今回、川尻達也とトレーナーの山田武士氏はいろいろ盛り上げるのにがんばった。「魔裟斗はMMAの選手とは喧嘩だ、といってたけどその割には判定ばかりじゃん」「どうせローキックをやり続けるんだろ?」云々。
その煽り・挑発合戦はいいか悪いのか。けっこう賛否両論があったりする。
記者会見の舌戦と煽り映像は一緒にできないところもあるけど、そういうものをまとめて。
■角田信朗日記「俺が(佐藤大輔の)煽り映像を好きになれない訳」
http://www.fighting-spirit2.sakura.ne.jp/diary/200906/diary_0906_5.html
■前田日明、「D9のMVPは(事前にマッハを口撃して盛り上げたから)青木真也だ!」(元は格通コラム)
http://tsudureya.blog51.fc2.com/blog-entry-1088.html
■金原正徳が「盛りあがる発言をしない日沖発」に怒る
http://www.kamipro.com/column/?id=1246947180
■モハメド・アリに言葉で挑発された相手は、数十年たってもそのことを恨んでいるという話(ジョー・フレイジャー)
http://omasuki.blog122.fc2.com/blog-entry-545.html
最後のやつを特に引用したい
・・・NHKハイビジョンで放送された「モハメド・アリ vs ジョー・フレイジャー」のマニラでの試合のドキュメンタリーを・・・・・・例によってアリは戦前、プロレス流の軽快な煽り発言を連発するのだが、それはフレイジャーにとっては度が過ぎるもので、シュートな憎しみをかき立てられ、60歳を過ぎた今でも許せないのだという話だった。
その許せないアリの発言は、次のようなものであった。
"It will be a killa...and a chilla...and a thrilla...when I get the gorilla in Manila!"
(オレ様がマニラでゴリラを捕らえたなら、殺し(キラー)でゾクゾク(チラー)スリラーだ)
(略)韻を踏んだ詩のような名文句だ。そしてアリはフレイジャーをゴリラと呼び、ゴリラの人形をめった打ちにしてみせたらしい。この辺はボブ・サップと変わらない。
どう見てもそんなに怒ることでもないだろうとしか思えなかったが、
(略)アリはイスラム・ネーションのメンバーで、黒人至上主義だった(とはいえ、ビジネス面ではこだわることなく白人も登用する柔軟さも持っていた)。黒人至上主義の黒人は、そうでない黒人を、白人の寄生虫であるかのように見なしていたという時代背景があった。
(略)
・・・アリは最近のインタビューで、度が過ぎたことをフレイジャーに謝りたい、時代の熱に浮かされてしまった、ただチケットをたくさん売りたかっただけなんだと語ったそうだ。60をすぎたフレイジャーは、いまでもジムを経営し、ジムの奥の部屋で生活し、アリへの憎しみを抱き続けている。
アリである。
ザ・グレイテストである。
アトランタ五輪の火に震える手で点火した男である。
病は深刻であるものの、尊敬、名声、愛情、人気には世界で最も不自由ない男であろう。
しかし、試合前に盛り上げたいための一言が、おそらくいいライバルであったはずのもう一人からのボクサーの尊敬と友情を、おそらく永遠に失わせた。
そんな、お話。