INVISIBLE Dojo. ーQUIET & COLORFUL PLACE-

John 8:32 Then you will know the truth, and the truth will set you free."  複数ブログの過去記事を移管し、管理の委託を受けています/※場合により、語る対象の「ネタバレ」も在ります。ご了承ください 

【読書メモ】電通マンの回想録を読み、メディアの「主役」や「王位」はこれほど移ろうのか…と感慨(電通マンぼろぼろ日記)

ベストセラー日記シリーズ最新刊!今回もすべて実話の生々しさ。

30年間にわたって広告代理店の最前線で汗をかいた著者による怒りと悲哀と笑いの記録。
ゴルフ・料亭・×××接待、クライアントは神さまです

~「今すぐに、俺が飲んでいる店に来い!」
大手電機メーカー・S社の宣伝部メディア担当である
田代部長からの電話だった。私はすぐにピンときた。翌朝の日経新聞
掲載される予定のS社の広告割り付けの変更が彼の逆鱗に触れたのだ。
(第1章「知られざる電通の内幕」より)~


本の最後にに既刊の紹介ページがあったが「○○ XXXX日記」がシリーズとなっていて、人気らしい。たしかにどこかで聞いた名前である。


出版社とこのシリーズの紹介記事があった。
wedge.ismedia.jp


はじめは、日常的な仕事のものが多かったが、シリーズ人気があがるにつれてある種の”大物”も参戦、その中でこの「電通マン」も出たらしい。
そういう背景を知らずに読んだが……

これを書いている以上、その人はやはり電通の中では挫折、屈折し、悔いを抱いて同社を離れた。だからこそ暴露になるようなことも率直に書いているのだが……そういう中で、やはりメディア史に残るような仕事をしたという、自慢や自負を込めた回想がある。

その回想が逆に「あー、今の常識はこうだけど、以前はこうだったか」と感慨深いものがあった。

メモ的に箇条書き。


・もともと、東京のキーTV局では「通販番組」は邪道も邪道、低俗で放送にふさわしくないものとみなしていた。だから今をときめくJ社が九州から東京に出て通販番組をやりたい、という案件は電通内部でもいやがられ、筆者に押し付けられた。そこでラジオを皮切りに、なんとか「テレビ東京」でやれるまでにこぎつける。その間に入ったのがソ○ーの井出会長で、だからJはSに、大きな恩があるのだとか。 だが、それでも生が売り物…だったはずの番組は録画放送で、内容をTV局がチェックする屈辱的な条件。最初は表現が大げさだとNGが連発された。だが人気が出てくると、テレ東のほうから「平日午前に生放送しないか」と提案。実はその時テレビ東京始まって以来の、ワイドショーを放送予定だったがスポンサーが全然つかず、苦し紛れに「じゃあ番組内で通販しようよ!」となった、という。



・硬骨の反体制番組、日本の良心と見なす人も多い「ニュースステーション」だが、実はこれこそ「電通案件」、電通生まれの電通育ち、な番組だったらしい。某部長が「ニュースステーションはわれわれが創った」と公言していたぐらいだ。というのは、まずテレ朝の企画段階でプライムタイムの民報ニュースをやりたいなんて案が通らなかった。そこで電通部長とテレ朝の編成部が密かに癒着…いや協力して、広告セールス面での電通の全面バックアップ…要は1年間、電波量と製作費の支払いを保証した!のだという!すごいけど、いいのか!!!? その全額保証をもって、編成局長にGOと言わせたのだという。UFCと同じやり方?(かどうかはしらん)その見返りは番組の広告枠のセールスをすべて電通が独占すること…すごいけどいいのか?(×2)首尾よく同番組は人気となり、「スポンサーは3年まち」ぐらいになってテレ朝も電通もウハウハ。電通の「番組買い切り」方式がここから始まったとか(どの番組よ?) スポーツ大会なども電通がまず放送権を買って、それをTV局に売る。その際に広告枠もまず電通が買いきって、それを今度はスポンサーに売る…両方のやり方で、これを「往復ビンタ」というとか。




Jリーグも、もともと「あのプロ野球だってチーム経営は(巨人阪神以外は)赤字が当然。それでサッカーが儲かるはずない」と電通は傍観してたそうな。その結果として博報堂がJの創世を仕切り(Jリーグという名称も博報堂発案)、電通は出遅れる。その時、筆者は海外のサッカーを見て、チームのスポンサーとゼッケンのスポンサーが別々なことに気づき、日本でもできるんじゃね?とスカッとさわやかにC社に提案。この話は内諾を得て川崎ヴェルディに持っていかれる。情報が洩れて、博報堂に浸透されてる(笑)Jリーグが横やりするようになったが、ヴェルディの親会社・読売とナベツネ犬猿の仲なことがわざわいし、かえって成功する。そして電通はそれを契機に、Jリーグの試合をやはりスポンサー付きで地方局に売り込むビジネスを始め、博報堂からの「J利権」奪取に成功する(笑)


・ほか「土下座」「合コン」「大物コネ入社の二世社員」「戦略特別交際費」「葉っぱ」「CMタレント(外国人の大物)のわがまま」「天井知らずの海外ロケ費」「TVのCMを流したといって、本当は流さずに広告費を貰う」「不祥事をもみ消す」「ジャニーズとの交渉」「保証のできない視聴率を、スポンサー相手に保証してしまう」などのいかにもデンツーな話がぞろぞろと出てくる。こういうのが読みたかったんでしょ?といわんばかりに。



・そして、結局この本を書くということは、著者は早期退職してた、ってことになるんだが、それにともないアルコール依存症睡眠薬、離婚、生活困窮で年金繰り上げ受給、カードローン破産、急性膵炎で入院……と不幸が一気に積み重なる。この本も、もう自分の寿命を悟り、生きた証を残したい…、と書き始めたという。ただ、皮肉なことに執筆で規則正しい生活になり、酒も飲まなくなったら体調も生きる意欲も戻ってきたとか…


何とも言えないが、とにかく、幸あれ。