河合薫 なぜ日本の「ジジイの壁」はこれほど強固なのか
2024.1.24
河合 薫/健康社会学者(Ph.D.)、気象予報士
ダイバーシティ推進やパワハラ防止、働き方改革、コンプライアンス(法令順守)の徹底など、企業を取り巻く労働環境は一昔前と比べて変化しました。けれど、意思決定層と現場との間に立ちはだかる「ジジイの壁」は一部の組織に依然として残っています。なぜ日本では「ジジイの壁」が生まれやすく、これほど強固なのか。日経プレミアシリーズ『 働かないニッポン 』の著者、河合薫さんに聞きます。
編集部(以下、――) 自民党の裏金疑惑やダイハツの品質不正問題、日本大学の一連の不祥事など、最近のニュースを見ていて、河合さんが7年前に刊行した『 他人をバカにしたがる男たち 』(日経プレミアシリーズ)の中で触れていた「ジジイの壁」という言葉を思い出しました。
河合薫さん(以下、河合) 「ジジイの壁」という言葉を聞いて、「ジジイ」という言葉に抵抗を感じる人も多いかもしれませんが、男性を指しているわけでも年齢的なことを言っているわけでもないんです。
ここで言う「ジジイ」とは、性別や年齢に関係なく、組織の中で権力を持ち、その権力を組織のためでなく自分の保身のために使う人たちのことを指します。「ジジイの壁」とはそのような人たちが築いた壁であり、組織の意思決定層と現場との間に立ちはだかっているもののことです。
前にも紹介したように、これとほぼ同じ理論を上野千鶴子氏らが言ってたわけで。
……東大男子は東大女子が苦手です。なぜって、自分と同じぐらいかそれ以上優秀かもしれないから。なぜ男子は女子が優秀だと困るんでしょう? これも答えはかんたんです。
「オレサマ」になれないからです。その点、他大女子は、「東大生、すごいわねえ」と目にハートマークを浮かべて「オレサマ」を見あげてくれるでしょう。
こういう男性を、オッサン、と呼びます。そのとおり、東大男子は若いうちからオッサンなんです(ここでいうオッサンとは、中高年のオヤジのことではありません。自己チューでオレサマ度が高く、オンナコドモや立場の弱いひとを差別する、想像力がなくて鈍感力の高いひとを言います。年齢も性別も問いません。女のひとのなかにも、たまにいます)。おばあちゃんはまわりにオッサンばかり見てきたから、お姉ちゃんに「オッサン受け」するには東大へ行くと不利だよ、とアドバイスするのでしょう。
その記事には、仮にそれならOKというなら
たとえば・・・・・・・
「こういう連中を不逞◆◆といいます。…ここでいう不逞◆◆とは、特定の……のことではありません。あくまでも、犯罪や破壊活動を行うひとをいいます。出身も血統も地域も性別も階層も問いません。 ***のなかにもたまにいます」
みたいな例示をあげたが、さすがに伏字にしかできなかったので、別の例を挙げよう。
最近は自発的にお茶くみをしない、気の利かない”女の子”が多いよね。……「女の子」という言葉に抵抗を感じる人も多いかもしれませんが、これは女性を指しているわけでも年齢的なことを言っているわけでもないんです。ここで言う「女の子」とは、性別や年齢に関係なく……