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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

「武の世界」とは何か?を端的に描く漫画「アグネス仮面・天地拳編」。ヒクソンもLYOTOも超えて

最新号のゴン格・kamiproが、ともにかなりのスペースを割いて「武道」を特集してます。

GONG(ゴング)格闘技2009年10月号

GONG(ゴング)格闘技2009年10月号

ヒトラースターリンが正反対の方角から同じ地点に至ったように(笑)、この両誌が同じテーマを扱うというだけでアレなのですが、kamiproは小さな旧版時代の「神秘とは何か?」(もう知る人も少ないだろうが、古本屋で見たら購入の価値あり)にも大きくかかわった大槻ケンヂ氏が


「山の中ならヒクソンに勝てる」(ネイチャージモン)とか「目隠しで戦え」(龍飛雲)


などの「ずらしての最強論」という、大変重要な概念を提示した。
その直後に「うちは目突きと金的を極めて真の武道に到達した」という、活断層並みのずらし方をしている骨法が登場するというすごさです(笑)
あと、夢枕獏の「空手道ビジネスマンクラス練馬支部」などの名台詞、名エピソードの多くが大道塾の加藤清尚に由来することを獏さん本人の口から聞けてよかった(どこかでこれは既に読んでたかもしれないが)


ゴン格のほうはゴン格で、町田嘉三(LYOTOのパパイ)の空手や武道的に見た藤原敏男のすごさ、盧山初雄のローキックの神秘、を散々書いたあとで


武道にはあってスポーツに無い、って言い切れるものなんて無いんじゃないですかね?


中井祐樹が盛大にちゃぶ台をスイープ、いやひっくり返してるし(笑)
ウオー(ノ-o-)ノ〃┻━┻


アグネス仮面」の、武道論のすごさ

さて、そんな武道論の一典型として紹介したいのが、タイトル通りの「アグネス仮面」だ。「ヨリが飛ぶ」「REGIEE」などのスポーツ漫画で活躍、今はゲッサン新撰組沖田総司)の物語をかいています。


アグネス仮面はギャグ的なプロレス漫画でして、
「プロレスラーが自称するギミックって、はたから見れば間抜けだよね、矛盾もあるし」(※そもそもタイトルの「アグネス仮面」は、「アマゾン仮面」と間違えて付けられた、というオチ)
アントニオ猪木ってけっこういい加減な人でなしじゃね?」
「プロレスラーもある意味会社に勤めるサラリーマンだよなあ」
というのを、すべていい意味で「誇張」しまくることで爆笑のギャグにしたものです。と同時に「受け」るプロレスラーの凄みなども描いた、なかなか類書のない作品です。


で、上に描いたようにここにはアントニオ猪木がモデルのラスボス的人物、マーベラス虎嶋がいる。
漫画の中での「アントニオ猪木」像の変遷と拡散は、それだけで深く研究すれば漫画文化史を切り取る一つの材料になるだろうと思っている。
※漫画の長島茂雄を研究した

笑う長嶋

笑う長嶋

なんて本もあるんだよ。

ただ、それはいつかの宿題とするとして、猪木がモデルの人物が出てくれば当然、ウイリー・ウイリアムスと大山倍達がモデルの人物も出てくるさ。魂の因果律です。
むろん彼らは、地上最強はプロレスだと名乗るやからは許せん!と挑戦してくるのですが、それに先立ち大山モデルの人物が、ウイリーモデルの人物に最強武道「天地拳」の”極意”を伝える場面がある。
この場面が、格闘漫画や小説の架空名勝負ベストテンに入ろうかという傑作なのです。拳児ホーリーランド空手バカ一代六三四の剣も、ここまでは到達していない。というかその先すぎる。バキにはちょっと類似の部分がありますか。



■組み手の前に、膝を突いて深々と頭を下げる師匠に、慌てて自分もそうする弟子。そこから・・・


■そこでいきなり禅問答。


■「宇宙、それは無限」とかなんとか言い始めた師匠。そして再度問う。


■日本を学ぶなら「空気」を読むという難題に挑戦しなければいけません。


■極意キターーーーッ!!


ということで、結局一回もコンタクトしないまま、おしまい。

この後も、この大山モデル氏は、分厚いプロレス道場の看板を叩き割れるか? 人間を吹っ飛ばせるか?などで典型的な、大槻ケンヂ言うところの「ずらし」を連発します。
しかし、実際に武道はこういうずらし、ハッタリ、精神論、禅問答的神秘主義・・・いわゆる”達人は保護されているっ!”問題を抱えつつ伝統を保ってきました。その一面を、こんなに面白く表現した「アグネス仮面」、あなどれないでしょう。


これは6巻のエピソードです。
http://www.7andy.jp/books/detail/-/accd/07148621

アグネス仮面 6 (ビッグコミックス)

アグネス仮面 6 (ビッグコミックス)

現在、作者が連載中の新撰組も、まだ沖田・土方・近藤勇町道場時代の話で、このパターンに類似した「江戸剣術のハッタリ・自己宣伝合戦」に切り込む気配も感じられて面白いものです。


おまけ・中井祐樹の「武道にだけあってスポーツには無いものってあるのか?」に答える。


武道にあって、スポーツには無い
垣にはあって、柵には無い
売りにはあって、買いには無い
未完にはあって、完結には無い
無しにはあって、在りには無い(哲学的だな、なんか)
suicaにあって、PASMOには無い


なつかしいネタだなあ。まだ子どもたちの間でははやってたりするのだろうか。

そうかWWⅡは開戦70年か。ナチスと(スターリンの)ソ連は同列に扱っていいか悪いか?

ノモンハン事件も70年で式典があり、この前開戦の9月にも記念式典があった。
その時以来、ほうこれはどうなんだろうと思っていたのですが、各紙が取り上げたのでいくつか転載したい。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2009090202000065.html

独の侵攻から70年のポーランド 歴史認識めぐり不満 トゥスク首相『ロシアにも責任』

2009年9月2日 朝刊

 【ベルリン=弓削雅人】第二次世界大戦の戦端を開いたナチス・ドイツポーランド侵攻から七十年目にあたる一日、同国北部のグダニスクで、メルケル独首相やロシアのプーチン首相ら各国代表が出席して記念式典が開かれた。不戦の誓いをうたい上げたが、ポーランドは「ロシアが侵攻の歴史を正当化しようとしている」と猛反発しており、七十年たった現在も解けない国民感情のもつれが浮き彫りになっている。

 式典前、ポーランドのトゥスク首相は「誰に責任があるかを忘れてはならない」とドイツ、ロシアの双方の責任に言及。カチンスキ大統領も「背中から刺された」と旧ソ連の侵攻を厳しく批判した。大戦時、ポーランドは、将兵らが旧ソ連軍に大量虐殺される「カチンの森事件」を経験しており、強い反ロシア感情が今も残る。

 これに対し、プーチン首相は独ソ不可侵条約についてポーランド紙に「道徳的には容認できない」と語る一方で、「当時、英仏もナチス・ドイツと融和的な協定(ミュンヘン協定)を結んでいる」とも指摘し、ロシアの立場を正当化した。

 ロシア国内には「ソ連は欧州をファシズムから解放した。スターリン主義とナチズムを同一視する主張は歴史の歪曲(わいきょく)として許されない」という意見が根強く、今回のプーチン首相の式典参加も「歴史の歪曲と戦うため」と受け止められている。

 プーチン首相が独ソ不可侵条約を「不道徳」と認めたのは異例だが、ポーランド国内で反ロシア感情がさらに高まれば、米国がポーランドで進めているミサイル防衛(MD)施設建設計画への支持を拡大させてしまう懸念があり、国民感情に一定の配慮を示す必要に迫られたとみられる。


ほんとは全紙資料として転載しておきたいのだが、そうもいかないか。

http://sankei.jp.msn.com/world/europe/090901/erp0909012046005-n1.htm

・・・プーチン首相は共同記者会見で「ロシアとポーランドの間には検証を要する歴史問題が存在するが、両国はそれを乗り越え、未来に向け問題を解決すべきだ」と語った。ポーランドカチンスキ大統領は70周年を前に「われわれはナチスと戦っている最中に背中を刺された」とソ連ポーランド侵攻を非難。トゥスク首相も「先の大戦の正直な記憶なしに世界の安全は保障されない」と、スターリンの戦争責任に言及した。

 旧ソ連圏・東欧諸国では、ロシアへの警戒心があらわになっている。開戦70年に合わせ、欧州安保協力機構(OSCE)は7月、「大量虐殺などを犯した点でファシズムスターリニズムは同等」とする決議を採択した。これに対し「ソ連は対独戦で2700万人の国民を失ってまで欧州を解放した」という立場のロシア側は猛反発。メドベージェフ大統領は「スターリンヒトラーと同列に扱うのは、まったくのでたらめ」と反論した

旧ソ連の行為を正当化 ロ、歴史認識修正に躍起
2009年9月3日 朝刊


 【モスクワ=酒井和人】ロシアが、第二次世界大戦時のソ連の行為を正当化し、「抑圧者」とみなす欧米の歴史認識の“修正”に躍起となっている。経済危機が深まる中、民族主義を政権への求心力アップに利用したいメドベージェフ大統領らの思惑があるとみられ、ロシア流官製史観の矛先は、日本との北方領土問題にも向けられている。

 「大戦で生み出された地政学的結果を捏造(ねつぞう)しようとの動きがある」

 先月二十八日、モスクワのクレムリン(大統領府)で開かれた歴史捏造対策委員会の初会合で、委員長のナルイシキン大統領府長官はこう切り出した。
(略)
 同委員会は今年五月、大統領直属機関として発足。二十八委員のうち歴史専門家は三人で大半は軍など政権関係者。極めて政治色が強い。北方領土問題のほかバルト諸国などの大戦に関する反ソ連的主張を非難、ロシア国内の小中学校で「正しい歴史」を教えるよう教科書の見直しなどを提言する方針だ。

 ロシアは、ナチス・ドイツの侵攻から七十年を迎えたポーランドでの一日の式典で、プーチン首相が「ソ連が欧州をファシズムから解放した」との認識をあらためて表明。先月下旬には国営テレビがソ連参戦を正当化する特番を放送した。
(略)
 ただ、こうした姿勢が欧州の反発を招くのは確実。英字紙モスクワ・タイムズなどは「国家の支配者の利益に沿った神話を守ろうという行為」「ロシアにとって恩恵より、海外で失う名声の方が大きい」との歴史家らの批判を伝えている。

http://www.asahi.com/international/update/0901/TKY200909010436.html

【モスクワ=副島英樹】ロシアのプーチン首相は31日、第2次世界大戦開戦70周年行事に向けてポーランドのガゼータ・ブイボルチャ紙に論文を寄稿し、39年のモロトフ・リッベントロップ協定(独ソ不可侵条約)が大戦の唯一の引き金になったとする指摘に対し、「歴史の歪曲(わいきょく)」だと反論した。

 プーチン氏は、独ソ不可侵条約の前年に英仏がすでにドイツと融和政策をとったために、反ファシズムの共同戦線を張る望みがなくなったと主張。当時ノモンハン事件で日本軍との戦線も抱えていたソ連としては、ドイツとの不可侵条約はやむを得なかったとしている。

 そのうえで「現在の政治状況の必要性から歴史を修正する試みがある」として、旧ソ連バルト3国や東欧諸国など反ロ感情が強い国々がロシア批判のために歴史を利用しようとしていることを示唆し、反論した。

http://mainichi.jp/select/world/news/20090830ddm007030181000c.html

第二次大戦:開戦70年 「ソ連、ナチと同じ」 旧共産諸国主張、ロシアは警戒
 ◇歴史認識、改めて溝 「解放者」自任、ロシアは警戒

 【モスクワ大前仁】第二次世界大戦の開戦70年にあたり、ロシアと欧州が確執を深めている。東欧・バルトの旧共産諸国は「ソ連ナチス・ドイツは同じ“占領者”」と主張。欧州をナチスの支配から解放したと自任するロシア側は「歴史の歪曲(わいきょく)を許さない」と警戒を強めている。

 全欧安保協力機構(OSCE)は先月3日にリトアニアで開いた議会で、独ソ不可侵条約が結ばれた8月23日を、ナチススターリン主義による犠牲者を追悼する日と定める決議を採択。条約締結70年に合わせ、バルト3国など旧共産諸国が決議を主導した。リトアニアのクビリウス首相は今月23日、「我々にとってスターリン主義ヒトラーの犯罪は同じだった」と発言した。

 ロシア側はナチス・ドイツと反ヒトラー連合の中心国だったソ連を同一視しようとする試みは、大戦で犠牲となったロシア国民への侮辱だ」と反発。上下両院は先月、OSCEの決議を批判する声明を採択した


http://mainichi.jp/select/world/news/20090902ddm007030031000c.html

・・・ポーランドソ連が開戦直後に自国東部を占領し、2万人以上の国民を虐殺した「カチンの森事件」などを巡り、ソ連の責任を指摘している。トゥスク首相は同日の会見で「両国の大戦に関する歴史観は、独露間と比べ大きな相違がある」と批判をにじませた。

 バルト3国併合(40年)などソ連の行動を批判する旧共産圏の動きに対して、ロシアは先月28日に「歴史捏造(ねつぞう)対策委員会」の初会合を開くなど、「ソ連批判」への対抗策に力を入れている。プーチン首相が1日にグダニスクでの記念式典に出席したことについても、「第二次大戦の結果を見直す動きに対抗するため」(ウシャコフ官房副長官)だという。

■こちらはノモンハンにて

http://www.jiji.com/jc/zc?k=200908/2009082600778

・・・【モスクワ時事】ロシアのメドベージェフ大統領は26日、モンゴルの首都ウランバートルで1939年の満州モンゴル国境紛争、ノモンハン事件(ロシア側呼称「ハルハ河事件」)70周年記念行事に出席、第2次大戦の歴史の見直しを容認しない姿勢を強調した。
 インタファクス通信によると、メドベージェフ大統領は演説で、「戦いで日本の関東軍は壊滅的打撃を受けた」とし、同事件でのソ連側の勝利が第2次大戦全体の行方にも影響を与えたと指摘。その上で、「この勝利の意味を変更するような捏造(ねつぞう)は容認しない」と強調した。


http://sankei.jp.msn.com/world/europe/090827/erp0908272252005-n1.htm

・・・モンゴルでは同事件について「(モンゴルは)日ソ両国の犠牲になった」とする解釈も出ているが、メドベージェフ大統領は事件を日本に対する「(ソ連、モンゴル)共通の勝利」と位置づけ、同じ歴史認識に基づいて友好関係を築くことを訴えた


【募集】OSCEが7月に採択したという、ナチスソ連を同評価とした声明の原文は見つからないでしょうか?


私見を申し述べるなら、ごく普通に、淡々と、同列に扱っていいと思うんですけどね。毛沢東も含め。
20世紀が終わったころあいに、やっとこの3人が普通に並ぶようになった。今、ナチの扱いというのはたとえばハーケンクロイツや「電撃戦」などのキャッチフレーズが安易にデザインとして登場したり、漫画の中で歴史的な悪役以外(ブロッケンマンJrが典型)で登場したりすると非常にあれこれ摩擦が多い。それはちょっと行きすぎだろうと思う例も無いではないのだが、一方で「鎌とハンマー」や「造反有理!」などのデザイン、スローガンが同様のデザインやたとえで使われていると「もう少し問題扱いされるべきじゃねーの??」と思ったりもするのでした。


しかし、これでもまだましになったほうで、まだ冷戦に終わりが見えなかった80年代、学校の教科書とか副読本で、スターリン毛沢東が階級ジェノサイドというべきことをしていた、ということを記したものは皆無だったんだぜ。(当時、すでに「資料不足」という言い訳は効かない段階だ)
わたしはそのころ、歴史関係においてはずいぶんカ、カテエ!本も子どもにしては読んでいたので、その矛盾が見えすぎておかしかったのを覚えている。ああ、あのころの資料ってまだ無いかな・・・・


かき終えるまで失念していたが、政権交代に際し、今はあまり表面にはでていないが歴史問題で前政権との違いを出したいということで(何度もかいた「スモールアーリーサクセス」ってやつだ)、また近代史のあれこれが浮上するかもしれない。社民党にも実績の「分け前」を分配する必要はあるだろうしね。
その合わせ鏡として、ソ連スターリンをめぐる今回の問題を見るとまた面白いかも。

参考・毎日新聞「発信箱」 :動くか歴史問題=岸俊光

http://mainichi.jp/select/opinion/hasshinbako/news/20090905ddm008070065000c.html