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John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

ハッスルが企画した「ハッスル・ジハード」の大会名に在日本イスラム組織が反発(simulation fiction)


http://www.kamipro.com/news/?id=1250334571

ハッスルエンターテインメント山口日昇代社長とクォンタムジャンプジャパンの酒井正和社長がリングに上がり、重大発表を行なった。なんと、10月10日に両国国技館『ハッスル・ジハード2009』の開催を発表したのだ。


これを受けての、宗教界の専門業界紙である(特定宗教の機関紙ではない。公称35万部)「宗教タイムス」の記事を読みましたか。
http://www.shukyotimes.com/news/?id=20090816/714

ひとり歩きする「ジハード」の言葉
プロレス団体が、大会名にも使用 
東京ム評議会、指導者が懸念表明


 ・・・「イスラーム教の重要な概念である『ジハード』が、日本の中で誤解されて広まっていることを懸念している」」
 「東京ムスリム評議会」のイスラム法学部門の責任者を務めるムフティー(最高法学者)ナハール・ホッジャ・アリー導師は、宗教タイムスのインタビューに答え、ジハードという言葉が、とくに日本のメディアによって、単純な戦争行為を意味する用語として扱われることに対して異議を申し立てた。「ジハード」は911事件以降、とくにアラブ地域の紛争報道の中で使われ、知名度が高まったが、その一方で、本来の意味から離れた用法や解釈も急増。「大規模で派手な戦い」を表現するため、プロレスの大会名に使われる例も出ており、アリー導師の発言はこれらの風潮に警鐘を鳴らしたものといえそうだ。


東京ムスリム評議会は、イスラム圏から首都圏にやってきて定住しているムスリムと、同じく首都圏の日本人信者の交流・活動の場として2005年に発足したばかりの組織で、日本語で運営していることが特徴。会員は日本人1200人、定住在日ムスリムスンニ派を中心に950人。ヨルダン出身のナハール導師も当初は陶器を扱う貿易業者として来日、来年で滞日30年になり、日本語も不自由なく話せるという。
「評議会は、学問的なアプローチからイスラムを考え、他宗教や日本の習慣を尊重しながら対話していくことを目指しています」とナハール導師。


「ジハード」という用語に関しては、今月15日、テレビ放送など幅広く興行活動をするプロレス団体「ハッスル」が、10月に東京で「ハッスル・ジハード」を開催するとの発表を行った。その他、OLらが男社会の制約を乗り越えて活躍することをジハードになぞらえた小説「女たちのジハード」が1997年にNHKでテレビドラマ化されている。

 これらに対して「そもそも、ジハードとは広い意味があり、日本で知られている概念はその一部であることを知ってほしい」とナハール導師は話す。ジハードは神のために奮闘することすべてであり、むしろ自分の心をよりイスラムの道にかなうものにするため研鑽(けんさん)するという意味であるという。
「山の中の賊は退治しやすいが、心の中の賊は退治しにくいーという言葉は東洋の書物にもあります。それと同じような意味であり、そのごく一部が、外で宗教を脅かす敵との戦争も意味しているだけなのです」(ナハール導師)
戦争のことを「小さきジハード」ともいい、自らを高める「大なるジハード」のほうが大きな意味を持つことは各種のイスラム法解釈でも多数だという。


ナハール導師は、この言葉が日本で、血なまぐさい『戦争』の意味で広まったのは「無意味なテロをジハードであると強弁する、一部の間違ったイスラム解釈があることにも責任がある」ともする一方で、「歴史やイスラームへの理解なしに、プロレスの試合や小説の中で私たちにとって神聖な『ジハード』という言葉を安易に使うことは、異文化間の乖離(かいり)を広げる心配がある」と憂慮する。

同評議会は9月1日に渋谷区で開かれる役員会と、ナハール導師が議長となるシャリーア研究部会でこれらの問題を正式に議題とし、他の組織とも連携して関係団体やメディアへの申し入れも含めた措置を考えたいとしている。


なかなかやっかいな話だなあ、と思いました。


てな、シミュレーションのフィクション小説(タイトルに明記の通り!)を、ハッスルの記者会見記事を読んでつくりました。
東京ムスリム評議会、宗教タイムス、ナハール導師(なんだよ導師とかムフティーって)などはすべて架空の人物・団体であり、以下略。でも、途中途中に本当の話も交えたからあなどれない。



しかし、記者会見記事を読んで、「へえ、このへんの諸問題はちゃんとクリアしているのかね?」と思った一方で「これを過剰に意識するのもおかしな話ではあるよな」とも思わないでもない。
ハッスルは既にハッスル・クリスマスをやっている・・・のはまあ季節の行事だからいいとしても。たとえば「アルマゲドン」といった概念だって、世間一般に広がっていけば、やっぱり「大戦争」「最後の決戦」といった一般的な用法になっていくことがある。
イスラムが、日本の中で知られて、日常に定着していけば、そこの用語や概念が薄まった形で、世間で使われていくこともままあり得ることだ。へんに遠慮して「ジハードって言葉は大戦争っぽくてプロレスの興行にぴったり!だけどなんかヤバそうだから使用遠慮しよう」というのが逆に不自然といえば不自然かもしれない。

「既に専門家と話し合い、問題はないと判断しました」でも「別に深くは考えてないっすけど、文句も批判も上等!この大会名は、付けたいから付けた、それだけ」でも、どっちであっても見守っているぞ。


遠くから。

【参考】http://www.cinematoday.jp/page/N0017167

・・・ミッキー・ローク主演の『レスラー』では、イランの旗でミッキー・ローク演じるプロレスラーの首をしめようとする「ジ・アヤトラー(イスラムシーア派の指導者の尊称)」というレスラーが登場することから、イラン国内では上映禁止となった


ウィキペディアの「他力本願」

他力本願(たりきほんがん)は、本来は仏教用語である下記の「本義」の意味である。しかし誤用によるものと考えられる「転義」の意味も一般化している。
(略)
主に宗教的意味を伴わない文脈で、「ひと任せ」、「他人依存」、「(太陽の働きや雨や風や空気、そのほかの自然の働きなどによる)成り行き任せ」などの意味で使用される(略)
この「転義」による表現を、敬虔な浄土真宗信者(門徒)は嫌悪・忌避する。

抗議に至った事例

1968年には、当時の倉石忠雄農相が日本の軍備に触れ、「今の世界は他力本願では生きていけない」との意味の発言をして浄土真宗各派から抗議されている。

2002年5月、オリンパス光学工業株式会社(現在のオリンパス株式会社)が全国紙に「他力本願から抜け出そう」というコピーで広告を掲載した。それに対し真宗教団連合が「広告の表現は多くの門徒の心を踏みにじる」と抗議をしている。オリンパスは抗議を受けた後に配慮が足りなかった点を謝罪している。(2005年5月28日の朝日新聞による)