一部で、「こりゃすごい!」と話題になっていた福本伸行「二階堂地獄ゴルフ」。数週遅れで、その回がネット配信になった。
24話「来訪」
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あっ、ひとつ前の回もまだ読めるね。
23話「幸福」
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これまでの流れ
・主人公の二階堂は、万年プロテスト挑戦、そして不合格のゴルファーである。
・もともと若いころは勤務のゴルフ場でピカ一の腕前。将来を嘱望され、ゴルフ場とその常連たちから「俺たちが支援するからプロに挑戦しろよ!」と持ち上げられ、実際いいところまで進む。
・だが、繰り返すうちに歳を重ね、若さや将来性は失われ、支援者の熱も冷める。後輩にもっと有力、有望な新人も来る。
※第一話でだいたいのことがわかるかも
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・それでも二階堂は頭を下げたり媚びたりで、必死に支援をつないで挑戦を続ける。だがそれでもダメ…「有望な後輩」ですら先に諦めたことでついに心が折れ、失踪同然にゴルフ場を去る。
・そして、いろいろあって知り合いの女性(この子も芸能界で挫折)の実家の中華料理店で住み込みの仕事を得る。意外や、その店の料理、接客ぐらいなら十分できるスキルがあると判明、店主も娘も好意的に接する。ここに落ち着けそうだ…?
…というところから怒涛の展開!
それが公開の回だ。
そんな、安定したところに「元支援者」が様子を見に来る。夢破れたとはいえ新しい道を見つけた彼に、内心後ろめたさもあった常連たちもほっとする。
「じゃあ、もう遊びとしてのゴルフをやろうよ。明日一緒に回ろう」
ところが、その遊びゴルフで、二階堂が生涯のベストスコアタイの成績をたたき出すのだ。
うれしいことじゃないか?
いや!! それは、地獄ならぬ”煉獄”への扉が開かれた、ということだ…
二階堂地獄ゴルフ、最初はドギツイオヤジギャグと下ネタが多くてさっさと終わってくれ!と思ってたけどいつ頃からか福本漫画では珍しく「ゴルフ以外」では世渡りが上手い二階堂という男から目が離せなくなった&作品の葬送のフリーレンと同等以上に早い時間経過が癖になってきた感がある
— トルーパー(ブタゴリラ) (@trooperASW) February 22, 2024
rt
— マルタ (@maru_hutoshi) February 22, 2024
そう!それが言いたかったずっと。
二階堂地獄ゴルフは何も変わらない主人公の周りを猛烈に無情に時が進んでいく様子を見せ続ける逆葬送のフリーレンなんだ
フリーレンと同じ楽しみ方ができる青年漫画なんだよ。これは凄いよ、正直売れないだろうけど、とんでもない人間ドラマ漫画だよ。
前も話題にしたことあるけど、煉獄とは本来、竈門炭治郎の頼れる先輩でもなければ巨大軍艦でもないし、連続打撃で心臓を止める技でもない(心臓を止めるのは金剛だ、とのレスがついた。そうだった、下のリンク先でも画像などあり)。
m-dojo.hatenadiary.com
煉獄
煉獄(れんごく、ラテン語: purgatorium)とは、キリスト教、カトリック教会の教義のひとつ[1]。
カトリック教会においては、神の恵みと神との親しい交わりとを保っていながら完全に清められないままで死んだ人々は、天国の喜びにあずかるために必要な聖性を得るように浄化の苦しみを受けるとされており、この最終的浄化を煉獄という[1]。第2バチカン公会議以降もこの教えは変わらず、『カトリック教会のカテキズム』において煉獄について明文化されている。
地獄に落ちれば、それは最終決定だが、煉獄とは宙ぶらりん、その苦しみに耐えていけば罪は浄化され、天国に至るかもしれない、な場所なのだ。
だが、ゴルフでも将棋でも、たとえば司法試験とかでも…あるいは恋愛とかでも、それはつらいだろう。もし、一旦完全にあきらめたあとに、またその先に光明が光り、道が拓けたら……それはさらに残酷な結果を生むかもしれないのだ。
というか、自分は雑誌を読んで、この後の数回の展開を知っているし……
「3月のライオン」「ヒカルの碁」「月下の棋士」、などなど(囲碁将棋の物語に多いな…)でも、脇役で敗れて主人公を祝福し、自分たちは道を諦めて去っていく人が描かれる。
あるいは「はじめの一歩」で一歩に敗れて才能に満ちたボクシングの世界にけりをつけ、医者の道に進んだ相手・真田選手もいたね。
プロ野球漫画にも結構出てくる。
前の記事で映画配信情報を紹介した「BLUE GIANT」にも、主人公との才能の差を知って吹っ切れ、音楽と別の道に進む者が描かれた。
こういう人たちを「幸多かれ」と送り出せればさわやかだが、実は諦めきれず、またその道に戻り、そしてそれでも結果が出なかったら……一気につらい物語にならないか?
ここの原文を、今回は紹介したかったんだけど、また探し損ねたので要約のまま…呉智英「賢者の誘惑」に収録された、内田春菊との対談の一節だ。
「乗り物で人工衛星が一番格好良く、乳母車は格好悪いとしよう。しかし乳母車以下の存在も、確実に存在する…。打ち上げに失敗して落下した人工衛星、それは何の役にも立たないただのゴミでしかない。
だが、その人工衛星のゴミは、地球の重力を脱するのに、わずか1mだけ足りなかったのかもしれない。それでも落下してしまえばただのゴミだ。
なら、落下しそうな人工衛星は事前に解体して、その部品を乳母車にしてあげるのが本人のためなのか・・・? 」
まさに、乳母車、それもかなり評判がいい乳母車に改造される寸前だった、墜落を繰り返したおんぼろ人工衛星の残骸。だが、「いや、まだ改造すれば宇宙に行けるかも!」と、その残骸が思ってしまったら……??
いろいろな人に、いろいろな反応が引っかかるであろう、福本伸行の「二階堂地獄ゴルフ」。
だが、作者の福本氏は何しろさまざまな奇想天外のどんでん返しを見せてくれる作家(この展開だって、かなりの大どんでん、だった)。
と同時に、結構話にケリがつかず、あちゃーな感じで終わる、あるいは中断したりすることも多い作家(笑)。このあと、どうなりますかね??