マンガ学への挑戦―進化する批評地図 NTT出版ライブラリーレゾナント003
- 作者: 夏目房之介
- 出版社/メーカー: NTT出版
- 発売日: 2004/10/01
- メディア: 単行本
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二冊の新刊を買ってきて、一気に読んだ。前者はあしたのジョー、巨人の星を再び週刊誌化した際に、夏目氏が関係者に行った貴重なインタビューを収録している。その関係で「梶原一騎」が大きなファクターだ。
ここも一応格闘技関係ブログですので、梶原一騎というファクターは大きい(この日記を検索してみて)。アントニオ猪木の、フィクションの中の推移に興味があるという話はしたっけ。
これは後日、というか長期のテーマだ。
別の位置から「梶原一騎」という謎に挑んでいるフリーライターにしてB級漫画コレクター・吉田豪氏と夏目氏が会ったら、面白い化学反応が生まれそうだが。
また、面白いのは夏目氏が「深読み」の最終章で、今までの自分のマンガ評論を振り返り、半分おもしろエッセイだった時代や、黎明期に蛮勇を奮って提示した「大胆な仮説」に関し、今の研究水準から修正すべきを修正していることだ。
それも若手の研究者の厳しい批判を引用して、それを受け入れることを明示している。
これはなんともフェア過ぎで、あまり具体的に言えないが、ある種のもっと”高級”な学問分野ではこんなことはあり得ないぞ。
その内容に関してだが、ざっと乱暴にまとめると、日本のマンガ隆盛を「日本の固有文化」と結びつける内容は適当ではないだろう、というのが氏の現在の立ち位置だ。
私がこのへんで思い出すのは、先駆けの先駆けたる呉智英「現在マンガの全体像」で、マンガの構造を「膠着語」の類似例として論じた話だ。わたしは膠着語という用語をこれで始めて知った(笑)。
その他、養老孟司氏が、漢字かな交じり表記を「絵と吹き出し」に対応させているし、夏目氏もそれらを取り入れていたはずだ。
しかし、「諸外国だってマンガ文化を受容している。文化特殊論はおかしい」という批判が出てきた・・・というのが見取り図のようだ。
どうなのかね?ちょっと気になるのが、
「きっかけは特殊文化由来、その後イイじゃん!と他文化の国が採用」ってのもけっこう多くない?
コーヒーも煙草も。「風雲児たち」の受け売りだけどジーンズなんかも、現地ではそれなりの意味があって生まれたんですよね。その後各国に受容されたとしても、(あと、他国でも多少の例があったとしても、きっかけのさらにきっかけは輸入文化だったとしても)、固有の文化が張り付いている、ということもある。
マンガ論はさらに研究の余地があるフロンティアだ、ということはよく分かった。
ところで、夏目氏を徹底批判した若手は宮本大人氏という方らしい。著書はあるだろうか。
http://www.ringolab.com/note/natsume2/archives/002438.html#more
あ、そうだ。夏目氏のブログは一度移転している。左のアンテナが動かないので
「忙しいのだろうか、全然更新が無いなー」と思ったらそういう仕掛けだった(笑)。
同じ間違いをしている人もいるだろうから変更を。