今回、久々に「格闘技通信」を購入しました。それだけ興味深い記事が多かったということだが、と同時に購入に踏み切らせた大きな理由のひとつは、三木敏之格通編集長の巻頭論文。これがあまりにも興味深かったからである。
故アンディ・フグの七回忌で気づいたこと
格闘技界には13年周期がある。
2006年はその節目の年だった!!
何が興味深いって、あまりにもデタラメじみているからだよ(笑)。
典型的なこじつけ、トンデモだからだよ。
三次編集長はこう語っている。
「93年ごろの格闘技界は人材も豊富だったのだろう。本誌で何度も触れてきたことだが、この年は本当にさまざまな出来事があった年だった。」
んで、K-1,UFC、パンクラスの旗揚げや「本誌の武道待望論でおなじみの堀辺正史師範が第一回骨法の祭典を開いたのもアルティメット大会と同じ日であった」とし、「93年というのは何かが動き出す年だったということになる」
まあ、これ自体は妥当な見方で、今も続く老舗団体がいっせいに本格活動を開始した1993年をもって「シュート革命元年」という向きもある。
ところが問題はこの後だ。
なぜ、このようなこと書こう(ママ)と思ったのかというと、格闘技界には周期が存在することに気づかされたからだ・・・・今年は地殻変動が起こった93年から数えて13年の周期である。思えば今年に入ってから様々なことが起こっている。ミスターPRIDE桜庭和志がHERO'Sに電撃移籍したり、ホイス・グレイシーが13年ぶり(ママ)のUFCに登場したり、キックボクシング界を見渡してみても、近年にない異様な盛り上がりを見せている。選手の遺跡、団体対抗戦・・・。こうおいうことが起こると、業界は活性化していくのが常である。
だから、13年周期説というのをあらためて唱えたいのである
・・・・・・こっちは「な、なんだってー!!」とでもリアクションすればいいのか。
まず最初に小さな事実だけ指摘しておくが、ホイス・グレイシーがマットヒューズと戦った、今年のUFC復帰は「13年ぶり」かい?
答は
http://www.google.co.jp/search?hl=ja&c2coff=1&q=%E3%83%9B%E3%82%A4%E3%82%B9%E3%80%80%E5%B9%B4%E3%81%B6%E3%82%8A%E3%80%80UFC&lr=
それは単純ミスってことでいいんだけどさ、
そもそも本当に今年が節目の年としたところで、1993年に大きな動きがあり、2006年に大きな動きがあったと。
二回、大きな動きがあったところで、それが何で「周期」と分かる(笑)
周期というなら1993年の13年前、1980年にも大きな動きでもあったのか?こじつけようと思えば後述の通りこじつけ可能なのだろうが、そもそも1993年に「動き出す」ということだから三次編集長も触れていない。「大地震60周年周期説」「豪雪20年周期説」「気候700年周期説」などさまざまな周期説があるが、サンプルが最初と、その次の段階だけで周期説を唱えるような「もののふの中のもののふ」「男の中の男」はあんまり見たことがねえ(笑)。
それに、こういうものはいくらでも主観によって節目をつくれるものだ。
今年は確かにPRIDEからのフジ撤退やボブ・サップ騒動などで大きな話題が続いたのだが、そんなのはなあ。
例えば2002年は国立競技場でDynamite!が開催され、10万人興行が行われた。そこでノゲイラに三戦目のVTながら大善戦したボブ・サップは、K-1でホーストを二度破り、世間を巻き込むサップブームが到来。、ドームにも最大の集客があyったがその一方、石井和義館長は脱税で在宅起訴となった。
明けて2003年は石井和義氏は逮捕され、DSEの森下社長は痛ましい自殺。その一方、PRIDEでは新王者ヒョードルが誕生。
その年末には、空前にして現在も絶後である「大みそか3興行、すべて地上波放送」が行われた。
このへんを「周期」にしたってまったく不自然じゃないだろう?
都合に合わせて「節目」「ルール」を自分から設定する、これ手品や詐欺、オカルト予言にも常に使えるテクニックね。
ついでだからこういうたぐいの、道具いらずの手品のやり方を教えておこう(古畑任三郎でも同種の話が紹介された。山城新伍の回)
(1)◆一枚のトランプカードだけを伏せて置いておく。
そしてオープンした、スペード、ダイヤ、ハート、クローバー4枚のトランプを相手に見せる。
(2)◆「これは手品じゃなくて、心理テストなんだけどね。君の性格から考えると、だいたいどのマークの札との相性があるか分かるんだ。
じゃあ、この4枚からまず2枚を選んで。」
(3)◆そこで例えばハートとスペードを相手が選ぶ
「ああ、なるほどね。じゃあその札二枚をもう一回机において、直感でどっちかを取って」
(4)◆相手がスペードを取る。
「そう、君が最後に”残した”カードは、やっぱりハートだったね。社交的だがさびしがりやの人は、最後にハートを”残す”んだよ」
伏せておいたカードは、やはり同じハート・・・・・・・
もちろんこれはタネいらずのトリックで、伏せておいたカードは適当に選んだマーク。
伏せておいたカードがもしスペードなら、(4)のときに「そう、君が最後に”選んだ”カードは・・・」といえばいいんだ。
もし、ダイヤやクローバーだったら、(3)のときに
「ああ、なるほどね。じゃあ”残った”札二枚の中から、直感でどっちかを取って」とやって、あとは同じように自分の持っている札へ誘導すればいい。
つまり、「ゲームのルール」を後決めでやるというのがどんなに無敵かということだ。
いや、HERO'SやK-1のことではない(笑)。この格通周期説の話。
「大きな動きがある」という選択肢は、それ自体がそうとう曖昧。例えば今書いた中でも2000年代で三回も候補があったんだから、都合に合わせて選んでいけばなんでも可能。
「ハレー彗星が来た年は戦乱がある」というのもそのたぐいだ。彗星は世界中で見られるが、地球上では基本的に戦乱は絶えない(笑)。どこからでもチョイスできるだろうさ。
「読者諸氏よ、こんな「予言」と同レベルでデータを扱っていいのなら、私はニューヨーク市場の動きとアフリカのカバの虫歯の数との関連を証明して見せよう」と啖呵をきったのはSF作家にして科学者のアイザック・アシモフ。
対トンデモ・ファイターの偉大なる先達でもあったのだ。この本ね。
わが惑星、そは汝のもの (ハヤカワ文庫 NF 25 アシモフの科学エッセイ 5)
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これはあとで紹介しようと思ってまだ果たせないけど
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というのを読むと、もっとこういうトリック、落とし穴をゲーム感覚で楽しめる。繰り返しだな、この話。
いかん、最初の悪口が長くなって、今回の格通では褒めるところも興味深いところもまだあるのに紹介しきれない(笑)。
それはまた次ということで。
ちなみに三次編集長はブログも持っているのでR(←なつかしいなこれ)。
http://kakutsu.at.webry.info/