのか。
今の段階では本質に関わらないコメディ・リリーフの役しか担えないかもしれないけど、注目しましょう。