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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

スタン・ハンセンを特集した「Gスピリッツ」がすごく面白かった。

日本で最も成功を収めた外国人のプロレスラーは誰か?
世代を超えて大きな支持を集めたという点で、スタン・ハンセンを凌駕するレスラーはもう出てこないだろう。
今号では本人のロングインタビューを軸に、日本のプロレスに変革をもたらした暴走ファイトの秘密から、あまり知られていない北米での足跡までハンセンの実像を本誌なりの角度で探ってみた。
いつものように深い話が満載。昭和のファンも平成のファンも楽しめる最強最後の“不沈艦"大特集!


■特集
スタン・ハンセン 制御不能! 不沈艦、暴走の航跡

[巻頭スペシャルインタビュー]ジョン・スタンレー・ハンセン・ジュニアの理知的プロフェッショナル・レスリング論

[プロモーター兼外国人ブッカーの告白]テリー・ファンク

[不沈艦を迎え撃った男たち――新日本プロレス編]長州 力

[不沈艦を迎え撃った男たち――全日本プロレス編]天龍源一郎

[回想――不沈艦と馬場、鶴龍、四天王の19年間]渕 正信

元気な姿で、快活に自分の歩みを話すハンセンを見て思うのは・・・「ああ、ブロディも、アンドレも・・・こんなふうにリタイア後に穏やかにインタビューに答える姿を見たかった」というものだった。

いまは同様なのはタイガー・ジェット・シンぐらいか。まあマスカラスとかは自らの意志で現役続行している部分も多いのだろう。それはそれで幸せなことだ。


一番印象に残っているのは、「首折り事件」でサンマルチノを負傷欠場に追い込んだハンセンは、まず当時のサンマルチノのライバル達から非常に怒られ、嫌われ、プロモーターにもいい顔をされなかった・・・だがサンマルチノ本人は「気にするな」「何を言われても耐えて、そこで生き残れ」といったことをアドバイスされ、励まされたという話だ。

もちろん、プロレスとしては、サンマルチノを欠場に追い込んだテキサスからの新人レスラーは、リングでサンマルチノ自身にその復讐をされるまでは大悪役として客を呼ぶ・・・という選択をプロモーターがしてもおかしくない。
もう70年代も半ばの事件だというのに、サンマルチノは首を負傷し、それをした男は首を攻撃する技がフィニッシュホールドだったという”プロレスの神様の奇跡”もあって、梶原マジック、プロレスマジックが炸裂し・・・首折り男ハンセンが誕生した。
 
ただ、今から思えば「エースをアクシデントで負傷させればポジションがあがるのか?」「こいつはリングで制裁してやる!」「サンマルチノに大怪我を負わせた男、を俺が壊せば・・・俺のポジションも上昇だ!」というような視線が常にハンセンには周囲からつきまとっていた、ようなのだ。
そこで生き残り、ケガもせず・・・そして復帰したサンマルチノに、きっちり星を返してテリトリーを去る(もちろん梶原一騎は「NYの陰謀!」と描く(笑))・・・これをまっとうするのが、ハンセンにとっての大仕事、大チャレンジであったようなのだ。
これがプロレスの”ポリティックス”の複雑さなんだねえ・・・。
  
なお、サンマルチノがまだ負傷からの回復が万全でないのに「ビッグマッチだから」と無理に出場を強いられハンセンとの復讐戦を行ったのが、アントニオ猪木vsモハメドアリとの2元中継興行だったという・・・・

カウボーイ姿

全日本に初来日したとき、オックス・ベーカーに「テキサス出身ならカウボーイの姿をして自分のキャラクターを売り込んだら?」といわれたそうだ。ハンセンは「ベーカーはいい人で、キャラクターのアドバイスも受けた。ただ試合で学ぶことはなかった」と(笑)
むしろアブドーラ・ザ・ブッチャーのクレイジーファイトかは多くを学んだという。

ポジションを奪う、守るために「壮絶にぶったたいた」時代

ハンセンはブロディと組んでファンクスと流血の大抗争を展開し、のちに天龍同盟などと失神を奪い合い、控え室で殴り合う壮絶な試合を繰り返した。
今、すれた頭脳や感覚で考えると・・・・「そういうストーリーラインを考えて、組むのが重要であって、その試合の中で思いっきり相手に攻撃して強いダメージを与えるのはルール違反じゃないの?」との疑問も浮かぶが、そこがこの時代の・・・日本に特化した?レスラーのあり方だった。
相手のポジションを奪いに来る、守る・・・そんな重要な戦い、抗争は、なぜか本気で相手を痛めつけるような攻撃を入れなければならなかった。
それが四天王プロレス、NOAH、そして三沢光晴の事故・・・につながるなら、手放しで喜んだり評価するのもためらう。だが確かに、当時のプロレスが大ヒートしたのは、天龍やハンセンの失神にあるように、「本気でガーンと!」があったのも間違いないだろう。試合のアップダウンとか今後のアングルとは別に、ハンセンたちが本気でぶつかっていくことで伝わったものもたしかにあるのだ。



そんなことを、今回のGスピでは考えさせられた。