前に紹介した、「ゴーマニズム宣言靖國論」は、今日の新聞広告によると「たちまち20万部突破」だそうだ。
たしか高橋哲哉氏のちくま新書「靖国問題」も25万部ぐらい今、売れているんじゃなかったっけ。
- 作者: 高橋哲哉
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2005/04/01
- メディア: 新書
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この、高橋本に関し、最新号のSAPIOで井沢元彦が批判文を載せている。
要約すると以下の3点
1◆中国は「A級戦犯合祀の場に、首相が参拝すること」のみを問題視しているという前提だが、彼らはそれを明言してはいないし、今後拡大しないという保証はない。チャイナ・デイリーなどでもBC級戦犯を問題視した記事が載っている.
2◆「靖国は敵味方を区別し、日本の伝統に反している」というが、同神社は国内・国外のすべての戦乱で死んだ者をまつる「鎮霊社」がある。規模が小さいとか出来たのは1965年だと矮小化するが、こういう施設が存在すること自体、世界的に見たら例のない平等の鎮魂活動を行っているということではないか。
3◆「戦争に備える軍事力を実質的に廃棄」など、非武装中立が解決策だなんて非現実的だ
1については、武大偉駐日大使が2001年に「一般戦没者を参拝するのはなんら問題がないが、A級戦犯が合祀されたことが問題だ」と発言しているそうだ。
この発言が、どれだけオフィシャルなものかは分からないがチャイナ・デイリーだってアンオフィシャルだし、そのへんの言質は今後取れるかもしれない。
2。むかし、私も靖国神社を見学したとき、「鎮霊社はどこにあるんですか?」と聞いたら、それは一般の人は参拝できないんです、とのことだった。ケチケチしないで一般公開すればいいのに、と思ったのも事実で、これは今後神社も検討して欲しい。
論旨としては井沢氏に賛成で、今年でちょうど40年ともなれば人間でいえば不惑、十分な歴史があるだろうし、それだけの期間、祭祀を維持しているとなればたしかに評価に値するのではないか。宮司は「文化大革命やチベット侵略戦争の時の犠牲者をおまつりしている施設は、日本でここだけです」と言えば、中国も納得・・・しねえよ!!
でも、鎮霊社はたとえばIMEにも登録されていない。今回の騒動で初めて知った人もいるだろう。靖国神社も、TVCMでちょっとふれればいいんだ。
実は、今回の小泉純一郎の靖国参拝の隠し玉として
「首相は本殿と、鎮霊社の両方に参拝する」
というウルトラCがひそかにささやかれているとも聞く。
3。論ずるまでもない。
「途中まではなかなかいい本だと思って読んでいたが、最後のこの提言でひっくり返った」という人も多いんじゃないか。
私は、江藤淳批判のところは面白かったが、他はそれほど評価しない。
特に「感情の錬金術」はやはり小林よしのり氏が以前打ち出した、「公と私」の枠組みを越えられない。「息子が死んで悲しい」「でも、息子は”正義”のために命を失ったのだから誇らしい」という二面性は、「その正義は正義じゃない。侵略戦争ですよ」という限定的なかたちでの批判か、「そうやって悲しい死を、誇りだといって誤魔化すのはやめなさい」という全面的な批判かはまったく意味が違う。
それは、表現の自由を求め死んだジャーナリスト、治安の悪い國でゲリラに殺された選挙監視団や青年協力隊、独裁政権へのレジスタンス、火災から多くの人を救うため殉職した消防士、凶悪犯人と撃ち合いの末亡くなった警官・・・などを考えれば分かるはず。
その仕分けが高橋本は十分なされていません。
高橋本には、佐藤優、潮匡夫などが雑誌で批判。宮崎哲弥も、サイゾーの対談や諸君!の新書紹介でワースト本に選んでいたはずだ。
高橋氏は、「図書新聞」か「週刊読書人」のインタビューでこれに反論しているらしい。
あと、今までうかつにも知らなかったはてな内の超優良サイト(すでに400人近くが、アンテナに登録している)「本屋のほんね」http://d.hatena.ne.jp/chakichaki/は、ゴー宣靖国論に関してhttp://d.hatena.ne.jp/chakichaki/20050804
・・・予想通りのダメでした。典型的に客観視できてないパターンの言説でして、そりゃアンタたたかれるのも無理ないわ、と同情の余地なし。靖国問題を正確に勉強したい方は、客観的な論考ができている、ちくま新書の「靖国問題」を迷わず推薦します・・
と、高橋本に軍配を上げている。